<参考資料>  2010年 NPT再検討会議 (2010.7.8)
2010年NPT再検討会議:核兵器を嫌悪する非同盟運動諸国
各国・グループ代表、最終文書に対するコメント集

以下は2010年5月28日付けニューヨーク国連本部「ニュース・メディア局・広報部」(Department of Public Information ・ News and Media Division)発表の、2010年NPT再検討会議に関する広報資料である。今回再検討会議全体の雰囲気を良く伝えていると同時に、「最後の瞬間に文書採択」というタイトルにあるように、今回最終文書が最後の瞬間のギリギリの妥協だったことがよくわかる。言い換えれば、アメリカ・オバマ政権は「最終文書」への合意を拒否することの不利を悟った、という事でもある。
(原文は次。<http://www.un.org/News/Press/docs/2010/dc3243.doc.htm>)
  またこの記事の面白さは、2010年5月28日、再検討会議最終文書採択当日の各国代表、グループ代表のコメント集という点にある。再検討会議を俯瞰して眺め、客観的な評価を下すに当たっては不可欠な視点が出揃っている。
全体を通読していえることは、今回再検討会議は、非同盟運動諸国とアメリカ、フランスを中心とする核兵器保有国の激突だった、と言う点である。コメントを眺めてもらえばおわかりだが、非同盟運動諸国を中心とする非核兵器保有国の、核兵器に対する感情は「嫌悪感」にまで昇華されている。日本の外務省が宣伝する「日本人の核アレルギー」どころの話ではない。彼らは核兵器を心底嫌い、憎んでさえいる。それだけに、非同盟運動諸国が「核兵器廃絶」への中心エンジンとなるだろうことは、疑いがない。
  一方アメリカ、フランスは自らの核兵器保有を、不拡散を実現しつつ、維持しようとしている。オバマ政権の事前の見込みとは違って、非同盟運動諸国の結束は固かった。そそして、最初から非同盟運動諸国は再検討会議の主導権を奪った。アメリカ、フランスは防戦一方だった。そして非同盟運動諸国からの具体的な要求を、和らげあるいは無内容化するのが精一杯で、「核テロ」の脅威を口実に、核兵器独占のみならず原子力エネルギーの「供給独占」に変質させようとしたアメリカ・オバマ政権の目論見は見事に外れた。もうアメリカが支配する「世界」ではなくなったことを象徴しているともいえる。
代表的には「中東非核兵器地帯」創設へ向けての具体的合意形成の前進であろう。オバマ政権は、これを拒否することができなかった。と、同時に現在「イスラエルの核兵器」が地球社会にとって最大の、喫緊の脅威であることが、大多数の諸国に認識された、という事でもある。
コメント中「核兵器のない世界」(the World free from Nuclear Weapons)という表現が夥しく出てくる。オバマが「プラハ演説」で使った言葉を踏襲しているという誤解が出てこようが、参加各国がこのフレーズを使っているのは、この言葉が1995年決議や2000年最終文書で使われた言葉だからだ。核兵器廃絶を目指す非核兵器保有諸国は、1995年・2000年合意を積み上げ、そのゴールを2010年再検討会議でも活かそうという観点から「核兵器のない世界」という言葉を使っている。
各国のコメントの背景まで理解することは私には不可能な作業である。(一生懸命勉強しようとしているが、にわか勉強には限界がある。)こうした背景情報を欠いているため、どうしてもこなれた日本語にすることが出来なかった。
原文には中見出しはない。私の後利用のために中見出しをいれた。中見出しは、註とともに青字として原文と区別した。



NPT再検討会議、最後の瞬間に最終文書採択:不完全で複雑な文脈だが、あらゆる側面で前進と演説者たちは語る。

2010年5月28日

「金字塔的な最終文書」


 度重なる交渉、そして何度なく行われた白熱した議論の後、核兵器不拡散条約(the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons−NPT)への参加国は、本日、見直しのための2010年会議を閉会し、全会一致の最終文書を採択して金字塔的な1968年協約(核兵器不拡散条約のこと)を前進させた。最終文書は核兵器軍縮に関する進展を加速し、不拡散を前進させ、かつ中東非核兵器地帯へ向けた作業を前進させるステップを含んでいる。

 その「継続的行動のための結論と勧告」("conclusions and recommendations for follow-on actions")の中で、包括的文章には、核軍縮のための22点の行動計画が含まれており、この22の行動計画は、「原理と目的」、「核兵器軍縮」、「安全保証」、「核実験」、「核分裂物質」、そして「核軍縮を支援するためのその他の手段」などの分野における、具体的なステップを描き出している。

 その他の行動の中で、会議は核兵器保有国がさらなる削減努力に関わること、そして究極的にはすべてのタイプの実戦配備、あるいは非配備の核兵器を廃絶すべし、と決議した。この努力は、一国主義、あるいは2国間あるいは地域的あるいは多国間による手段を含む。特にロシアとアメリカは「戦略的攻撃軍事力の削減及び制限のための手段に関する条約」(the Treaty on Measures for the Further Reduction and Limitation of Strategic Offensive Arms −START。いわゆる新START)の早期発効と完全実施の追及に深く関与すべきである。


核兵器禁止条約への特記

 再検討会議は、(国連)事務総長の、核軍縮へ向けた5原則提案(five-point proposal)について特記した。これには核兵器禁止条約(a nuclear weapons convention。不定冠詞の“a”がついていることに注意)に関する交渉を考慮することを含んでいる。また再検討会議は、核兵器保有国が核兵器を開発したり、あるいは質的に向上させたり、進んだ新たな型の核兵器を開発したりすることを制限しようとする、非核兵器保有国の至極まっとうな利益を確認した。

 この文言に従えば、オバマ政権が多くの予算を投じて旧式化した核兵器を新たに近代化しようとする計画も、最終文書では核兵器保有国が為してはならないことに含めていることになる。)

 さらに、すべての諸国は、「軍縮会議」(the Conference on Disarmament)が合意の文脈の中で、包括的かつ均衡の取れた作業計画に沿って、核軍縮を取り扱う下部組織を即座に設立することに合意した。非核兵器保有国が、あいまいでないまた法的にも裏付けされた形で安全保証(security assurances)を受けるまっとうな利益を再確認しつつ、再検討会議は、同時に、(前出)「軍縮会議」が、そのような保証のための効果的かつ国際的な討議を即座に開始することを決議した。

 再検討会議の始まる1ヶ月前、アメリカ・オバマ政権は「核態勢見直し」を発表し、イランと北朝鮮を名指しして、究極的に「核攻撃」する可能性のあることを明言した。この明言に、今回最終文書で盛り込まれた、「NPT参加核兵器保有国が核の安全保証を受ける権利の原則」を重ね合わせてみると、この決議が直接なにを示唆したものかが、見えてくる。北朝鮮はNPTから脱退をしたが、イランはNPT加盟国である。「核の威嚇」政策に沈黙を守るヒロシマ・ナガサキ<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/zatsukan/008/008.htm>参照の事。)

CTBT発効への要求

 核実験分野では、再検討会議は、すべての核兵器保有国は包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を企図すべきことを決議した。そして発効要件国(Annex 2 countries)の特別な責任、特に核施設を安全保障措置がないまま運用している未批准国、が批准し署名することを奨励することを要求した。CTBTの発効がペンディングとなっている現状で、すべての国家は核実験爆発やその他のいかなる形での核爆発を控えることに深く関与すべきである。

 CTBT発効の要件の一つは、1996年6月時点で、ジュネーヴ軍縮会議の構成国であり、かつ国際原子力機関の『世界の動力用原子炉』および『世界の研究用原子炉』に掲載されている44ヶ国すべての批准が必要。この44カ国のうち、米、中、印、パキスタン、イスラエル、北朝鮮、イラン、インドネシア、エジプト、コロンビアの10カ国が未批准。うち印、パキスタン、北朝鮮の3カ国は署名すらしていない。外務省サイト<http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/ctbt/hakko5_gh.html>)

 (会議の)結論は同時に、核不拡散及び原子力エネルギーの平和的使用、そして核軍縮、これらは条約の明白な3本柱だが、などの分野において取るべき行動を描出した。

 再検討会議は、すべての諸国が出来るだけ早い機会に国際原子力機関(IAEA)の定める追加議定書を締結し効力を持たせることを奨励した。会議はIAEAの定める法規を完全に遵守する安全保障措置義務と参加国それぞれの法的義務に対して、遵守しないすべてのケースを解決することの重要性を強調した。

中東非核兵器地帯への具体的ステップ

 これとは別なセクションでは、中東地域に関して焦点を合わせた。特に、中東地域に「中東非核兵器地帯」を創設するという1995年決議の実施に焦点を合わせ、かつそのことは投票なしに1995年、条約を未期限に延長するという点に基礎を置いていることを表象している。

 また再検討会議は2000年再検討会議で決議した、イスラエルが条約を受け入れること、またその核施設を包括的にIAEAの安全保障措置の下に置くことの重要性を再確認することを要請した。また会議は、中東地域のすべての国が、1995年決議の目的(中東非核兵器地帯の創設)を実現する確かな建設手段と適切なステップを取るべきことを主張した。

 そのゴールへ向けて、会議はすべての中東諸国参加のもとに2012年、非核兵器地帯及びその他の非大量破壊兵器地帯設立に関する会議の招集を、その地域の国家が自由に参加する調整を基盤にして、保証した(endorsed)。会議は1995年の中東に関する決議(中東非核兵器地帯創設)のその条項を当然のことと見なしている。そして会議はその決議を実施に移すことを支援するための支援機構(a facilitator)を、(国連)事務総長及び1995年決議の共同提案国によって指名することを保証した。


北朝鮮問題

 「その他の地域問題」と表題されたセクションにおいては、会議は強く、朝鮮人民民主主義共和国が6者協議の下での深い関与を満たすことを主張した。中にはすべての核兵器を完全かつ検証出来る形での放棄、2005年9月共同声明に沿ってその現存する核計画を放棄することも含まれている。朝鮮民主主義人民共和国は、出来るだけ早い時期に条約に復帰し、IAEAの安全保障措置を遵守することも主張された。


 ここでいう、2005年9月の共同声明とは北京で発表されたもの。以下が全文。

第4回6カ国協議共同声明  2005年9月19日 北京

 2005年7月26日から8月7日まで及び9月13日から19日まで、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、日本国、大韓民国、ロシア連邦、アメリカ合衆国は中国・北京で第4回6カ国協議を行った。

 中国外交部・武大偉・外務次官、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)外務省・金桂冠(キム・ケグァン)外務次官、日本外務省・佐々江賢一郎アジア大洋州局局長、韓国外交通商省・宋旻淳(ソン・ミンスン)次官補、ロシア外務省・アレクセーエフ次官、米国国務省(東アジア・太平洋担当)・クリストファー・ヒル国務次官補がそれぞれ代表を務めた。

 中国外交部・武大偉・外務次官が協議を主催した。

 6カ国は朝鮮半島及び北東アジアの平和と安定という観点から出発し、相互尊重、対等な関係による協議の精神に基づき、これまで3回の6カ国協議の共通認識の基礎として、朝鮮半島の非核化という目標を実現するために、真剣で、実務的な協議を行い、以下の合意に達した。
【1】 6カ国は、平和的な方法による、核査察を行い、朝鮮半島の非核化を実現することが6カ国協議の目標であることを重ねて申し合わせた。
 北朝鮮は、一切の核兵器及び現在の核計画を放棄し、早期に「核拡散防止条約」(NPT)に復帰し、及び国際原子力機構(IAEA)の監督の下に戻ることを承諾した。
     米国は、朝鮮半島に核兵器がなく、核兵器や通常兵器を用いて、北朝鮮を攻撃したり、侵攻したりする意思がないことを確認する。
  韓国は、1992年の「朝鮮半島非核化宣言」に基づいて、核兵器を搬入・配備しないことを承諾し、韓国内に核兵器がないことを確認する。
  1992年の「朝鮮半島非核化宣言」を遵守・実行すべきである。
【2】 6カ国は、「国連憲章」の主旨と原則および各国が公認する国際関係に基づいて、お互いの関係を処理することを承諾する。米国と北朝鮮は、相互の主権を尊重し、平和共存し、各自の政策に基づき、徐々に関係正常化を実現することを承諾した。日本と北朝鮮は、「日朝平壌宣言」に基づき、過去の歴史を清算し、懸案を適切に処理するという基礎に基づいて、徐々に関係正常化を実現することを承諾した。
【3】 6カ国は、2カ国間および多国間において、エネルギー、貿易、投資分野の経済協力を促進することを承諾した。中国、日本、韓国、ロシア、米国は、北朝鮮にエネルギーを援助することを望んでいることを示した。韓国は、2005年7月12日に提示した北朝鮮への200万キロワットの電力援助案を再度申し出た。
【4】 6カ国は、東北アジア地域の持続的な平和と安定に向けて、共同で努力することを承諾した。当該国は、個別に交渉を行い、朝鮮半島の永久的な平和メカニズムを構築するよう努力する。6カ国は、東北アジアの安全協力を強化するための道を模索することに同意した。
【5】 6カ国は、「承諾には承諾で、行動には行動で応じる」という原則に基づき、一致協調した歩調で、段階的に上述の共通認識を実現していくことに同意した。
【6】 6カ国は、第5回6カ国協議を2005年11月に北京で開催することについて合意した。具体的な日程は別途協議する。


以上「サーチチャイナ」のサイトによる。<http://news.searchina.ne.jp/disp.
cgi?y=2005&d=0919&f=politics_0919_003.shtml
><編集担当:菅原大輔・如月隼人>

注:上記6カ国協議共同声明−英文では、冒頭の部分以外、朝鮮民主主義人民共和国をDPRKと表記。大韓民国は(ROK)と表記。それぞれ、「Democratic Peoples Republic of Korea」「Republic of Korea」の略語。新華社発表の中国語版では、大韓民国の略記として「韓」「韓方」、朝鮮民主主義人民共和国の略記として「朝」「朝方」を使っている。)


「会議は成功だった」

 (最終文書)採択の後のコメントでは、多くの代表団が、問題の複雑性、時には代表団の間に広い亀裂があったことを考えると、会議が成功だったとして歓呼した。多くはロシアとアメリカの間に見られた核軍縮に関する進展がより良い雰囲気を作ったこと、を指摘した。それはブラジル代表団が、新たな潮流を確認する高いレベルでの「決定的試金石」と呼んだことに象徴されている。

 非同盟運動諸国(the Non-Aligned Movement States−NAM)を代表して、エジプトの代表団は、エジプト代表団は「次第にあきらかになりつつある善意の利点を利用しようと決めた。」と語り、この文書はこれから何年もの間、「取り引き」の基礎と見なされる、と語った。

 エジプト代表団は、不完全ではあるものの、「あらゆる側面で我々に前進をもたらすもの」と語った。中東地域に核及びその他の大量破壊兵器の非存在地帯を創設するという1995年決議の実施へ向けて行動計画が採択された点が大きな進歩だった。すべての参加国がこの問題に深く関わり、そしてこの目標を追求しようと献身したが、こうした動きなしにはこのこと(中東非核兵器地帯へ向けた大きな前進)は、不可能だった、とエジプト代表団は語った。

 中東非核兵器地帯創設をめぐる鋭い議論に暗に言及して(hinting at)、アメリカの代表は、この方向へ向かって適切に問題に対処するために2012年に地域会議をもつことを称揚したものの、同時にその達成へ向けて先行する基本要件が存在しなければならないと認識していると語った。彼女は、最終文書にイスラエルの名前が書き入れられたことによって、成功へ向けた条件作りにアメリカが発揮する能力が、危険に曝されることになった、と語り、アメリカ政府は(イスラエルの名前が書き入れられたことを)深く後悔していると語った。

 その点では、イギリスの代表団は中東決議を前進させる合意に対しては暖かに歓迎した。イギリスの代表団に取ってはむつかしい譲歩だったということを確認した上のことだ。イギリスの代表は、威嚇でなくチャンスとして本日達成したことを、すべての利害関係国に、良く見据えるようにと要請した。そして前進の時なのであって、自信を構築することが成功への基本条件なのだと語った。


カバクラン議長のコメント

 会議が最終文書を採択して閉会する前、軍縮最高代表、セルジオ・デュアルテは、参加国が共通の土台を見つけるようにという事務総長の声明を読み上げた。

 会議を閉じるに当たって、リブラン・カバクラン議長(フィリピン)は、柔軟に対応した(会議に対して)謝意を述べ、一ヶ月間に通じて示された支援に対しても謝意を述べた。参加国は、それぞれ他の代表団の立場により良き理解を示し、条約の3つの柱を強化することに対してもより良き理解を示した、と述べた。

 問題は複雑を極め、政治的現実から切り離すことは出来ないとはいうものの、カバクラン議長は成功を達成するに当たって示された意志に満足を感じた。率直な協議を通じて、参加者が、核兵器の苦悩から解き放たれた世界への地球的勢いを盛り上げたことは重要だった。

 他の分野では、再検討会議は条約の運用状況について、1995年の再検討会議及び延長会議のおける決定と決議、及び2000年再検討会議の最終文書の一条ごとに特筆した。

 また同時に「会議費用分担予定表」(NPT/CONF/2010/47<http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=NPT/CONF.2010/47>)も採択した。議長は、費用分担は会議の参加国に基づいており、また2010年5月3日に採択された「進行ルール」のルール12に対応していなければならない、と述べた。

 セクションごとに進行し、会議はその組織と作業に関する文書(NPT/CONF.2010/L.1)も採択した。含まれるセクションの表題は以下の通りである。「緒言」「会議の組織」「会議への参加」「財政的調整」「会議における作業」「文書化」「会議の結論と勧告」そして最後は議長の口頭による追加事項である。


172カ国の実質参加

資格委員会の最終報告によれば、委員長は5月25日現在、172カ国が会議に参加した。うち98カ国が正式信任状を発行し、74カ国が暫定信任状を発行した、と述べた。残り18カ国が正式な参加通知あるいは信任状を発行しなかった。さらに委員長は、その報告は最終的なものであって、モザンビークが正式信任状を発行したので、最終報告に追加した、と述べた。


参加国のコメント

非同盟運動諸国を代表するエジプト


 非同盟運動諸国を代表して、エジプト代表は、時間的制約のため「今回会議で達成しようという狙った課題すべては達成出来なかった。しかし非同盟運動諸国は、表出しつつあった善意をうまく活用しようと決断した。」と述べた。失敗は決して選択肢の中になかった。(失敗は考えてもいなかった。)「そして今回最終文書は、これから先の数年間、“取り引き”の基礎となるものだと、非同盟諸国は見なしている。」再検討会議は、歴史的な危機の中で招集された。それは新たなリーダーシップとより強力な政治的意志の中で起こってきたものだった。議長はオープンで、すべてを包摂し、透明性の高い交渉プロセスを通じて、前向きな環境を上手に使って会議を成功に導いた、と述べた。

 このエジプト代表のコメントは極めて興味深い。ひとつは、今回の再検討会議は、非同盟運動諸国が、強い団結と政治的意志をもって主導したことを示していること。このため、アメリカをはじめ核兵器諸国は防戦一方に追われたこと。また非同盟諸国は、今回会議を、極めて危機感をもって望んだこと。また会議議長の民主主義的な運営が、今回会議を成功に導いたことを示している。)

 実際の所、話し合いは、一方で核兵器不拡散条約の信頼性とって決定的に重要な問題を幅広くカバーした、他方で参加国の安全保障の問題でも話し合いが行われたとエジプト代表は述べた。各代表団は核軍縮の3つの前向きな行動計画、核不拡散問題、原子力エネルギーの平和利用に関する奪い得ない権利についても合意した。しかしながら、エジプト代表団は、最終合意は、核兵器の完全廃棄についての非同盟諸国から出された行動計画の要素、そして1995年の中東決議の実行に関しては大きく寄与するものではないことを認識した。


早くも2015年再検討会議を見据える

 そのようなものの中には、エジプト代表は、エジプト代表団は2015年再検討会議では次のような優先課題を、積極的に追求すると述べた。すなわち、2025年までの核兵器完全廃棄を目処として完全かつ速やかな核軍縮の実行を実現すること。核兵器不拡散条約の目的の地球規模での実現と条約を効果的にするため要求される普遍性を実現することに焦点を合わせた努力を追求すること。そして、2025年までに核兵器のない世界を実現する根本としての核兵器禁止条約に関する交渉をスタートすることの促進である。

 非同盟運動諸国は、核兵器の使用やその使用からの脅威に対して地球規模の、無条件の安全保証を非核兵器保有国にもたらす法的根拠をもつ手段に関する交渉をも追求して行くことになるだろう。非核兵器保有国参加国が、その国家的選択に従って平和的原子力エネルギーの利用を行うのは奪い得ない権利であることの再確認。この権利には、条約第6条と矛盾するいわれのない規制なしに核燃料サイクルを行うことも含んでいる。そして参加国による自主的な調整と確信に満ちた手段の構築は、完全に法的に正当性があることの確認。

これはイランの完全勝利だと考えられる。少なくともアメリカがこの最終文書に合意したということは、NPTの場では、自分の主張に根拠がないことを認めたに等しい。)


決定的な中東決議

 中東に関する1995年決議の実施問題が決定的に重要であることに関しては、1995年の無期限延長(の決定)の中心となる部分である。1995年中東決議は15年経た後でも全く実施に移されておらず、エジプト代表によれば、再検討会議はその実施を前進させるための行動計画を採択することによって、中東地域に核兵器及びその他の大量破壊兵器の存在しない地帯を設立するという目的に向かって一定の進歩を見せた。

 非同盟運動諸国は1995年決議を完全に実施することを主導するプロセスにおいて本日採択された実際的なステップを実施することに深く関心を持っているすべての国とともに、建設的に関わっていく計画だ。「道は平坦ではない。しかし、それが前途に横たわる唯一の道だ。」とエジプト代表は述べた。条約をイスラエルが受け入れることの重要性を、再検討会議が再確認したこと、そしてイスラエルの核施設すべてをIAEAの包括的保障措置の下に置くことを再確認したことは、条約参加国全部が1995年及び2000年の関与を追求していくことを確認したことになる。

 前向きな最終文書の採択は「確固として議論の余地のない」証拠を提示した。そしてその証拠の中で、非同盟運動諸国は交渉を通じて最大限の柔軟性を示したのである。不完全ではあるものの、最終文書は「我々をすべての側面において前進させるものだ。エジプト代表は、核兵器不拡散条約が備えているすべての条文のバランスの取れた実行とその普遍性を促進するため、2015年へ向けた取り組みに他の参加国を誘い込むつもりだ。


中東非核兵器地帯は歴史的転換点とレバノン代表

 アラブ・グループを代表して、レバノン代表は最終文書に満足の意を表明した。レバノン代表は、結論のセクションIV、そして中東地域における継続的行動および決定的要素として1995年決議(中東非核兵器地帯創設)を特に取り上げた。レバノン代表は、中東地域の安定と平和を追求するために、イスラエルが地域の他の国とともに、非核兵器保有国としてNPTに加盟することの必要性を強調した。レバノン代表は、第2委員会の委員長としてアイルランドのアリソン・ケリー(Alison Kelly)大使がこの問題に大きな努力をなした、と語った。

 アラブ・グループはこの歴史的転換点の重要性を理解している、とレバノン代表は云う。そして最終合意において、そのこと(イスラエルが非核兵器保有国としてNPTに加盟することの明記)が存在する大きな価値を強調した。アラブ・グループは、その勧告を好意的に受け止めまた2012年会議(中東非核兵器地帯創設のための国際会議)に期待している。それは世界の他の地域と同様に、中東の人々が非核兵器地帯で暮らすこと確かなものとするために世界が模索するからだ。その理由によって、アラブ・グループは、その最終文書をそのままの形で何も付け加えずに受け入れたのだ。レバノン代表は、狭い政治的見解を乗り越え、条文の積極的な方向に向かって進むこと、そしてそれは中東により良い希望を許すものなのだが、そのことをすべての代表団に向かって要請した。

 EUを代表して、スペイン代表は、最終文書に満足の意を表明した。そしてその条項に向けて直ちに前進するというEUの希望を強調した。スペイン代表は、最終文書はNPTの3本柱を前進させるものであり、中東に関する1995年決議を前進させるものとなるだろうと語った。


「最終文書」はオバマ構想を前進させるもの、とアメリカ代表

 アメリカ代表は、1年前に、プラハにおいてバラク・オバマ大統領が「核兵器のない世界」の構想を打ち出した、と語った。過去4週間、参加国は条約の実施状況について、疲れも見せず再検討し、そして合意がなされたことを再確認した。アメリカは、NPTの義務を忠実に履行するすべての国に平和目的の原子力エネルギーにアクセスすることの合意と保証を新たにするためあらゆる努力を払ってきた。

 核燃料サイクルまで含んだ原子力エネルギーの平和利用を主張する非同盟諸国と、アメリカの主張する平和利用の原子力エネルギーにアクセス=accessする権利とは、似ているようで根本的に異なっている。プラハ演説でもオバマはこのアクセス=accessという言葉を使っていた。)

 アメリカ代表は、「この条約は重要である。というのは、参加国が説明責任を保持する基本的な国際的法器官だからだ。拡散を打ち砕き、世界の隅々にまで原子力エネルギーの恩恵をもたらすものだからだ。」と語った。

 最終文書は、オバマ大統領の構想を前進させるものであり、地球規模の不拡散体制の要石を強化する全体な関与を前進させるものである、とアメリカ代表は続けた。最終文書は条約の3本柱を強化する一致した決議を示している。それは勧告や継続的行動計画を含んでおり、将来の進展の目印となるべき「前向きで均衡の取れた」行動計画を含んでいる。核兵器のない世界を追求に深い関わりを持った参加国によって作られたものだ。また最終文書はアメリカとロシアの間で達成された「戦略攻撃兵器削減制限協定」(START)に言及している。また包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効も促しており、また核分裂物質カットオフ条約に関する長く遅延した交渉の再開を促すことにも言及している。


NPTの義務遵守を強調するアメリカ

 最終文書は、また同時に、IAEAの安全保障措置についても確認している。安全保障措置はIAEAが引き続きこの分野(核不拡散のこと)で責任を持ち続けるに当たっての基本である、とアメリカ代表は述べた。最終文書は原子力エネルギーの平和利用は、すべての(NPTの義務に対する)遵守国に対して活用されるべきであることを強調しており、核供給の保証に取って多国間メカニズムの重要性も認識した。アメリカ代表団は、議長報告が、「参加国のほとんど」(“most in this hall")の見解が、参加国はその脱退以前に犯した反則に対して責任を持つべきであることを強調した。そして最終文書が参加国に対して、NPTの統合性を維持するため、条約を完全に遵守することを要求していることも、議長報告は特筆している。

 そうした文脈において、アメリカ代表はアメリカ国務長官によってなされた演説を想起した。アメリカ国務長官の演説は、イランはIAEA理事会で、安全保障措置義務に忠実でない唯一の国であり、イランはその振る舞いに置いて何ら国際的自信を強化するものではない、とするものであった。

 アメリカのコメントは、こうして見てみると、最終文書の力点が、非同盟諸国やアラブ・グループとは全く違っている、ということがわかる。あくまで「核不拡散」であり、安全保障措置義務遵守問題である。最終文書では問題にされなかった「イラン核計画」をなおも、議長報告の内容に触れるという形で問題にしている。興味深いのは、それでもなおかつアメリカは、この最終文書に同意した、ということだ。)


アメリカ政府は後悔している?!

 最終文書にはまた、中東における核兵器及び大量破壊兵器とその実戦配備システムに関して適切に問題を話し合う2012年の地域会議に関する合意も含んでいる。この問題に関しては、アメリカは長い間支持してきたが、しかしその達成のためには基本的な先決事項が存在することを確認する。アメリカ代表は、アメリカはその義務を深刻に受け止めており、成功への条件を創造するために努力するであろう、と述べた。しかしながら、アメリカのそうする力は、文書にイスラエルの名前が入ったために大きく損なわれた。アメリカ政府は「深く後悔している。」

 何ともおかしな声明だ。イスラエルの名前が入った最終文書に合意しておきながら、その直後に、そのことを「深く後悔している。」とは。恐らく最終文書にイスラエルの名前を入れなければ非同盟運動諸国は承知しなかったのだろう。それを見て取ったアメリカはいったん合意しておいて、直後にこの声明になったものだろう。ブッシュ政権時ならば、「イスラエル」の一言で、最終文書に合意しなかったであろう。しかし、これはブッシュ政権とオバマ政権の違いと云うよりも、アメリカの支配力がこの5年で凋落したと見るべきであろう。)

 またアメリカ代表は、また朝鮮民主主義人民共和国による国際法への蔑視を深く遺憾とする、と述べた。北朝鮮は、その核兵器計画を完全に放棄しない限り、絶対に受け入れられないことを理解すべきだ。6者協議の下での肯定的な関与を実施することに失敗したのであって、出来るだけ早い機会にNPTに復帰し、IAEAの安全保障措置の下に戻るべきである。北朝鮮との交渉の有効性には疑問が残る。

 声明を終わるに当たって、アメリカ代表は、アメリカ政府は建設的な文書を結果したすべての人々の貢献に深く感謝する、と述べた。すべての人々が引き続きその深い関与を継続することが必要だ。アメリカは、とりわけ「軍縮会議」(the Conference on Disarmament)に前向きに取り組む、「我々のすべてが誇りに思う」最終文書を確かなものとするために。

最後の数時間に感謝するフランス

 野心的なロードマップとして最終文書を歓迎するフランスの代表は、その成功に対して議長と主委員会及び小委員会の委員長に感謝の意を表明した。代表の同僚に言及して、フランス代表は、最後の数時間で最終文書をふたたびいじらない努力をしたことにも感謝の意を表明した。実際の所、不拡散と軍縮にとって最終文書は集約的な成功だった。最終文書は、国際社会の核不拡散条約に対する深い関与を示すものであり、これから数年間の具体的でバランスの取れたアプローチを表象している。

このフランス代表のコメントは謎だらけだ。まず今回最終文書がギリギリまで決着がつかなかったことは、このフランス代表のコメントからで明らかだ。とすれば、どの部分がもめたのだろうか?また最終文書を議長事務局が書き直す動きがあったことも窺える。フランス代表は、議長や委員会がそうしなかったことに感謝の意を表している。どう書き直そうという動きがあったのだろうか?またフランス代表は、「不拡散」と「軍縮」の課題では成功だった、といっているが、「原子力エネルギーの平和利用」には言及していない。非同盟運動諸国が「3つの柱の均衡の取れた内容」といっているのと大きなコントラストをなす。)
 
 いうまでもなく、フランスはさらに踏み込んだ内容にすべきだと信じていた。特に朝鮮民主主義人民共和国の問題とイラン拡散問題に関して。フランスの代表団が再検討会議の間繰り返し強調していたように、言葉だけでは十分ではない。この文書の中で拡散危機の断固として行動することによって、また国連安全保障理事会における不拡散と軍縮努力を追求することによって、また原子力エネルギーの民間使用を協力し合うことによって、世界はそれを解決することを示しうる。この部分では、フランスは1995年中東に関する決議が満たされ、これからの年月でパートナーとともにそのゴールへ向かって準備し、また完遂されることを希望する。


中国は核兵器完全廃絶の主唱者

 最終文書が全会一致で採択されたことを祝福して、中国の代表は、再検討会議の最後の成功から10年後、不拡散条約の効果、権威そして普遍性が強化されるにあたって有益な大きな成果を達成した、と語った。実際の所、条約の3つの目標を達成するに当たって、今回合意は大きな助けとなる、そして中国代表は今回最終文書は効果的に実行されるだろうと語った。

 いうまでもなく、中国代表はすべての核兵器の完全かつ全面的な廃棄の主唱者であり、その方面に関する国際的交渉を支持してきた。中国はまた安全保証に関する法的に拘束力をもった条約に関しても支持してきた。同時に核分裂物質カットオフ条約の早期妥結も支持してきた。この条約は核分裂物質の製造の管理にのみ有効なものである。CTBTの批准と早期発効の促進も忠実に支持してきた。また中国は、その他のNPT参加国が、その実施を促進すべく努力を払うよう参加させてきた。その中には本日の最終文書の勧告、特に中東地域におけるそれ、なども含んでいる。


最後の討論で合意進展、ロシア代表

 ロシア連邦の代表は、議長、主委員会委員長、小委員会委員長そして交渉の過程の最後の数時間での込み入ったチャレンジにおけるノルウェイ大使の技倆及びプロ意識に対して感謝の意を表明した。こうした努力がなければ、合意を成し遂げようとする能力の上にその熱意と信念は花開くことはなかったろう。それぞれの代表団はそのベストを尽くした。ロシア政府はすべての代表団が進展を見せようとする最後の討論が忘れられないだろう。

このロシア代表のコメントによっても、決裂寸前の最終合意を、各国政府のまとめようとする努力と一致した意志が乗り越えたことがわかる。)


「多くが再検討会議に疑念を持っていた」

 多くの人々が、再検討会議に疑いを抱いていた、とロシア代表はいう。しかしそれぞれの代表団はNPT体制を強化する国際社会の行動に参加することを支援した、とロシア代表は述べた。ひとつの明確な計画がNPTの核軍縮及び他2つの柱を強化するものとして浮上した。行動計画を継続させることは、NPT体制を強化するに際して大きな貢献をなすだろう。ロシア政府は1995年決議における決定を特筆した。この15年間はじめて、再検討会議は、中東地域における「大量破壊兵器及び実戦配備システム不存在地帯」創設に向けた共同作業に対して、具体的なステップを設定することが出来た。この決定の基盤はロシア代表団によって設定された考えがベースになっている。

 今回の再検討会議の最大の成果の一つは、ロシア代表が指摘するように、中東非核兵器地帯創設に向けた具体的ステップが、各国の合意で設定されたことであろう。アメリカをのぞけば、すべての国がこのことを最大の成果と捉えていることがよくわかる。ロシア代表は、この基盤となる考えを提供したのは、ロシアだと胸を張っている。それだけイスラエルの有する核兵器が、世界にとって危険という認識で一致していた、ということが指摘できるのではないか。)

 四週間にわたる深い討論は、参加国にとって、条約が依然として、国際的な軍縮と不拡散システムにとって礎石であり、大量破壊兵器の脅威を制限する鍵となる要素であって、また原子力エネルギーの平和利用を達成する鍵でもあることを示した。そのことはここに示された幅広い考え方によって示された。ロシア連邦は、会議全体を覆った建設的な雰囲気に満足している。そしてロシア代表はすべての代表団に、NPT体制を強化する躍動的で共通する努力を最大限とすることを要請した。ロシアはその義務を実施する準備が出来ている。今や主たる目的は新STARTを批准し、その義務を実行することである。

 ロシア政府は会議で決定されたすべての決定を実行するため、軍縮が各国を強化するという形において、あらゆる努力を払うであろう。「われわれの安全保障は不可分である。」そしてともに進むことのみが、結果に到達しうる、とロシア代表は語った。会議全体を通じて、ロシア連邦は、議長とそのチームを支援しようとした。ロシア代表は、さらなる協力関係を進めようとする現在進行中の支援を確かなものとする。そして共同の相当な努力に関心を払った全員に感謝する、と述べた。


オランダ代表とアルジェリア代表

 オランダ代表は、EUを代表する点に軸を合わせながら、再検討会議にこの瞬間をもたらした、議長の為した仕事と努力に対して最大級の感謝の意を表明した。オランダ代表団は、中東決議に関して15年後、会議が進展をみせたことを特に喜びに感じている。依然としてオランダは、中東地域における挑戦がよりバランスの取れたものとなることが望ましいと考えている。いうまでもなく、オランダ代表は、現在のアプローチが中東非核兵器地帯を結果するだろうことを希望している。

 ( 中東非核兵器地帯構想が、最初の決議から15年後にはじめて進展を見せた、という認識についてはロシア代表と共通したものがある。)

 アルジェリア代表団は、国際社会が軍縮と不拡散へ向けて傾いた瞬間に今回再検討会議があったことを特筆しつつ、参加国は「核兵器のない世界」という共通したゴールに向けて前進する決意とともに集まった、と述べた。1995年中東決議の実施に大きく前進した合意は主要な成果を構成する。本日、参加国は何とか具体的な方法を採択した。それは中東地域に核兵器地帯設立を結果することになるだろうと期待している。アルジェリア代表は、その最終文書におけるアラブ・グループの貢献にハイライトを当てた。核兵器が人類に対する最大の脅威であることを強調しつつ、アルジェリア代表は核兵器の廃絶が、国際社会にとって主要で全体的なゴールである、と述べた。

 (  多くの諸国やグループが、中東非核兵器地帯へ向けた具体的な進展を決定したことが、今回再検討会議の大きな成果である、という認識で一致している。日本国内での論評とは、大きな違いを見せている。日本という閉鎖社会の中での、「非核兵器地帯」に対する評価が低いことがまず挙げられる。日本国内では、外務省主導による非核兵器地帯への評価、すなわちそれは「核兵器不拡散体制の補完物」という見方が定着していること。ために今回NPT再検討会議の大きな成果が正当に評価されない。しかし、非同盟運動諸国やアラブ・グループを中心に、「非核兵器地帯」は積極的な「核兵器廃絶」への重要なステップという見方が、実感として受け止められている。次の問題はイスラエルの保有する核兵器が、人類全体にとって最大の脅威という共通認識が、日本国内では共有されていない、ことが挙げられよう。

 核兵器廃絶の道筋は、核兵器保有国、特にアメリカに核兵器保有は世界支配の有効な手段ではもはやなくなった、と現実政治の中で悟らせることなのだ。このために現実有効な手段として「非核兵器地帯」を位置づけている。)


アメリカのリーダーシップを賞賛する日本代表

 日本の代表は、最終文書の達成をリードした議長の強いリーダーシップを最大級に評価しつつ、再検討会議は数多くの大きな困難に直面していた、と述べた。極めて重要な貢献はアメリカの様々な主導のもとになされた。その手始めがオバマ大統領のプラハ演説である。また新STARTも大きな貢献をなした。

 これまでのコメントとは異質な、ちょっと見苦しいほどのオバマ賛美である。これは日本の外務省の公式見解であり、従って日本の主要メディアの基本的見方である。いわばこれが「外務省シナリオ」である。いかに日本の市民が、情報閉鎖社会に生きているかが推察できよう。どうみても、今回会議の成果をアメリカ・オバマ政権が主導したということはできない。)

 3つの柱に触れた行動計画を「比類のないもの」と呼びつつ、日本代表は、再検討会議は、核兵器保有国が速やかに様々なステップを取りまた彼らの義務を請け負う行動に合意した。さらに、再検討会議は、核軍縮にとって、その検証とともに透明性が原理原則であることに合意した。実際の所透明性はもっとも基本的な軍縮に対する要求である。各国にとって、アメリカやイギリスが示したような可視的な手段でその兵器敞を削減することは、もっとも高く勧奨される。また再検討会議は、参加国がIAEAの追加議定書を締結し、効力を持たせるべき推進していくことに合意した。そして安全保障措置と原子力エネルギーの開発の際の安全性についても再確認した。

 アメリカとイギリスは保有核兵器数を、再検討会議の冒頭に公表した。またアメリカは中国の核兵器に対してその透明性に欠けると批判した。日本代表のコメントは、これらを念頭に置いたものであることは明らかであるし、またイランは依然としてIAEA追加議定書非締結国である。しかし、これらのことは今回再検討会議における最終文書の中では、枝葉末節の問題と見える。もちろん、アメリカにとっては枝葉末節ではなく、重要議題だったが・・・。)

 同時に行動計画は、すべての期待に応えたものではなかった、と日本代表は語った。非核兵器保有国からの多くの緊急な要求にもかかわらず、核分裂物質製造の停止宣言の重要性には触れられなかった。そのような行動は、核軍縮にとって不可欠であり、地球規模で認識されるべきである。数千の「ヒバクシャ」、核兵器の犠牲者のことであるが、またその多くは70歳から80歳であるが、ニューヨークに旅してきており、外交交渉がどうなるかを見守った。ある面では最終文書は、不満足なものだった。しかしながら全体としてみれば、特に2005年と比較してみれば、今回再検討会議は大きな成功だった。2000年と比較してすらそういえる。前進すべきステップは数多い。「我々が手にした成果をもって、我々は前に進み合意したことを誠実に実行しなければならない。」と日本代表は語った。


可も不可もないイギリス代表のコメント

 イギリス代表は、今回の成果を特筆した。最終文書だけでなく、中東に関する1995年決議の実行計画にとともに、3本柱のすべてを通じた前例にない合意についてもそうだ。もっとも重要なことは、最終文書は、国際社会が継続的な自信構築に深く関わっていくこと、また利益共有の精神を発揮して、違いに架け橋をもたらしたことだ。

 現在の瞬間に至る径は長かったことを強調しつつ、イギリス代表は、特に再検討会議準備会議の各委員長に対して感謝の意を筆頭に挙げた。イギリス代表は、むつかしい譲歩の要求されることがわかっていた中東決議を前進させる交渉に合意したことを温かく歓迎する前に、その条文の2,3の矛盾点を指摘した。その件に関しては、イギリス代表はアイルランドのケリー大使に賛辞を送った。最後に、イギリス大使はすべての利害関係国に、本日達成したことを脅威としてみるのではなく、チャンスとしてみるようにと要請した。前向きにそして前進する時であり、自信を構築することが成功への基本である。


手放しで評価しないキューバ代表

 キューバ代表は、再検討会議は高い期待へと導いた、と語った。キューバ政府は積極的かつ建設的に作業し、核軍縮は引き続きもっとも高い優先順位を占めるという立場によって導いた。結果は相半ばする。結論は前進的ステップを含んでいた。そして同時に、最終条文は本来必要であるべき内容からすると依然としてほど遠いものであった。最終的結論は、依然としていくつかの核兵器保有国との間には距離があることが明白なままとなった。その一方で、喜んで取るべき具体的なステップも明確となった。

 キューバ代表は、最終文書は核兵器不拡散条約を強化することを目指していないことを残念に思っている。それは会議議長の考えの反映であって、参加国の反映ではない。条約実行の見直しで使われる手続きは先例とすべきではない、あるいは将来の慣例として使用すべきではない。行動計画は、一歩前進とはいうものの、「限定的であり不十分」であった。非同盟運動諸国から提案された多くの行動計画は「薄められた希望と念願」としてしか反映しなかった。キューバは、2025年までを期限として核廃絶を達成することも含め出来る限りのことを行った。しかしそれは叶わなかった。


「段階的アプローチ」は現状維持の口実

キューバ代表は、その他の制限(交渉)の中でも、最終文書は核兵器禁止条約に関する交渉の必要性について言及していない、という。また新たな核兵器の開発について明確な形でその禁止にも触れていない。さらに、最終文書の条文には、核兵器を保有していない諸国における核兵器からの即時の撤退の必要性に対する要求も含まれていない。また非核兵器保有国に対する普遍的な安全保証を盛り込んだ、国際的かつ法的拘束力のある手段の採択もしていない。「一歩一歩のアプローチ」(“step-by-step approach")は、現状をそのまま維持するための口実として使われてはならない。核軍縮は継続的な遅れの対象であってはならない。本日は狂喜すべき理由も、また悲観的になる理由も見当たらない。今日の結果は動機付けとして機能すべきだ。「核兵器のない世界を達成するまで、我々は休むことは出来ない。」とキューバ代表は語った。

キューバ代表のコメントはかなり手厳しい。アメリカの目と鼻の先で長年、核兵器の脅威にさらされ続けてきたキューバとしては無理もない、という解釈も成り立とう。

 このキューバ、そしてイスラエルとその背後のアメリカの核兵器に脅かされ続けてきたアラブ、中東諸国、ロシア、中国の核兵器のはざまで怯え続けてきたモンゴルや中央アジア諸国、長年核兵器の実験場として使われ、またアメリカの核兵器実戦配備に怯え続けてきた南太平洋諸国、ベトナム・ラオスで何度もアメリカの核兵器使用の悪夢に悩まされ続けてきた東南アジア諸国など、世界の多くの市民は核兵器を唾棄している。ヒロシマやナガサキが核兵器廃絶の先頭に立っている、という根拠のない思い上がりはもうやめにした方がいい。)


原子力発電を拒否するオーストリア

 オーストリア代表は、オーストリア代表団はNPTを地球規模の核軍縮及び不拡散体制の礎石だと見なしている、と語った。そして討議において楽観主義を持ち続けたいと語った。またオーストリア代表は、中東地域における非核兵器地帯設立に関する進展を歓迎した。

 オーストリア代表は2週間前、行動計画の原案を最初に再検討会議議長に送付した時、議長が「これは大胆な案だ。」とメールで返事を返した時のことを思い出す。2週間後、最終文書にはオーストリア代表が望んだすべては盛り込まれてはいなかった。しかしそれは強力な手段のパッケージだった。そしてオーストリアは、それをこれからやってくる見直しサイクルの進展を量るスコアカードとして使いうる。オーストリア代表は、オーストリアの連邦憲法(の考え方)に沿った行動計画のある部分を強調していることを理解した上で、総意に参加した、そしてオーストリアが新たな核原子力発電に全く興味がなく、それに関わらないことを強調した、と語った。さらにその上、オーストリアは適切なレベルの安全性はIAEAの基準に対して計量されるべきだと信じている。


もっとも手厳しいイラン代表

 核兵器不拡散条約に対する非同盟諸国運動参加国を代表するエジプト代表のコメントに関連して、イラン代表は、核兵器の存在は人類に対する最も喫緊の危険だと述べた。またその破滅的な結果は、そのようなことが起こらないように防止するあらゆる手段をとることがすべての人間の義務として科せられている、とも述べた。その無差別的な性格は、国際人道法の下に禁止さるべきものとして分類される。

 イラン代表は、核兵器敞を近代化することは非難されるべきだ、そして寛容であってはならないと強調した。核能力の増大は、その政治的信頼性の減少と等しくあるべきだ。国際社会は決められた期限内に核兵器の獲得や使用を禁止する実際的なステップを、正当にも期待していた。2000年に、(1995年の)拡大交渉に続いて13の段階が確認された。しかし不幸なことに、それら(13の段階的実行計画)は実施されなかった。そしてその上、それらとは逆の手段が採用された。弾道弾迎撃ミサイル制限条約(the Anti-Ballistic Missile Treaty)の撤廃は、2000年合意の違反だが、その核兵器実戦配備の地位が上がるとともに、またその国家安全保障ドクトリンにおける地位が向上するとともに、核兵器の質的改善と新たな開発段階へと導いていった。そのような政策が2005年再検討会議失敗の主要な理由となっている。

 弾道弾迎撃ミサイル制限条約について日本語Wikiは次のように説明している。『弾道弾迎撃ミサイル制限条約−ABM条約は、1972年に締結されたアメリカ合衆国とソビエト連邦間の軍備制限条約。弾道弾迎撃ミサイルの配備を制限した条約である。2002年にアメリカが脱退したことから、事実上無効化した。』<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%BE%E9%81%93%E5
%BC%BE%E8%BF%8E%E6%92%83%E3%83%9F%E3%82
%B5%E3%82%A4%E3%83%AB%E5%88%B6%E9%99%90
%E6%9D%A1%E7%B4%84>
。すなわちここでイランは、ブッシュ政権時の核兵器政策の変更が、ABM条約撤廃とともに、2005年再検討会議失敗の大きな理由だと、述べている。)


「核軍縮交渉」は画餅

 2010年再検討会議はいくつかの核兵器保有国が単独の手段を採用する中で招集された。期待とは反対に、それら諸国の取った姿勢は、ある種の姿勢を断ち切る準備ができていないものを示すものだった。今回最終文書案に前回再検討会議で打ち立てられた基本的理念に関する明白な言及が欠けていることは不幸なことである。

 イラン代表は、その例として、核兵器保有国による核兵器敞の実戦配備地位削減の再確認が、水で薄めたものであったとし、それが役に立たないものであった、と述べた。核兵器保有国のいう核兵器の開発や質的改善の停止に関わる再確認はそれらの諸国の「正当な利益」という説明に取って代わられた。また、最終文書の条文は、核武装国は彼らのドクトリンの中で核兵器廃絶をすべきであると確認していない。そうではなくて、核兵器の意味を「減少させてくれ」と頼んでいるに過ぎない。

 イラン代表は、条文の別な部分で、不十分な1国によるあるいは2国間の(核軍縮)手段を歓迎することにより、軍縮に関して「バラ色の絵」を描いている、と述べた。アメリカは、条約の義務に違反して、その戦略システムを近代化するために核兵器実戦配備システムに1000億ドルを投資すると公式に声明した。そしてフランスとアメリカが、その核兵器敞に対して影響を及ぼさないように、核兵器の使用または使用すると威嚇することに関して禁止する合意を妨げたのは不幸なことであった。


禁止されなかった核拡大抑止

 非核兵器保有国の支配領土内での核兵器搬送に関しては、条文はそうした兵器の撤去を要求することに失敗した。全面的核兵器廃絶へ向けて期限を特定することを伴った法的枠組み、2025年までの核兵器禁止条約も含めて、は非核兵器保有国の重要な要求だったが、これも盛り込まれなかった。それは一つの達成成果ではない。

 イラン代表は、条文の「普遍性」セクションはイスラエルの核兵器開発に対する中止要求に関しても、イスラエルのNPT参加要求に対しても沈黙した、それは「明白な後退である。」、と述べた。最終文書はまた1995年の核兵器国と非核兵器国との間の核分裂物質及び核分裂装置資源の移転に関する合意の正当性についても沈黙した。

 中東非核兵器地帯問題に関しては、イラン代表は、15年間実施されなかった後、地球社会及び中東地域の諸国は一定の核兵器保有国が義務を履行することの深い関わりを期待した。条文は、非核兵器地帯創設の唯一の障害であるイスラエルに、無条件でNPTに参加することを要求することに失敗した、と述べた。中東の政治的現実は、言語に絶する、とイラン代表は留保を表明した。別な例では、再検討会議は地球社会の期待に十分に応えていないことを示した。しかしながら、最終文書に明記された手段はそれでも前進への一歩である。条文は核軍縮へ向けた共通ゴールへの重要な指標として機能しうる。

 手厳しいイランの見解だが、このイランのコメントの冒頭に「非同盟諸国運動参加国を代表するエジプト代表のコメントに関連して」とわざわざ断ってあること、イランのコメントが異例の長文であり、しかも具体的であることを考えると、イラン単独の見解とは考えにくい。イランは恐らく、非同盟運動諸国の強面役を演じている、と考えることができる。それは、この再検討会議にイランだけが大統領を出席させ、激しくアメリカをはじめとする核兵器保有国を非難したことでも傍証される。)

 イラン代表は、他の諸国の見解に敬意を示し、政治的善意を示すため最終文書合意に参加した、と語った。イランは、他の核兵器保有国とともに、特に非同盟運動諸国とともに、再検討会議の決定を完全実行することを追求し、そして再検討会議で完全に満たされていない期待をも実現することを決意する。


オーストラリアは日本と共にアメリカの「忠犬ハチ公」

 オーストラリア代表は、再検討会議成功へ向けて協力の精神が決定的だったとしながら、条文への支持を表明した。前回までの再検討会議に表出された合意に組み込まれたNPTの3つの柱全体を通した極めて幅広い、また前向きな行動計画である。しかしオーストラリアの代表団はさらなる透明性とともに核分裂物質製造に関する即時停止を(条文の中に)見たかった。さらに、最終文書はIAEAの安全保障措置強化に関してより強くあって欲しかった。そして数年の間には合意を得るよう作業するという内容が欲しかった。オーストラリア代表は、そのパートナーである日本と「ウィーン10グループ」に謝意を表明した。

 これを読んでもわかるが、オーストラリアはアメリカにとって日本とともに2匹の忠犬ハチ公だ。)


アルゼンチン代表とリビア代表

 アルゼンチン代表は、稠密で極めて建設的な4週間の後、そのコメントの最初は、議長に向けられた。そして、議長の楽観主義の精神は一貫して伝染的(contagious)だった、と述べた。多くの事柄が脇に押しやられたとはいえ、最終文書は重要な一歩だった。実際の最終文書の条文は、複雑で、明白かつ具体的な手段をはっきりと述べたものであり、その結論及び継続的行動計画は2000年のそれを越えて前進したものだった。

 アルゼンチン代表は、特に、最終文書は軍縮の分野での作業を指し示す計画を提示しており、アルゼンチン代表団は2015年に可能となるだろう核軍縮のさらなる進展に関する完全報告に希望をもっている、と述べた。その部分として、アルゼンチンは月曜日(5月28日が金曜日なので、月曜日は5月31日のことと思われる。)から開始して核分裂物質カットオフ条約のための軍縮会議に取り組む。原子力エネルギーの平和利用問題に目を転ずると、アルゼンチン代表は、アルゼンチン代表団としては、最終文書がその分野の前途に横たわる成長に対する国際社会の適切な準備について述べていることに満足している、と語った。最後に、アルゼンチン代表は、国連事務総長が2012年中東会議を開始するに当たってその準備を行う支援国をまもなく指名することに希望を持っている、と述べた。

 リビア代表団は、最終文書はすべての期待には応えていないとはいえ、再検討会議が失敗だったとはいえない、と述べた。リビアは、核兵器の完全廃絶に向けた条約の第6条に設定された核保有国の関わりについて条文が触れていること、そしてそのゴールに向けた国際条約の設立に期待をかけている、と述べた。しかしながら、その志向性は、核兵器保有国によって強く反対されてきた、そして、そのことに関しては、失敗だった。その結果として、リビアとしては、核兵器保有国の核施設を検査することを確かなものとする条約を追加するため会議を招集することを考慮している。


リビア代表の警告

 これに続けて、リビア代表は、大国はそれぞれの国内課題の背景に対する純粋に政治的な理由によって不拡散分野で二重基準を採っていることは残念である、と述べた。いくつかの国は一定の国の名前を挙げることに反対しており、それらの国をNPTに加盟させる必要性に反対しているが、彼ら自身が他の特定の国の名前を挙げ続けている。

 ( 随分遠回しな言い方であるが、大国とはアメリカとフランスである。核保有国としてイスラエルの名前を挙げてNPTに加盟させよう、という動きには反対するくせして、自分たちはNPT加盟国であるイランを核疑惑国として名前を挙げ続けている、という非難だと解釈すれば、わかりやすい。)

 リビア代表はそのアプローチは、迅速なNPTからの脱退を招く、と警告した。リビアは、最終文書におけるイスラエルの取り扱いについては不満ではあるが、それが中東非核兵器地帯設立に向けて進展を育む勧告となるだろうと期待している、と述べた。そしてNPT寄託国はそれぞれそのゴールに向けて取り組むことを希望する、と述べた。

 南アフリカ共和国の代表は、昨晩示された最終文書草案はやや期待はずれの方法で問題が提示されていた、と述べた。いくつかの国は追加条項を進めたいという誘惑に駆られたとは思う。しかしながら、草案が微妙なバランスを追求しており、また条約を強化する必要性を理解することで、彼らはそうすることを耐えた。(追加条項の提議をしなかった。)さらにいうならば、この合意はそれ自身最終的なものではない。しかし核兵器のない世界を達成する方向への第一歩を象徴している。南アフリカ代表は、南アフリカは責任とともに柔軟性を実現した人々に対して感謝の意を表明する、再検討会議は、もし今日なされた合意が完全に実施されたときに、それが成功だったが判断される、と語った。


非核兵器地帯の重要性を認識するチリ代表

 チリの代表団は、核兵器不拡散条約は国際的安全保障の要石であることには変わりない、と述べた。今日の結果は、国際システム全体に対する肯定的なシグナルを送った。最終文書は、完璧と云うにはほど遠い。しかし、核兵器のない世界の構想にとっては、会議全体を通じて、潜在力の種はまかれた。非核兵器地帯を構築してきた世界の部分は、再検討会議からのメッセージが部分的に認識されたことを祝うであろう。

 このチリ代表のコメントは、とりあえず非核兵器地帯の創設が、目に見える形での核兵器廃絶の方法論である、と認識している国が多いということを示している。)

 チリ代表は非核兵器地帯に関して開かれる会議が再検討会議構成の中で組織されたことを歓迎している。中でもその中心的な成果は中東におけるそのような地帯を実現すべく政治的キャンペーンを発足させようという決断が行われたことだ。NPT再検討の過程は進化している、そして以前になした行動によって支援されている。再検討会議の「最も美しい装飾」かも知れない熱意を身にまといつつ、市民社会(civil society)はその存在感を示した。それらの名称は、参加者リストで29ページに埋め尽くされている。そしてチリ代表は彼ら(市民社会からの代表たち)に対して感謝の意を表明した。


カナダ代表とメキシコ代表

 カナダ代表は、カナダ代表団は、最終文書は「提示できる最良のもの」とする議長の昨日(5月27日)のコメントをひとつひとつリストにした、と語った。カナダはその条文に対して完全なバックアップを行った。その勧告や継続行動計画は、参加国を、その3つの柱を強化する方向に連れて行くものだ。多くは、1995年及び2000年に構想されたように、そのプロセスを強化する希望を持ち続けている。カナダはNPTプロセスを真に強化し前進させることを欲している。全員が、条約の普遍性と前向きな課題の達成を実現することを目的として、意味の大きい成果を欲した。10年の後、単なるもっともらしい常套句を越えて、我々は「ほとんど達成された」進展をみた。カナダはさらに大きな問題が待ち受けていること、そしてそれはリスクのあることを理解している。カナダは文書全体を支持する。改善を目指すその他の真の友人とともに、カナダはこうした課題の前進をもたらすために働くであろう。

 メキシコ代表は、最終文書は完全ではないものの、橋を構築した、と語った。二代目国連事務総長のダグラス・ハマーショルドが形容したように、最終文書は「我々を天国に連れて行く」ものではないが「地獄から距離を置いた」ものだった。地獄とは核戦争である。メキシコは最終文書は、核兵器保有国が「核兵器のない世界」へ向けて一歩踏み出す関与を設立した、と見なしている。メキシコは、人類が発明したものの中でもっとも破滅的なものの廃絶へ向けて引き続き働くことを強調しつつ、メキシコ代表は再検討会議のメッセージは今日世界社会に向けて発進されることを歓迎する、と述べた。


インドネシア、ベトナム、ブラジル

 インドネシア代表は、非同盟諸国運動を代表する自らの代表団とASEAN諸国を代表するやがて行われる声明に関連して、2005年の失敗は今年の再検討会議では再来しなかった、と述べた。実際の所、この再検討を成功させようという必要な政治的意志は奮い立たせた。そして、核軍縮と不拡散を前進させようとする唯一つの選択肢として、最終文書がすべての諸国のための具体的な行動計画を記述したのだった。インドネシア代表は、契機は捕まれねばならない、そしてすべての条文上の手段は、「核兵器のない世界」という目標を達成するために等しく実行されねばならない、と強調した。

 ASEAN諸国と非同盟運動諸国を代表してのべつつ、ベトナム代表は議長にお祝いをのべ最終文書が採択されたことを歓迎した。

 ブラジル代表は、最終文書と合意された行動計画はバランスの取れたものだと述べ、ブラジルはその実行へ向けて確固として働くと決意している、と述べた。核軍縮へ向けての、最近の好意的な雰囲気に訴えつつ、ブラジル代表は、再検討会議は、障害物を全く成功裏に乗り越えることを確認する決定的なテストだった、と述べた。軍縮会議における作業の再開を手始めとして、来週から始まる作業プログラムの採択を通じて、ゴールへ向けた努力はすべての関連のある組織内において継続されなければならない。さらに、その作業プログラムは今年をスタートとして実行されるべきだ。


カンボジア、ナイジェリア、ノルウエィ

 議長、そのチーム及び事務局団を讃えつつ、カンボジア代表団は10年間の麻痺状態の後、議長の仕事とその達成成果はカンボジアにとって特別な意味を持つと語った。最終文書は前に横たわる作業を詳述している、カンボジア代表は、その道に続く5年間を熱情的に欲している、次回の再検討会議もまた成功するだろう、と述べた。カンボジアは行動36、44及び45は明確に、テロリズムの助けを借りる勢力に相対する諸国の責任を設定している。

 行動36は「Action 36: The Conference encourages States parties to make use of multilaterally negotiated and agreed guidelines and understandings in developing their own national export controls.」

  行動44は「Action 44: The Conference calls upon all States parties to improve their national capabilities to detect, deter and disrupt illicit trafficking in nuclear materials throughout their territories, in accordance with their relevant international legal obligations, and calls upon those States parties in a position to do so to work to enhance international partnerships and capacity-building in this regard. The Conference also calls upon States parties to establish and enforce effective domestic controls to prevent the proliferation of nuclear weapons in accordance with their relevant international legal obligations.」

  行動45は「Action 45: The Conference encourages all States parties that have not yet done so to become party to the International Convention for the Suppression of Acts of Nuclear Terrorism as soon as possible.」)

 ナイジェリア代表は、最終文書は「核兵器のない世界」に大きく傾いた国際環境を改善することによって、喜ばしい影響を与えるものだ、政治的意志と、共有した価値観と利益が共に存在すれば、核の危険に、国際社会が達成できることを示すものだ、と語った。これまでの数週間に各国代表団が示した柔軟性を祝福すると語った。

 NPTの信頼性を危うくするものは何もなかった、とノルウェイ代表は述べ、成功裏の結果に対して議長を祝福した。達成は容易ではなかった。ノルウエィは軍縮により力を入れていた、特に厳密な予定表とより強力な不拡散行動であるが、この分岐点において、可能でベストな行動計画が採択され、ノルウェイはそれを受け入れた。最終文書は1995年と2000年の契約(compacts)を回復した、そして重要なことは中東決議を書き入れたことだ。最後に、ノルウェイ代表は、NGO社会による参加は、それらの関与が必要であることと、その価値を示した、と述べた。

韓国、ヴェネズエラ、スーダン、タンザニア

 韓国の代表は、本日の意義深い最終文書はNPTの将来に対するなかなか消え去らない疑いを追い払うものとなった、そして条約の再活性化を確立するものとなった、と述べた。韓国の代表団は特に朝鮮民主主義人民共和国に関する国際社会によって示された一致した立場を喜ばしく思う。この問題は国際的平和と安定性に対する脅威である。

 ヴェネスエラの代表は、過去4週間の間、核兵器保有国がそのゴール(核兵器廃絶)を達成することを保証するには、世界はまだまだほど遠いことを示した果てしのない交渉があったとはいえ、最終文書は「核兵器のない世界」に向けた長い道のりの重要な第一歩である、と述べた。依然として 地球の隅々の人類はそうした世界を要求している。

 ヴェネズエラ代表は、今日合意に達したことを賞賛したが、作業は不完全なものだとも述べた。これは2025年までに「核兵器のない世界」を達成しようと提案した非同盟諸国運動について、特に真実である。ヴェネスエラ代表団は、再検討会議が中東に関する「セクションIV」で設定した段階を越えることが出来なかった、と理解している。しかし2012年までにさらなる進展があるものだと期待している。最後に、条約そのものを書き直そうとする合意には達すことができなかった、とヴェネズエラ代表は嘆いた。

 スーダン代表は、非同盟運動諸国を代表してなした演説に焦点を合わせつつ、最終文書の条文は、大志と完全に合致したものとは言い難いが、進展だと見なすことが出来る、と述べた。最終文書一つの刺激材であって、中東決議の実施と中東を非核兵器地帯化する方向へ向けて迅速に動いていく、強力な駆動力となることが期待される。また同時に「核兵器のない世界」へ向けて、次の5年間に重要な動きが見られることを合わせて期待する。

 タンザニア連邦共和国の代表は、再検討会議の最終文書に対するタンザニアの支持を繰り返し述べつつも、非同盟運動諸国を代表して述べられた演説に自らを関連づけた。そして特に中東決議に関してそうした。NPTの重要性を特筆しながら、タンザニア代表は、原子力エネルギーの平和目的の使用については各国は享受できるが、核兵器は歴史のゴミタメ箱に追いやるべきだ、ということを最終文書は自ら証拠立てた、と述べた。タンザニア代表は、最近のアメリカとロシアの間に行われた契機を失わないようにすることが基本だ、と述べた。またタンザニア代表は南アフリカ共和国が核兵器を廃絶したことは、「核兵器のない世界」に向けての別なステップだと脚光をあてた。