<参考資料> オバマ 対テロ非核攻撃政策で火消し


 以下は2007年8月2付け、アメリカNBCの電子版に掲載された、「オバマ 対テロ非核攻撃政策で火消し」と題する記事<http://www.msnbc.msn.com/id/20093852/#storyContinued>である。この直前オバマは、「パキスタンのテロリストに核攻撃をする」といったと伝えられて、世界中が大騒ぎになったが、この発言を打ち消しに大わらわになっている時のオバマの発言である。このNBC電子版の記事はAP電を引用している。

 なお同サイトのこのページには「火消し発言」をするオバマの記者会見の模様をNBCビデオで見ることができる。そのビデオファイルの説明書きには、「オバマ 対テロ非核攻撃政策で火消し」という見出しの元に次のような説明記事を載せている。

 「 8月3日:ちょうど2日前、パキスタンのテロリスト拠点に核兵器攻撃をするかもしれないと発言し、大騒ぎになったあと火消しにまわり、大統領候補のバラック・オバマは、テロ拠点攻撃に核兵器は使用しないだろうと発言し、これはまたこれで熱をおびることになった。」

 2007年8月といえば、ヒラリー・クリントンと急浮上してきたバラック・オバマの間で民主党大領両候補が争われる様相がハッキリしてきた頃であり、当時の各種世論調査でも、この2人は他の民主党候補に大きく水をあけるようになっていた。それでも世論調査ではオバマはヒラリーに次いで第2位だったころだ。

 以下このAP電の訳出である。
(*青字)があればそれは私の註かコメントである。



『 更新2007年8月2日 東部標準時間 午後5時15分

 【ワシントン】民主党の大統領候補で期待されているバラック・オバマは木曜日(*8月2日のこと)、“いかなる状況においても”(in any circumstance)、アフガニスタンやパキスタンにおけるテロリストとの戦いにおいて核兵器を使用することはないと言明した。

 「私はいかなる状況においても核兵器を使用することは、われわれにとって深刻な誤り(profound mistake)である。」とオバマは語った。さらに一呼吸おいて、「一般市民を巻き込む。」そして急いでこう付け加えた。「取り消させて欲しい。(Let me scratch that.)核兵器についての議論はない。テーブルに乗っていない。」

 オバマは、テロリストやアルカイダのリーダーであるオサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)などを殲滅するために進んで核兵器を使用するか、あるいはその準備をするかというAP通信の質問にこのように答えている。

 「核兵器の使用についての議論は全くない。また仮定の話としてもこれからそのような議論をするつもりもない。」とオバマは、キャピタル・ヒル(*米連邦議会のこと)での選挙民との朝食会の後語った。

(* このAP通信の記者とのやりとりは極めて興味深い。この時点ではまだ民主党の候補にもなっていなかったのだから、ちょっと気を許していたとも考えられる。まず前段でパキスタンのテロリストに核兵器を使用するという話が世間に伝わった。オバマが本当にこう言ったのかどうか私は確認できていない。これに対してAP通信が確認にいった。その時の答えが「いかなる状況においても核兵器の使用は考えていない。」といったん答えたあとで、発言の取り消しを求め、「核兵器の使用そのものに関する議論はないし、これからもしないつもりだ。」と発言し直している。

 なぜ、オバマは「いかなる状況においても核兵器の使用はしない」という発言をあわてて取り消したのか。それは明白だろう。アメリカは一度も核兵器不使用を宣言したことはない。また米軍部は一貫して核兵器先制使用論者である。純軍事的にいって、核兵器は先制使用しなければその効果は半減する。要するに先に攻撃した方が勝ちなのだ。そのアメリカの伝統的な核兵器政策・核兵器戦略に、この発言が真っ向から抵触すると、オバマが、気がついたからだ。この発言がそのまま通れば、オバマは大統領候補にもなれない。大統領になったオバマは一度もこれに類した発言をしていない。慎重に軍産複合体制との間合いを計っているように見える。だが、私は「いかなる状況においても核兵器の使用はしない。」という発言はオバマ個人の本音だと考えている。)


 さらにAP通信が、その答えは戦術核兵器の使用についても当てはまる話かときいたが、彼はそうだと答えた。

 このイリノイ州出身の上院議員は、主要外交演説におけるパキスタン大統領、パルヴェーズ・ムシャラフ将軍に対して次のような警告を発している。テロリストを根絶するためになら、必要とあれば大統領(*ムシャラフのこと)の許可を得ない場合でも、パキスタンにおいてアメリカの軍隊を使用するかも知れない、と。

 パキスタンは核兵器を保有している。また政治的にも不安定だ。最近までの軍事的指導権が地域的な狂信者たちに取って代わられる可能性もある。そして彼らは核兵器の使用に関して、より注意深くない。

 オバマはパキスタン山岳部におけるテロリストは、2001年の攻撃で3000人のアメリカ人が殺されたあと、アメリカに対してさらなるテロ攻撃を計画していると警告した。

 「2005年のアルカイダ指導者会議の時、行動するチャンスがあったのにそれを逃したのは、とんでもない失敗だった。高いレベルのテロリスト目標についてもし実際的な情報をわれわれがもっているとして、ムシャラフは行動を起こさないが、われわれは行動を起こす。」とオバマは語った。

(* 今読んでみるとパキスタンに関する話題は、従来のアメリカの公式見解を一歩も出ていない。恐らく2005年のアルカイダ指導者会議とか、パキスタンのテロリストとか、オバマ自身も信じていないだろう。このインタビュー記事の本当の価値は、「いかなる状況においても核兵器の使用はしない。」とするオバマ個人の本音を引き出したことだ。それは大統領オバマの本音とは必ずしも一致しない・・・。)