<参考資料>トリチウム (2013.5.5)
   

トリチウム危険報告:カナダの核施設からの環境汚染と放射線リスク 2007年6月
“Tritium Hazard Report: Pollution and Radiation Risk from Canadian Nuclear Facilities”


カナダ・グリーンピース
『トリチウム危険報告:カナダの核施設からの環境汚染と放射線リスク』2007年6月
“Tritium Hazard Report: Pollution and Radiation Risk from Canadian Nuclear Facilities ”

(上記タイトルを検索語にするとカナダ・オンタリオ州政府『飲料水諮問委員会』“the Ontario Drinking Water Advisory Council”−ODWACのサイトから英語原文をPDFでダウンロードできる)
http://www.odwac.gov.on.ca/

イアン・フェアリー
Ian Fairlie
<ガーディアン紙
より転載>
   “トリチウムの危険”に関する第一級資料の一つであることは間違いないだろう。2007年6月カナダ・グリーンピースの名前でイアン・フェアリー(Ian Fairlie)が調査執筆した。フェアリーはイギリスの科学者でイギリスの新聞“ガーディアン紙”によると、「イアン・フェアリー博士は放射線リスクに関する独立コンサルタントで、イギリス政府の「内部放射の放射線リスク検証委員会」(Committee Examining Radiation Risks from Internal Emitters)の前科学幹事」で放射線リスクに関する著書や研究が多数あるという。ガーディアン紙には2010年1月20日付け紙面で『核エネルギーのリスクは誇張ではない』(“The risks of nuclear energy are not exaggerated”)という記事を寄稿している。

 フェアリーは緒言で次のように述べている。

 カナダで発表されるトリチウムに関するこの報告は2つの部分からできている。第1部はカナダの核施設から放出されるトリチウムに関する議論そしてそれらカナダのトリチウムと他の諸国のそれとの比較である。

 カナダの核施設付近での飲料水、空気そして食品に集中するトリチウムの結果することを検証する。カナダの核施設が放出するトリチウムは極めて大きいのだが、放射線防護規制はこれら放出にほとんど懸念を示していない。それはトリチウムの放射線被曝とその結果としての危険は小さいからだ。

 第2部ではこれら論点をかなりの細部にわたって検証する。トリチウムのいわゆる放射線“被曝”は、疑わしくも、ほとんどの他の放射性元素よりも数百倍も低く見積もられていることを示している。放射線や放射能(リスク、被曝、生物学、疫学などを含んで)は複雑な事柄で、しばしば把握に困難である。従って第2部は健康を預かる医師たちそして放射線防護に携わる科学者たちによって読まれるように企図した。しかしながら私はより幅広い公衆一般に受け入れられるようにとこの報告を作成してもきた。特に技術用語は説明するようにしたし、いわゆる科学者隠語(scientific jargon)は避けてきた。

 この報告は、トリチウムに関する規制当局の姿勢は科学的でなくまた正しくない、トリチウムのその危険な性質は、カナダの放射線防護当局に十全に理解されなくてはならず、トリチウム被曝の損傷係数(dose coefficient)は相当程度に引き上げられるべきである、と結論している。」

 次に緒言でフェアリーが述べているこの報告の概観をもう少し詳細に理解するため目次構成をざっと眺めておこう。




第1部 『カナダにおけるトリチウムの放出』
   第1章 はじめに(INTRODUCTION)
トリチウムとは何か?(What is tritium?)
有機結合型トリチウム(Organically bound tritium <OBT>)
第2章 カナダにおけるトリチウムの放出( TRITIUM RELEASES IN CANADA)
トリチウム放出比較(Tritium Releases Compared)
なぜ重水炉は大量のトリチウムを放出するのか?
 (Why do heavy water reactors discharge large amounts of tritium?)
トリチウム化した水蒸気の大気への排出(Tritiated Water Vapour Emissions to Air)
トリチウム−液体の形での放出(Tritium - Liquid Water Discharges)
カナダCandu型原子炉循環系におけるトリチウム貯蔵の歴史
 (History of Tritium Inventories of Candu Reactor Circuits )
高いトリチウム集積に伴う諸問題(Problems with High Tritium Concentrations)
トリチウムの放出は削減できるのか?(Can Tritium Releases be Reduced?)
第3章 トリチウム放出上限( TRITIUM DISCHARGE LIMITS)
第4章 飲料水のトリチウム上限(TRITIUM LIMIT IN DRINKING WATER)
たった1年の被曝推定(Only one year’s exposure assumed)
オンタリオ州政府のACES報告(1994年):ある気の毒なエピソード
 (Ontario Government’s ACES Report <1994>: A Sorry Episode)
第5章 五大湖へのトリチウム集中(TRITIUM CONCENTRATIONS IN THE GREAT LAKES)
五大湖へのトリチウム流出の歴史(History of Tritium Leaks into the Great Lakes)
第6章 核施設近傍の大気中へのトリチウム集中
  (TRITIUM-IN-AIR CONCENTRATIONS NEAR NUCLEAR STATIONS)
トリチウム化した水蒸気の空気中における実際のバックグラウンド・レベル
 (The real background level of airborne tritiated water vapour)
歴史的傾向(Historical trends)
(*第7章は存在しない)
第8章人々はどのくらいトリチウムを取り込んでいるか?
 (HOW MUCH TRITIUM DO PEOPLE TAKE IN?)
これらレベルは危険なのか?(Are these levels hazardous?)
第9章 高いトリチウム・レベルは健康に危険なのか?
 (ARE HIGH TRITIUM LEVELS HAZARDOUS TO HEALTH? )
最近の諸報告(Recent Reports)
トリチウム被曝線量増加要因で違いはあるだろか?
 (Would increasing tritium’s dose factors make a difference?)
職業被曝線量(Occupational doses )
疫学(Epidemiology)
第10章 結論と勧告( CONCLUSION and RECOMMENDATIONS)

【第1部 参照資料】(EFERENCES in Part 1 )
  付属資料1 炭素14(Annex 1. Carbon-14)
付属資料2 ダーリントンとピカリング方向への風の頻度
 (Annex 2. Wind Frequencies for Darlington and Pickering)
付属資料3 SRBテクノロジーズ社(オンタリオ州ペンブローク)からのトリチウム放出
 (Annex 3. Tritium Releases from SRB Technologies, Pembroke Ontario)

第2部 『トリチウム放射線の危険』(PART 2: The Radiation Hazards Of Tritium)
第11章 はじめに (INTRODUCTION)
第12章 トリチウムの線量係数( TRITIUM’S DOSE COEFFICIENTS)
第13章 有機結合型トリチウム( ORGANICALLY BOUND TRITIUM <OBT>)
交換型と非交換型トリチウム(Exchangeable and non-exchangeable tritium)
トリチウム水の生動力学モデル(Biokinetic Models for HTO)
有機結合型トリチウムの生動力学モデル(Biokinetic Models for OBT)
第14章 国際的なトリチウムの線量推計( INTERNAL DOSIMETRY OF TRITIUM)
トリチウムの生物学的効果比の値(RBE values for tritium)
トリチウムの放射線荷重係数の値(wR value of tritium)
電離密度<線エネルギー付与>効果(Ionisation-density<LET> effects)
トリチウムのDNAにおける蓄積(Tritium’s incorporation in DNA)
 (1) トリチウム水からの被曝線量(i Doses from HTO)
 (2) 有機結合型トリチウムからの被曝線量 (ii Doses from OBT)
第15章 結論(CONCLUSIONS)
(a) トリチウムの有害性情報( Tritium’s hazardous properties)
(b) 被曝線量係数( Dose coefficients)
(c) トリチウム被曝で考えられるリスク(Possible risks from tritium exposures)

付属資料T:トリチウムに関して以前に表明されていた懸念
 (Previously expressed concerns about tritium)
付属資料U:慢性的トリチウム水被爆後のトリチウム水/有機結合型トリチウムレベルの平衡
 (Equilibria in OBT/HTO Levels after chronic HTO exposures)
付属資料V:DNAの水和殻における同位元素効果( Isotope effects In DNA’s hydration shell)
付属資料W:トリチウムの放射線荷重係数値をめぐる論争
 (Controversy over tritium’s wR value)

付属資料X:変性効果(Transmutation effects)
付属資料Y:トリチウムの放射線荷重係数「1」保持をめぐるICRP92年勧告の議論
 (ICRP 92 arguments for retaining a wR of 1 for tritium)
付属資料Z:疫学的証拠(Epidemiological evidence)

【第2部 参照資料】(References in Part 2)
  付属資料 A. 頭文字語と略語( Acronyms and Abbreviations)
付属資料B. 放射線と放射能の計量単位
付属資料C. 放射線と放射能のアメリカ単位と欧州単位の変換
 (Conversions between European and US units of Radiation and Radioactivity)
付属資料D. 用語説明( Glossary)
付属資料E. 参照推奨文献( Recommended Reading) 





 以上が目次構成である。一覧しておわかりのように、またフェアリーが緒言で述べているように、専門家も説得すると同時に、私のような全くのシロウトでも、食らいついて理解しようとする人間には極めて懇切丁寧な道しるべとして構成されている。
 
【参照資料】The Guardian:profile of“ Dr. Ian Fairlie”
http://www.guardian.co.uk/profile/ian-fairlie