(2011.1.1)
オバマ政権と核兵器廃絶 関連資料

63%のアメリカ人がアフガン戦争に反対、過去最高値を更新

 2010年12月30日、アメリカのCNNが成人アメリカ人にアフガニスタン戦争に関する直近の世論調査の結果を発表した。この調査は12月17日から19日にかけて、電話インタビューで行われた。サンプルは1008人。誤差は±3%以内としている。
(<CNN/Opinion Research poll (PDF)>)

 質問は「あなたはアフガニスタン戦争に好意的ですか?反対ですか?」というもの。直近の調査で「反対」意志表示は63%で過去最高だった。また「好意的」と答えた人は35%で過去最低だった。過去の結果は以下の表の通り。

表1 アフガン戦争に関するCNN世論調査
「あなたはアフガニスタン戦争に好意的ですか?反対ですか?」
実施期間 好意的 反対 意見なし
2010年 12月17-19日 35% 63% 2%
10月5-7日 37% 58% 5%
9月21-23日 39% 58% 3%
8月6-10日 41% 57% 2%
5月21-23日 37% 62% 1%
3月19-21日 42% 56% 3%
1月22-23日 48% 49% 3%
2009年 12月16-20日 43% 52% 1%
12月2-3日 46% 55% 3%
11月13-15日 45% 51% 2%
10月30日11月1日 40% 52% 3%
10月16-18日 41% 58% 2%
9月11-13日 39% 57% 2%
8月28-31日 42% 58% 3%
7月31日-8月3日 41% 54% 2%
5月14-17日 50% 48% 5%
4月3-5日 53% 46% 1%
2月13-15日 47% 51% 2%
2008年 12月1-2日 52% 46% 2%
7月27-29日 46% 52% 2%
2007年 1月19-21日 44% 52% 4%
2006年 9月22-24日 50% 48% 2%

オバマ政権発足は2009年1月。
リーマン・ショックは2008年9月
アフガニスタン侵攻は2001年10月


 一方「アフガニスタンでアメリカにとっての状況はどう思いますか?」という質問に対しては「とても良い」(2%)「おおむね良い」(42%)と合わせて44%だったのに対して「とても悪い」(21%)「おおむね悪い」(35%)と合わせて56%だった。過去の結果は以下の通り。

表2 アフガン戦争に関するCNN世論調査
「アフガニスタンでアメリカにとっての状況はどう思いますか?」
実施期間 とても良い おおむね良い おおむね悪い とても悪い 意見なし
2010年 12月17-19日 2% 42% 35% 21% 1%
9月21-23日 4% 40% 35% 19% 2%
3月19-21日 4% 51% 26% 14% 2%
2009年 11月13-15日 2% 30% 42% 24% 2%
5月14-17日 3% 33% 44% 17% 3%
2007年 5月9日-11日 5% 35% 34% 21% 4%

 これだけの結果からなにか結論めいたことは引き出せないが、アメリカ市民の間でアフガニスタン戦争に反対の意志表示をしている人が2/3に達したこと、一方2009年末に比べると、「アフガニスタンで状況は好転している」と見ている市民が逆に増加しているという一見矛盾した結果が出ている。

 私がしばしば引用する「反戦ドット・コム」のジェイソン・ディッツは次のように書いている。
(<http://news.antiwar.com/2010/12/30/poll-63-percent-of-americans-oppose-afghan-war/>)


オバマ大統領のアフガン戦争は前進しているという主張も、記録的な死者数がでている現実を和らげるものではないようだ。さらに公の予測ではさらに記録的な死者が出るとしており、この点、CNNの最近の世論調査は、この戦争に対する支持が衰え続けていることを裏付けている。』

 そして63%が反対というこの世論調査を引用しながら、
その内訳を見ても、人種、性別、地域、年齢に関わりなくこの戦争に対するアメリカ大衆の反対が出ていることを示している。』

 と分析し、次のように続ける。
二番目の質問、「アフガニスタンではうまくいっているか?」と質問に対しては、56%のアメリカ人が「おおむね悪い」あるいは「とても悪い」と考えていることを示している。興味深いのは、この世論調査が、大統領の「アフガニスタン演説」(12月16日)の直後に行われていることだ。』
(この演説で)オバマ大統領は、もちろんアフガニスタン戦争は「軌道に乗っている」と主張したが、大統領自身の与党も独立系も、圧倒的多数の人々はこの世論調査のなかでは、アフガニスタン戦争はまずくなっていると思っており、大統領はこれらの人々に対する説得に格別成功したとは言えない。』

 ジェイソン・ディッツの分析は一方では正しいのだが、他方で「アフガニスタン戦争はうまくいっている」と考えている人も、最低だった2009年11月の32%(とても良い2%、おおむね良い30%)に比べると直近の調査では44%(とても良い2%、おおむね良い42%)と増加しているのも事実だ。

 様々な分析が可能であり、これだけのデータでは結論的なことは言えないが、アメリカの市民の中の、アフガニスタン戦争に対する評価が自己分裂し始めていることだけは確かなようだ。それは世論操作の力なのかどうか・・・。