【参考資料】原発  2013.2.11

<参考資料> デューク社クリスタル・リバー原発をギブアップ
廃炉は“セーフスター法”で・・・


アメリカ最大の電力会社とその原発施設

 アメリカ最大の電力会社デューク・エネルギー社(Duke Energy Corporation)のフロリダ州クリスタル・リバー原子炉(the Crystal River nuclear reactor)の廃炉が決定した。すでにさまざまな記事がでているが、世界最大の核産業業界団体『世界核協会』(World Nuclear Association=NWA)が発行する無料のニュースサイトWNNが「デューク社クリスタル・リバー原発をギブアップ」(“Duke gives up on Crystal River”)という記事を2月5日付けで掲載しているのでそれを下敷きにこのニュースを見ていこう。
(NWAの日本語訳は「世界原子力協会」が一般的である。私もこれまでそう表記してきた。しかし英語名称からして「原子力協会」というのは“原子力発電”という以上の異物感がある。従ってこの記事では『世界核協会』と表記する)


 その前にデューク・エネルギー社の会社概要について見ておこう。参照するのは英語Wikipedia“Duke Energy”。同社はノース・カロライナ州に本社を置くエネルギー会社で、5820万kWの発電能力をもつアメリカ最大の電力会社。710万顧客に電力を供給する。直近の売り上げは145億ドル(2011会計年度。1ドル=90円として1兆3050億円)。ラテン・アメリカ諸国にも展開し430万kWの発電能力を持っている。またブラジルでは9か所の水力発電設備をもっており能力は230万kW。アメリカ国内では、主力の市場の一つ中西部では石炭、天然ガスを発電の主力とするのに対して、本拠のノース・カロライナ州では電気の半分を原子力発電に依存している。風力発電については、50万kW分の電力をグリッドに供給しており、現在24万kW分の施設が建設中で150万kW分の新規建設を計画中。また原子力発電施設については下記に別個に見ておこう。

<カタウバ原発 Catawba Nuclear Station>
 サウス・カロライナ州のヨークにほど近いワイリー湖畔(Lake Wylie)に建設された原発。1号機の許可は1985年7月29日(許可期限2043年12月)、2号機の許可は1986年8月(同2043年12月)とアメリカでは比較的新しい原発である。いずれも加圧水型軽水炉で原子炉はウエスティングハウスが製造・納入。能力はいずれも112.9万kW。建設コストは合わせて65億9400万ドル。1号機・2号機とも操業は子会社のデューク電力だが、原発の所有者は1号機も2号機も地元の公共事業体。(デュークは1号機に38%だけ出資している) 

<マクガイア原発 McGuire Nuclear Station>
   ノース・カロライナ州シャーロット(州内最大人口都市)に近い州最大の湖「ノーマン湖」(Lake Norman)畔に建設。1号機の許可は1981年12月(期限2041年6月)、2号機の許可は1984年3月(同2043年3月)とこちらも比較的新しい。いずれも加圧水型軽水炉で原子炉はウエスティングハウスが製造・納入。能力はいずれも110万kW。建設コストはわからない。操業も所有もデューク社。近年周辺の人口が増加しており、原発から半径16Km内の人口(約20万人:2010年。2000年比66.8%増)、半径80km内の人口(約285万人。同23.3%増)が懸念事項としてあげられている。

<オコニー原発 Oconee Nuclear Station>
   サウス・カロライナ州セネカにほど近いキオーウィー湖(Lake Keowee)畔に建設。1号機(許可1973年7月:期限2033年2月)、2号機(許可1974年9月:期限2033年10月)、3号機(許可1974年12月:期限2034年7月)と3基ある。加圧水型原子炉で製造・納入はバブコックス・アンド・ウィルコックス(Babcock and Wilcox=日本では日立製作所と提携して格納容器を作っている)。発電能力は1基あたり84.6万kWで3基合計253.8万kW。製造コストは1基あたり5億ドル程度と見られている。操業・所有ともデューク社。洪水による事故が懸念されている。

<シェアロン・ハリス原発 Shearon Harris Nuclear Power Plant>
   ノース・カロライナ州ニュー・ヒル(New Hill)のハリス湖(Harris Lake)畔に建設。加圧水型原子1基(許可:1987年5月期限:2046年10月)で発電能力は90万kW。原子炉の製造・納入はウエスティングハウス社。建設コストは39億ドル。ここも近年周辺の人口増加問題がある。半径80kmの周辺人口は2010年現在で約256万人だがこれは過去10年間で26%の伸びとなっている。運営は同社の子会社が担当している。
 建設当初シェアロン・ハリス原発は4基の原子炉を建設する計画だった。しかしコスト増大(安全コスト)問題と電力需要の減少で3基の原子炉建設はいったんキャンセルとなった。なにしろ1号機建設だけで最終的に39億ドルもかかったのである。(その点日本の原発建設はコスト圧力が小さい。いくらかかろうが最終的には総括原価方式で電気料金にかぶせられるのだから。相当悪知恵のあるヤツがいて、あまり賢いとはいえない消費者=国民、あっ、ボクもその一人か、がいないとこんなオイシイ制度は成立・維持しえないだろう)
 2000年代に入って、「核ルネッサンス」の流れにのって原子炉新設計画が復活した。2008年2月アメリカ原子力規制委員会(NRC)は、同原発に2基の原子炉の建設・運営許可を与えた。(複合建設運営許可=Combined Construction and Operating License=COL)原子炉はいずれもウエスティングハウス社(この時同社はすでに東芝の子会社)の改良加圧水型AP1000(いずれも発電能力110万kW)である。AP1000にはその後問題が指摘されたため今のところ設計承認に3年間かかる見通し。順調に行っても2018年以前には操業に入ることはできない。私自身はこの2号機・3号機プロジェクトは結局見送られると考えている。この記事のテーマ全体にもかかわることだが、一つには原発は安全コストに金がかかりすぎるようになっていること。二つには水源であるハリス湖の水位が下がり続けていることがあげられる。
 地元に強力な反原発NPO法人(N.C. Waste Awareness and Reduction Network" NC-WARN“)ががんばっていることも大きな要因だ。「NC−WARN」の闘いぶりは科学的・実証的であり地元選出の連邦議会議員まで動かすだけの力をつけている。ある意味反原発圧力団体に成長している。こうした圧力に対抗しようとすればするほど原発建設に必要な「安全コスト」が鰻登りにあがり、新規原発建設のハードルを高くしているのが現状だ。

<H・B ロビンソン原発 H. B. Robinson Nuclear Generating Station> 
   サウス・カロライナ州ハーツビル(Hartsville)近くに位置する原発。発電能力73.5万kWの加圧水型原子炉1基。17.4万kW出力の石炭発電タービンが同じサイトに併設されている。設置許可は1971年3月で期限は2030年7月まで。(誰が考えても近々廃炉だろうなぁ。これからは金食い虫になる。)操業担当は同社現地100%子会社。アメリカ南東部最初の商業操業開始の原発である。当時は世界最大の原発だった。

<ブランズウィック原発 Brunswick Nuclear Generating Station>
   ノース・カロライナ州サウスポート(Southport)の湿地森林地域に立地しており大西洋に面している。1975年に操業許可を取り同年操業開始になっている。2基のGE製沸騰水型原子炉(発電能力99万kW×2)があり、冷却水は近くを流れるケープ・フィア川(Cape Fear River)から採取して大西洋に流している。操業は同社の子会社だが、所有は地元の公共事業体が18.3%ほど出資している。


新規原発建設計画があるが・・・

 最後がこの記事のテーマであるクリスタル・リバー原発だが、現在デューク・エナジーは新たな原発建設計画を進めているのでそれを先に見ておこう。

<ウィリアム・ステート・リー三世原発 William States Lee III Nuclear Generating Station>
   デューク・エナジーの原発名のネーミングは明らかに人名が多いが、これはほとんどが歴史の長い同社(1904年創立)で数多く輩出した経営トップ陣から選んでつけた名前である。ウィリアム・ステート・リー三世は1982年から1994年同社のCEOだった。原発はサウス・カロライナ州ガフニー(Gaffney)近くのチェロキー郡(Cherokee County)に位置している。実はこのサイトは1980年代、同社が建設を計画して結局放棄したチェロキー原発のすぐ近くにある。(チェロキー原発放棄跡はジェームス・キャメロン監督の映画「アビス」《The Abyss》のロケ現場で使われている。「アビス」は私の大好きな映画の一つだ。余計なことだった・・・。)2007年12月デューク・エナジーはNRCに建設操業複合許可申請を行った。2012年一杯には許可が下りるものとデュークは期待している。申請は2基のAP1000(ウエスティングハウス社)でいずれも111.7万kW。順調に行けば1号機は2016年から2018年の間に操業に入るものと考えられている。しかし私は必ずしもその通りに行くかどうか疑問を持っている。大きな要因は建設コストだ。申請時点でデュークは1基当たりの建設コストを11億ドルと見積もっていた。ところがその後AP1000は、2008年、2010年、2011年とAP1000の改良版設計図をNRCに提出し、2012年12月にNRCは最終設計承認を出している。デュークはさらに大幅なコストアップを余儀なくされる。経済合理性からしてデュークがこの計画を進めるかどうかはわからなくなっている。

 さてこのテーマであるクリスタル・リバー原発の概要を見ておこう。

<クリスタル・リバー原発 Crystal River 3 Nuclear Power Plant>
   フロリダ州クリスタル・リバー(Crystal River)に位置している。クリスタル・リバー・エネルギー複合施設の中にある原発で、英語正式名称の“3”は複合施設3番目の発電所という意味だ。(残り4施設はすべて石炭火力発電所)加圧水型原子炉1基(発電能力86万kW)で許可は1977年3月、期限は2016年12月まである。納入業者はバブコックス・アンド・ウィルコックスで建設コストは5億ドルだった。2009年9月に20%の新燃料補充をすることになったが、この時以来電気の供給を止めている。この原発はもともとフロリダ・プログレス社(フロリダ電力の子会社)が所有していたが、2000年にカロライナ電力電灯会社(Carolina Power & Light)が買収、プログレス・エナジー社の中に組み込まれた。2012年7月デューク・エネギーはプログレス・エネジー社そのものを買収したので、クリスタル・リバー原発もデューク・エナジー直接の所有・運営となった。


なぜ傷物原発を買収した?

 以上のことを予備知識としてWNNの記事を読んでいこう。まずWNNの記事のタイトルが興味を引く。『デューク、クリスタル・リバーをギブアップ』(“Duke gives up on Crystal River”)である。通常“閉鎖”とか“廃炉”である。実際デューク社のプレス・リリースは“引退”(“retired”)である。世界核協会の「デュークのヤツ、あきらめやがった」というニュアンスを感じるのは私だけではあるまい。

  デューク・エネジー社は、クリスタル・リバー原子炉の修理をしないことに決めた。すでにここ2年間電力網に電力を供給していない。問題は新燃料入れ替え作業中に発見されたコンクリート格納容器にあった。廃炉は直ちに行われる。クリスタル・リバー原発は2009年以来、“お宝”が逆に頭痛のタネに逆転して苦しんでいた。2009年に20%新燃料入れ替えを行い、同時に2036年までの操業許可延長申請を行おうとしていた。

 問題は原子炉にあった。2009年の暮れ蒸気発生器の入れ替えと移動を行おうと大きな穴をコンクリート格納容器にあけた時コンクリートが薄片状となっていることが発見された。これはコンクリート格納容器に構造上の亀裂が生ずることにつながる。

 原子炉格納容器は、外部からの衝撃や深刻な事故時放射線核種が拡散することを防ぐという点で原子炉システムの中では重要な安全上の役割を果たしている。」

 格納容器に亀裂が走るような可能性のある劣化はいうまでもなく、原子炉にとって致命的エラーである。

  数多くの修理方法が模索されたが、中には実際の話、問題自体を原子炉格納容器以外の領域に拡散しかねないものもあった。数ヶ月間の研究の結果、デューク社本日(2013年2月5日)この原発を引退させると発表した。修理するという選択は技術的には実現可能である。しかし最低でも15億ドル(1ドル=90円として1350億円)もかかり、費用面からもまた予定工期がその通り進行するかと言う点においても深刻なリスクを伴っている。デューク・エナジーの会長兼社長でCEOのジム・ロジャーズ(Jim Rogers)は、“クリスタル・リバー原発を引退させるという決断が、私たちの顧客、投資家、フロリダ州、そして当社の利益を全体的に見てベストの決断だと信じる”と語っている。クリスタル・リバー原発は2012年にプログレス・エナジーを吸収合併して以来、デューク・エナジー傘下に入っていた。

 デューク社によれば核電気保険会社(Nuclear Electric Insurance Limited =NEIL)から払い戻し保険金(reimbursement)としてすでに3億500万ドル(274億5000万円)を受け取っており、追加的にあと5億3000万ドル(477億円)を受け取ることになるだろう、という。金額はいくつかの仲介を経てすでに合意に達しており、そのお金は間接的に顧客に還元される。ともいう。」

 『核電気保険会社』とは一体何だろう?英語ウィキペディア“Nuclear Electric Insurance Limited”によれば、

 核電気保険会社(NEIL)はアメリカのすべての原発と国外一部の原発が加入している相互保険会社。デラウエア州ウィルミントンに本拠をおいて、バミューダ諸島に法人登録をしている。」

 
デラウエア州は法人登記や規制にもっとも寛容な州だ。ダミーやトンネル会社を作る時はデラウエア州、と相場が決まっている。またバミューダ諸島はいまだにイギリス領であり“法人天国”である。またそれ以上に札付きの“タックス・ヘイブン”でもある。デラウエア、バミューダとくれば必ず「後ろ黒い」法人である。英語ウィキペディアの記述を続ける。

 NEILは1980年の創立。これは1979年のスリーマイル・アイランド原発事故を受けてのこと。1997年やはりバミューダに本拠を置く核相互会社を吸収合併している。2012年12月タンパ・ベイ・タイムズ(the Tampa Bay Times。フロリダ州セントピータースバーグに本拠を置くフロリダ州で最も売れている新聞。歴史は長いがイキもいい。過去に8度ピューリッツァー賞を受賞し、2009年には新聞社として史上初めて2部門受賞した。日本ではついぞお目にかからないタイプの新聞)は、プログレス・エネジー社が抱えている現在進行中の、クリスタル・リバー原発の問題はNEILに50億ドル(4500億円)の支出を伴う史上最大の保険金支払い請求となるかも知れない、と報じた。現在NEILは保険金請求に対して36億ドルの基金しかもっていない。この保険金請求に対しては加盟各社の追加拠出が必要にあるかも知れない、この場合は電力顧客にそのつけが回ってくることになるだろう、と報じた」

 これでやっと謎が解けた。問題を抱えたクリスタル・リバー原発をなぜデューク・エナジーともあろうものがそれを承知で買ったのか。誰しも感じる疑問である。デューク・エナジーはまがい物をつかまされたのか?そんな筈はない。デュークは最初からNEILからの払い戻し保険金狙いでクリスタル・リバー原発を買ったのだ。


廃止・廃炉の3種類

 再びWNNの記事に戻る。

現在クリスタル・リバー原子炉施設では600人の労働者が働いている。デュークによれば、これら労働者の“多く”は閉鎖作業そして次には初期廃炉作業で働くことになる、という。また労働者はできるだけ多くデューク・エナジーの組織に吸収したいといっている。現在4つの石炭火力発電所が稼働しているが、そのうち2施設は2018年までに閉鎖が決まっている。存続する火力発電所2施設は排出ガス規制(特にCO2)に対応する改良のため10億ドルの投資が必要となる。クリスタル・リバー原発はガス発電に転換するかも知れないが、それは一つの選択肢として評価中だという。

クリスタル・リバー原発の廃炉計画は現在策定中だが、デュークによれば「セーフスター法」
('Safestor' approach)を取ることになるだろう、という。これは、限られた人員で廃炉作業を行いその廃炉の工程に40年から60年くらいの時間をかける方法だ。また時間をかければ核崩壊が進んで放射能レベルも下落する。こうすると構造物の取り壊しやサイトの放射能除去作業の際もはるかに早く簡単に作業が進むのである。」

 これでWNNの記事は終わりである。ところでここでいう「セーフスター」(Safestor)とはいったいなんだろうか?

 『世界核協会』のサイトで『核施設の廃止(Decommissioning Nuclear Facilities)』と題するページは次のようにいう。

 「  2013年1月現在で、約100のウラン採掘鉱山、90個所の商業用原子炉、45個所の実験原子炉またはプロトタイプ原子炉、250以上の研究炉また多くの核燃料サイクル施設がその操業を停止しつつある。またこれらのうちには完全に破壊処理中のものもある。

 しかしこれら核施設の多くの部分は放射性ではない。あるいは汚染があるにしても極めて低いレベルである。金属部分の多くはリサイクルしうる。こうした核施設の破却作業の安全性についてはその技術や必要な器機がすでに利用可能である。また世界のいくつかの場所ではこうした安全な破却作業の実例を見ることができる。

 原発など核施設廃止作業に伴うコストは、関連廃棄物の廃棄費用を含めて、現在低減しつつありトータルな電力生産コストから見れば実に小さな部分しか占めなくなりつつある」

 なにやら怪しげな記事だが、要するにここで云っていることは、1960年代から本格的に開始された核の産業利用は、21世紀に入って本格的な『廃止措置』のラッシュ時期を迎えている。その場合の大きな問題は廃止に伴う費用(特に廃炉費用)である。これを低減するには、廃棄する部分をできるだけ最小化すべきである。極低レベルの汚染廃棄物はリサイクルできる。特に金属材料は多くはリサイクルできる。余り大きなコストをかけるべきでない、ということになる。

 国際原子力機関(IAEA)は、核施設廃止に関して3種類の方法を提示しているという。この記事を引用する。

 「  IAEAはこの廃止措置に関するこれら3つの選択肢を次のように定義している。なおこの定義は国際的に採用されている。

即時破却(Immediate Dismantling)(または早期サイト開放《Early Site Release》。アメリカにおいては“Decon”とも呼ばれる):規制される活動(核を使った生産、加工、採掘などの工業生産活動であって規制の対象となる活動のこと)の停止あるいは閉鎖から比較的早期に規制から脱することを可能にする選択肢。
(なにやら持って回った有り難そうなご託宣だが、簡単にいえばできるだけ早く取り壊して規制当局の規制対象から脱する方法。簡単なことを難しそうに有り難そうに言い回すのはIAEAやICRP独特のレトリックなのでしばらくおつきあい願いたい)規制当局の規制対象から脱すればサイトは再利用できる。
安全囲い込み(Safe Enclosure)(またはセーフスター《Safestor》):この選択肢は長期間の規制当局規制監督下で最終処理を延長する方法。通常は40年から60年のオーダーで処理に当たる。実際の破却や廃止措置まで施設は安全管理の状態におく。
埋葬(Entombmentまたは'Entomb'):この選択肢は必然的に施設に放射性物質が残る状態になる。完全に放射性物質を除去せずに残すことになる。この選択肢は通常、放射性物質が存在する区域のサイズを減少させる取り組みを伴い、施設をコンクリートなど長寿命の施設に変えてしまいそして残留している放射能がこれ以上懸念の必要がなくなるまで長期間継続することになる。」

 上記のうち『埋葬』は選択肢の一つと記述されているが、これは選択肢ではない。ほかに方法がないのだ。事故を起こしたチェルノブイリ原発4号機や東電福島原発1号機から4号機を考えてみればわかる。『埋葬』以外にどんな手段があるというのか?

 世界の核推進勢力は、これまで野放図に増やし続けてきた核施設が廃止時期に入るに伴いそのツケを支払わなくてはならない時期に突入したようだ。私たちが警戒しなくてはならないのは、彼らがそのツケをできるだけ軽くしようとしていることだろう。そのためには廃棄し永久処分する放射性廃棄物の量をできるだけ小さくすることになる。危険な放射性廃棄物が『低レベル』と称してリサイクルされたり、通常のゴミと同じ扱いをしようとしたりすることだろう。いや現実に福島原発事故で生じた廃棄物(震災廃棄物またはがれきと称される)は、本来低レベル放射性廃棄物として処理しなければならないのに、通常のゴミとして全国に拡散されようとしている。これは私たちを、「低レベル放射性廃棄物」を「通常のゴミ」として慣れさせるためだ。またこれを正当化する理屈としては「100ミリシーベルト以下の放射能は人体に害がない」とする放射能安全神話であることは確実だ。


【参照資料】
WNN:“Duke gives up on Crystal River”(2013年2月5日)
http://www.world-nuclear-news.org/C_Duke_gives_up_on_Crystal_River_0502131.html
英語Wikipedia“Duke Energy”
http://en.wikipedia.org/wiki/Duke_Energy
ノース・カロライナ州の環境保護・反原発団体、“NC-WARN”のサイト
http://www.ncwarn.org/
日本語ウィキペディア「AP1000」(優れた記述で是非参照して欲しい)
http://ja.wikipedia.org/wiki/AP1000
デューク・エネジー社 プレス・リリース
http://www.duke-energy.com/news/releases/2013020501.asp
英語Wikipedia“Nuclear Electric Insurance Limited”
http://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_Electric_Insurance_Limited
世界核協会のサイト 『核施設の廃止』
http://www.world-nuclear.org/info/inf19.html