【参考資料】ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ
 (2011.5.20)

<参考資料>福島原発事故:
河野太郎 決算行政監視委員会 5月23日 質問通告
 

 私はここ2年間、衆議院議員・河野太郎の「ごまめの歯ぎしり 」というメールマガジンを購読している。(もちろん無料で)ところがアメリカのリベタリンアン下院議員、ロン・ポールのメールマガジンと違って内容が薄いのでこれまで引用・紹介する機会がなかった。

 しかし今回は若干趣をことにするようだ。今回は河野太郎が衆議院・決算行政監視委員会でこの5月23日行う質問の事前通告がその内容になっている。私たちが日本の原子力エネルギー政策・電力行政を中身に立ち入って考える参考になる。

 「問題を正しく立てた時、すでに9割の回答は得ている」というが、この質問通告はまさにそれに近い内容になっている。なお、決算行監視委員会というのは「決算行政監視委員会(けっさんぎょうせいかんしいいんかい)は、日本の衆議院に設置されている常任委員会」で
「第一分科会 (皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府、警察庁、金融庁)、外務省及び環境省所管並びに他の分科会所管以外の国の会計)
第二分科会 (総務省、財務省、文部科学省及び防衛省所管)
第三分科会 (厚生労働省、農林水産省及び経済産業省所管)
第四分科会 (法務省及び国土交通省所管)」
 の4つの分科会がある、という事のようだ。(以上日本語Wiki「決算行政監視委員会」)

 以下メールマガジン本文。

 
決算行政監視委員会 5月23日 質問通告

 原子力安全基盤機構は今回の事故以来、何をしているのか。なぜ、メルトダウンが起きていたことを原子力安全基盤機構は認識できなかったのか。

(原子力安全基盤機構-JNES-については次。<http://www.jnes.go.jp/> なお同サイトの“宣伝惹句”によれば『JNESは原子力の安全確保に取り組む専門家集団です』だそうだ。)
  
 原子力安全基盤機構の福島のオフサイトセンターは建設費、運営費がそれぞれいくらかかっているのか。事故後、オフサイトセンターはどのように使われているのか。

 東電管内の託送は今、どうなっているか。

 いつから託送が止まったのか。

 託送可能な電力量は、東電管内でどのぐらいあるのか。

 中電管内の託送可能な電力量はどれぐらいあるのか。

  (「託送」はどうも電力業界用語・政治業界用語らしい。「知恵蔵」によれば、『電力会社が所有する送配電網を、発電事業者や他の電力小売り事業者が利用すること。2000年3月から始まった電力市場の部分自由化では、欧米では一般的な発送電分離(電力会社からの送配電機能の分離)や電力プール(自由化市場での電力取引所)の形成は行われず、送配電網も需給調整も電力会社に残されたため、託送が制度化された。電力会社と新規参入者の対等かつ公正な競争を確保するため、電力会社に(1)新規参入者情報の厳正管理、(2)公平・公正な送配電網の運用を求め、新規参入者には(1)必要な情報を電力会社に提示、(2)発電と需要との同時同量の確保(30分単位)、(3)電力会社からの給電指令の遵守、を求めている。しかし、新規参入者が送電や需給調整サービス(バックアップや補完電力の供給、余剰電力の購入)を、競争者でもある電力会社に依存する点が、託送による自由化の課題。』<http://kotobank.jp/word/%E8%A8%97%E9%80%81
  
  東電管内ではどうも今、「託送」を止めているらしい。河野は、電力供給が落ち込んでおり原子力発電がどうしても必要だ、というポーズ作りのために東電が託送をやめているのではないか、と疑っている。)


  放射線、核、原子力などに関する独立行政法人、公益法人の一覧表、国庫からの支出、天下り、免許・資格の一覧表を委員会に提出せよ。

  計画停電にあたり、どの地域を何時間停電させたのか、それによりどの程度電力供給が減ったのか、その当時の発電量はどうだったのか、詳細を提示せよ。
  
  (「計画停電」は、原子力発電−特に東京電力柏崎発電所の3つの原子炉再開が必要だ、と世論誘導するために、東電と経産省が打った大芝居だと私は疑っている。2011年3月当時、マスコミ、特に鳥越俊太郎あたりを使ってテレビで盛んにアピールしていた。河野も同じ疑いを持っているのか?)

  需給調整契約の発動状況を開示せよ。

  国および独立行政法人、国立大学法人が結んでいる需給調整契約の内容を、価格を含め、公開せよ。

 (受給調整契約は「デジタル大辞典」によれば『電力の大口消費者(大規模製造業者など)に、電力需給が逼迫した際の消費を抑えるよう求める契約。契約者は、操業の一時停止などをする見返りとして、平常時の電気料金の割引きなどを受ける。』という事らしい。河野は、4月10日の自身のサイトで、「こうした契約があるにもかかわらず、全ての消費者に一律の無計画停電を強いたり、法令で全ての消費者に電力の使用抑制を強制しようというやり方は明らかにおかしい。」< http://www.taro.org/2011/04/post-975.php>と書いているので、需給調整契約は実際には大して発動されていないのではないか、と明らかに疑っている。)

 総括原価方式ならば、原価を全て公開せよ。

 なぜ広告宣伝費が電力料金決定の原価に含まれるのか。

 原価に含まれる人件費は、誰がどうやってチェックするのか。

 なぜ今、東電が広告宣伝を出すことを禁止しないのか。

  (「総括源価方式」は、消費者庁の「電気料金の決まり方」によれば「・・・家庭向けなどを含む、自由化の対象でない需要家への供給については、電力10社の地域独占が認められているため、独占的な地位を利用した高い料金が設定されるのを避けるとともに、需要者相互の公平な取扱いを損ねないよう、電気料金の設定・改定(引下げによる場合その他電気の使用者の利害を阻害するおそれがないと見込まれる場合を除く。)には経済産業大臣の認可が必要とされています。

 この料金については、料金が能率的な経営のもとにおける適正な原価に適正な利潤を加えたものであること、特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないことなどの条件の下で、将来の電気の供給を行うために生じる原価と利潤の予測値である総括原価に基づいて料金を設定するいわゆる総括原価方式が採られています。

 さらに、電力10社間の効率化の度合いを共通のものさしで相対的に評価し査定に格差をつけ、効率化の努力を促すヤードスティック査定も行われます。」(< http://www.caa.go.jp/seikatsu/koukyou/elect/el03.html>)と書いている。

 この説明で理解できない頭の悪い人−正直言うと私もよくわからない−は、「3tarou's posterous」氏の、次のさらにわかりやすい説明を読むとよろしかろう。

 そもそも、電気の値段はどのようにして決められるのでしょうか。我が国では電力のコストは電気事業法という法律に基づき、「総括原価方式」という方法で計算されています。

 この方式は、発電・送電・電力販売にかかわるすべての費用を「総括原価」としてコストに反映させ、さらにその上に一定の報酬率を上乗せした金額<現行4.4%>が、電気の販売収入に等しくなるように電気料金を決めるやりかたです。

 つまり、電力会社を経営するすべての費用をコストに転嫁することができる上に、一定の利益率まで保証されているという、決して赤字にならないシステムです。これを電気事業法が保証しています。普通の民間企業ならば、利益を生み出すために必死でコストを削減する努力をするはずですが、電力会社はどんなにコストがかかろうと、法律によってあらかじめ利益まで保証されているのです。』
(<http://3tarou.posterous.com/from-your-ubernote-account>) 

 マスコミに対して電力会社が広告宣伝費で口封じをしてきた事実を政府はなぜ容認してきたのか。

河野はかなり断定的なことを言っている。上記を確定するには、電力会社の暦年広告宣伝費、協賛費、マスコミ開催イベントなどへの補助費などの一覧表が必要であるばかりでなく、関係者の証言なども必要だろう。)

 3月11日以来、東電が金融機関に融資の返済をしているかどうかを政府は確認しているか。また、いくらの返済が行われたか。エネ庁長官の東電への天下り前の調査は、誰が行ったのか。

 もんじゅのナトリウム漏れ事故以来、もんじゅを維持するためにかかったコストは合計いくらになるか。

 炉内中継装置を落としてしまってから、引き上げるまでにコストがいくらかかるのか。

 引き上げは、可能なのか、誰が可能と判断したのか。

 実証炉はもんじゅとは基本設計が異なるのに、なぜ、もんじゅを維持するのか。

 高速増殖炉が商業的に実用化されるのか、現在の推定でいつになるか。

 商業的に実用化された高速増殖炉の発電コストはいくらになると推定されるか、あるいはいくらまで下がれば商業的に実用化されると見なすのか。

 高速増殖炉の中で、プルトニウムはどんな割合で増殖すると見込んでいるのか。

高速増殖炉「もんじゅ」は、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の熱出力71.4万kWのナトリウム冷却高速中性子型増殖炉。1995年12月8日 ナトリウム漏洩事故発生。「もんじゅ」は炉心冷却材に「水」ではなく「ナトリウム」を使っている。「2010年8月26日 原子炉容器内に筒型の炉内中継装置(重さ3.3トン)が落下。後日、吊り上げによる回収が不可能と判明。長期の運転休止を余儀なくされた。」と日本語Wiki「もんじゅ」は説明している。)

 六ヶ所村の再処理工場は、本来、いつから稼働するはずだったのか。何回、稼働を延期したのか。いつ、本格稼働できるのか。それは誰の判断か。稼働延期で、いくらコストがかかったのか。

 六カ所の再処理工場は、本格稼働すると、年間何トンのプルトニウムを生み出すのか。

 日本が保有するプルトニウムは何トンか。国内にあるプルトニウムは何トンか。海外分はどこに何トンあるか。

 いうまでもなく、日本原燃株式会社が所有する「六ヶ所再処理工場」のことである。「日本全国の原子力発電所で燃やされた使用済み核燃料を集め、その中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出す再処理工場である。最大処理能力はウラン800トン/年、使用済燃料貯蔵容量はウラン3,000トン。

 2010年の本格稼動を予定して、現在はアクティブ試験という試運転を行っている。試運転の終了は当初2009年2月を予定していた。しかし、相次ぐトラブルのため終了は2010年10月まで延期されることが発表されていたが、2010年9月になってから、さらに完成まで2年延期されることが発表された。完成までの延期はこれまでに18回にも及ぶ。これら延期のため、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる。」と日本語Wiki「六ヶ所再処理工場」は説明している。

 が、原子力資料情報室の原子力資料情報室 の伴英幸は2005年の4月の時点ですでに次のように述べている。

日本はすでに40 トンものプルトニウムを保有しています。六ヶ所再処理工場が総合機能試験に入ることになれば、さらにプルトニウムを増やす結果になります。再処理は高コストであることが策定会議のこれまでの検討で明らかになりました。六ヶ所再処理工場の稼動に対して、誰もが納得できる合理的な理由はないと考えます。・・・現実には多くの国から余剰プルトニウムの保有に懸念を持たれています。それでもなお六ヶ所再処理工場の運転開始を急いだり(実質的な操業開始であるアクティブ試験に入れば、これまでと違って、国内に余剰プルトニウムを抱えることとなる)もんじゅの運転再開を画策したり(再開されれば、ブランケット部には超核兵器級のプルトニウムが生まれる)といった姿勢は、そうした懸念をいっそう強めることになります。』
(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/siryo3.pdf>の原子力長計策定会議意見書<25>「国際的核不拡散の観点から考えても、六ヶ所再処理工場を廃止するべき」の項参照の事。) 

 3月11日の時点でプルサーマルが行われていた四つの原子炉でプルサーマルを実施すると、年間どれだけのプルトニウムを消費する計算になるのか。

 MOX燃料にはプルトニウムがどのぐらいの比率で混ぜられているのか。

 六ヶ所村が本格稼働したら、その量と同等のプルトニウムを消費するために、いくつの原子炉でプルサーマルを実施しなければならないか。

 1トンの使用済核燃料を再処理した時に出てくる高レベル放射性廃棄物とそのときに出てくるプルトニウムの重さを合計するとどのぐらいになるか。また、そのプルトニウムを高速増殖炉で燃やした後に出てくる使用済核燃料の重さはどのくらいか。

 現在、一年間に出てくる使用済核燃料はどのぐらいの量になるのか。原子炉一基あたり平均してどのぐらいか。また、その量を再処理すると、原子炉一基あたり、どのぐらいの高レベル放射性廃棄物とプルトニウムが出てくるのか。その高レベル放射性廃棄物の体積は、どのぐらいか。

 高速増殖炉が実用化されていないのに、六ヶ所村の再処理工場を本格稼働させる理由は何か。

 地層処分は、いつから始める予定なのか。そのためにはいつまでに候補地を決定するのか。

 地層処分のモニタリングを何年実施するのか。

 十万年後の人類にどうやってそこが危険な土地だと伝えるのか。

 モンゴルに核廃棄物を移送するという計画はいつから検討を開始したのか。なぜ、外国に核廃棄物を移送するような問題を、きちんと国民的な議論をして決めないのか。

 こんな計画は放棄すべきだと思うが、いかがか。

 ウランの可採年数は何年か。