【参照資料】原子力規制委員会 2014.1.14
追記2014.3.17

<参考資料>原子力災害対策指針(2013年9月5日全部改正即日施行)

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(以下、追記 2014.3.17) 
震度6弱で重大事故警戒体制に入る

 2014年3月14日未明「伊予灘沖を震源とする地震」が発生した。
(気象庁地震情報のサイト<http://bousai.tenki.jp/bousai/earthquake/detail-20140314020702.html>)
 発生時刻の午前2時06分頃、私は事務所で作業をしていた。相当な揺れが続いた。広島市の震度は「5弱」であることがすぐに確認できた。次に震源地である。もし東日本が震源地ならこれで日本は終わりと覚悟した。福島あたりが震源なら、傷ついている福島第一原発が今のまま小康状態を保てるはずがないからだ。震源地は伊予灘沖とすぐに判明した。するとすぐに四国電力伊方原発の安否が気になった。これも震度「5強」ということで安堵した。この安堵には二重の意味がある。一つは震度5強であれば、よほど四電がへまをしない限り、重大事故につながる異変はないだろう、という安堵だ。もう一つは震度「6弱」でなかった、という安堵だ。

 現行原子力災害対策指針はお読みいただければわかるが、福島原発事故並の苛酷事故の発生を強く意識した書きぶりになっている。この種の苛酷事故への進展をいかに防止するか、もし進展しそうな時にはいかなる対応を取るかが問題意識の中心にすわっている。(といって苛酷事故が起これば避難しか有効な対策はないのだが)

 その段階は、「準備段階」、「緊急事態の初期対応段階」・・・となる。(本PDF版5頁以降)
 「緊急事態の初期対応段階」はさらに次の事態に分かれている。
  ・警戒事態
  ・施設敷地緊急事態
  ・全面緊急事態

 わかりやすくいうと、警戒事態は、緊急事態に発展する徴候が現れている、特別な体制を敷いて警戒し、それ以上の進展を防止しなさい、という事態だ。施設内緊急事態もわかりやすく言うと放射能が洩れて敷地内に流れ出した、という事態だ。全面緊急事態はいよいよ放射能が敷地の外に洩れはじめた、という段階だ。施設敷地緊急事態発生はすでに重大事故発生である。全面緊急事態はすでに苛酷事故の発生、とみなして差し支えない。

 今この記事での話題は「警戒事態」である。原子力災害対策指針は「警戒事態」を細かく具体的に定義している。沸騰水型原子炉の場合は「警戒事態」について13頁から14頁にかけて箇条書きに記述している。また加圧水型原子炉の場合は19頁に、これも箇条書きに記述してある。

 今回の伊予灘地震に直接関連している項目は、いずれも同様で、「当該原子炉施設等立地道府県において、震度6弱以上の地震が発生した場合」という記述である。(沸騰水型では項目番号K、加圧水型ではJ)
 つまり原発の立地する道府県で震度「6弱」の地震が発生した時は、原発は苛酷事故を想定して「緊急事態の初期対応段階」の「警戒事態」に入るということだ。この事態では「体制構築や情報収集を行い、住民防護のための準備を開始する」ことが求められている。

 3月14日伊予灘地震では伊方地方は震度「5強」だった。「6弱」ではなかった。気象庁にとっては「6弱」は「5強」の一つ上の震度にすぎない。しかし原子力災害対策指針、それから伊方町周辺、
愛媛県の県都松山、さらには直線100km地点の広島などに住む私たちにとってはそうではない。「5強」と「6弱」の違いは、平常時かあるいは「緊急事態の初期対応段階」の違いの分かれ目なのだ。今回はその分かれ目一歩手前で震度が落ち着いた。それで私が安堵したわけである。

 しかし、震度5、6、7などはこれからしょっちゅう発生するレベルの地震だろう。そのたびごとにひやひやし、あるいは安堵する、などとはバカバカしい限りである。地元の人たちはなおさらではないかと思う。
(以上、追記 2014.3.17)

原子力災害対策指針の主な特徴
(1)
 2013年9月5日原子力規制委員会は『原子力災害対策指針』を全部改正し、即日施行した。原子力災害対策指針の法的根拠は『原子力災害対策特別措置法』(2013年6月21日最終改正)であろう。

 同法は「第6条の2」で“原子力規制委員会は、災害対策基本法第二条第八号 に規定する防災基本計画に適合して、原子力事業者、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関その他の者による原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策(次項において「原子力災害対策」という。)の円滑な実施を確保するための指針(以下「原子力災害対策指針」という。)を定めなければならない”としている。

 そして、原子力規制委員会は、「原子力災害対策指針」の中で、
一  原子力災害対策として実施すべき措置に関する基本的な事項
二  原子力災害対策の実施体制に関する事項
三  原子力災害対策を重点的に実施すべき区域の設定に関する事項
四  前三号に掲げるもののほか、原子力災害対策の円滑な実施の確保に関する重要事項
を定めなければならない、としている。

 特に現在重要なのは「三  原子力災害対策を重点的に実施すべき区域の設定に関する事項」であり、これはすべての原発周辺自治体に関係してくることなので、よく記憶しておいて欲しい。
(2)
 原子力規制委員会が2012年9月に設立されて以来、原子力災害対策指針は早くも、3回全部改正されている。最新の改正は2013年9月5日だが、その骨格は2013年6月5日改正版でできあがっている。ポイントは、「原子力災害重点区域」を各原発から半径30km圏とし、即時避難の対象区域を空間線量率で表現し、「毎時500μSv」以上としていることだ。「毎時500μSv」は1週間(7日間)の被曝線量に換算すると約50mSv(ICRP実効線量)となり、チェルノブイリ事故時の5mSv以上、フクシマ事故時の20mSv以上、と比較しても大幅な被曝強制基準となる。

(3)
 是非原文を読んでおいて欲しい。特に地方自治体の首長、災害対策当局責任者、地方議会の各議員は必読である。「原発問題はエネルギー問題。エネルギー問題は国の専管事項。従って地方行政にはなじまない課題」と澄ましていられないことがわかる。原発問題は、とりわけ住民(つまり私たち)の暮らしの問題、「生存権問題」であることが理解されよう。

(4)
 冒頭『1.原子力災害』の中で『(4)放射線被ばくの防護措置の基本的考え方』を明確に示しており“基本的考え方としては、国際放射線防護委員会等の勧告、特にPublication 109、111や国際原子力機関(International Atomic Energy Agency以下「IAEA」という)のGS-R-2等の原則にのっとり”と全面的にICRP勧告とそれに基づくIAEAの基準に従っていることを表明している。


原子力災害対策指針 (2013年9月5日全部改正即日施行)……