【参考資料】原子力規制委員会 2014.2.24

<参考資料>原子力規制委員会 平成25年度第43回会合
  「原発立地自治体」とはどの範囲か?


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 2014年2月19日原子力規制委員会平成25年度第43回会合は、非常に重要なことを決めた。現在進んでいる規制基準適合性審査の対象原発の審査を一つに絞り込んで、候補をあげ、その候補について「審査書案」を作成しようというものだ。現在審査を受け付けているのは次の原発原子炉である。( )内は申請受付日。

北海道電力 泊原発 1・2・3号炉 2013年7月8日
関西電力 大飯原発 3・4号炉 2013年7月8日
高浜原発 3・4号炉 2013年7月8日
四国電力 伊方原発 3号炉 2013年7月8日
九州電力 川内原発 1・2号炉 2013年7月8日
玄海原発 3・4号炉 2013年7月12日
東京電力 柏崎刈羽原発 6・7号炉 2013年9月27日
中国電力 島根原発 2号炉 2013年12月25日
東北電力 女川原発 2号炉 2013年12月27日
中部電力 浜岡原発 4号炉 2013年2月14日

 審査がはじまって2月末でほぼ8か月となる。そろそろここらで一区切りをつけようということだろう。原子力規制委員会は原発推進のための行政組織であることを忘れるべきではない。原発・核施設をやめるなら、必要なのは「核施設廃止委員会」なのであって規制委員会ではない。

 この日、規制委は規制庁原案をほぼ了承する形で以下のように決めた。

1. 現在審査中の原発を一つに絞り込み、規制庁審査官総力を挙げて審査体制を組んで審査書案(事実上の合格原子炉)をまとめる。
2. 現在決まっていない「地震の基準震動値−Ss」や「津波時の波の高さ」を早急に(恐らく2-3週間以内)に決定する。そうすると審査書案作成の基本的障害が除かれる。
3. 科学的・技術的意見を広く募集する。(パブコメ。この時社会科学的見地が含まれるのかどうか不明)
4. 同時並行的に原発立地地元で公聴会を、地元と共催し“科学的・技術的意見”を聴取する。(3.4は合わせて4週間程度の期間を見る)
5. その上で審査書案を審査書とし、合格の決定をする。「合格すれば原子炉設置変更許可」を交付する。同時に工事計画と保安規定について並行審査する。再稼働には「原子炉設置変更許可」「工事計画認可」「保安規定認可」の3つが要件となる。
6. 再稼働の決定は政治判断となるので、規制委マターではなく内閣が決定する。

 この日の会合では、また「立地自治体及び周辺自治体」を『立地自治体』と初めて定義した。「立地自治体」という言葉が、定義の主語と述語に登場するので同義反復なのか、と思いがちだが実はそうではない。主語の「立地自治体」は、これまでの自治体、すなわち福島原発事故までの立地自治体、直接原発が立地する自治体及びそれを内包する県を指している。周辺自治体とは文字通りこれまでの立地自治体を指すが、どの範囲を指すかはほぼ原発から30km圏ということになろう。これは原子力災害対策指針で定義する「原子力災害重点区域」に対応する。フクシマ事故並みの苛酷事故が起これば、避難または一時移転の対象区域で広域避難計画が義務づけられている地区である。ようするにこれまでの「原発立地自治体」は、原発から30km圏の自治体へと拡大して「立地自治体」となったわけだ。原発立地自治体の概念は劇的に変化したわけだ。しかしこの劇的変化は今回規制委会合で初めて打ち出された概念ではなく、すでに施行されている「原子力災害対策指針」ではっきり打ち出されていた概念である。すなわち原子力災害重点区域=被害地元=立地自治体、とする考え方である。

 しかし、この日の「規制委員長記者会見速記録」を読む限り、規制自体が明確な数字で「立地自治体」を決めるのをためらっているかのように見える。それはそれぞれの原発立地地元で「立地自治体」を決定してくれ、というニュアンスを色濃い。これは規制委がやっかいなことから逃げているとも取れるし、フクシマ事故のケースから見ると立地自治体を数字で括ることができない、という事情もある。現実に福島第一原発から60km圏の飯舘村は、現在の避難基準に照らしても事実上の避難地区である。原発苛酷事故の被害地区が「原発立地自治体」という考え方からすると、確かに規制委が数字で「立地自治体」を決めることができない、という事情もあろう。

 さて再稼働に関して、原子力規制委員会・委員長、田中俊一は極めて示唆に富む発言をしている。記者会見速記録から関係個所を引用する。
・・・私たち(規制委)の判断を踏まえて、あとは今、政府とか何かはそういうものについて再稼働をさせよという言い方をされているというのは、私は別に否定する必要はないわけで、別にこちらがお墨付きを与えるとか、そのためにやっているとかいう意識は全くないです。最終的にはやはり地元の住民も含めた国民の判断に関わってくるのだろうと思いますし、そこでその方たちがやはり信用できないということでだめだったら、なかなか再稼働には到達しないかも知れません。でも、そこは我々の関与するところではないです」(速記録8頁)

 そのいうところは、再稼働の判断そのものは、規制委の関与するところではないが、もしその方たち(国民であり、ここは特に原発立地自治体に暮らす住民、を強く意識したいい方であろう)が信用できない、ダメだ、ということになれば、再稼働すべきではない、というニュアンスが強く感じられる。またこの点は、田中の憂慮する点でもある。もし地元や国民の意思に逆らって、安倍自民党政権が原発再稼働を強行するなら、それは必ず手痛いしっぺ返しを食う、その時は原発・核施設が日本から叩き出される時だ、という懸念である。

 原発再稼働は今大ヤマを迎えている。私たちはあらゆる機会を捉えて、「再稼動反対の強い政治的意志表示」を行わなくてはならないだろう。いま、行動しなくていつ行動するのだ?以下が当日資料である。御用とお急ぎの方向けに、議事録と速記録の重要個所に黄地のマットをつけておいた。

平成25年度第第43 回原子力規制委員会(2014年2 月19 日)
  同 『議事次第』
  同 『原発の新基準適合性審査の今後の進め方について』
  同 『平成25年度第43回原子力規制委員会 議事録』
  同 『定例会合後の委員長定例記者会見 速記録』(2014年2月19日)