<参考資料> ポツダム宣言 全訳

 <ポツダム宣言 全訳へ飛ぶ>
追記 2014年9月2日

 アクセス解析を見てみると、1945年7月のポツダム宣言に関心が高まっているように見える。このサイトの『ポツダム宣言』全訳にもアクセスが増えている。この全訳はもともとシリーズ『トルーマンは何故原爆を投下したか?』と題する一連の記事のためになされたものである。ポツダム宣言の理解なしにはこのシリーズがかけなかったからだ。このシリーズの中の『W.ポツダム宣言と投下前夜』(2006年1月27日 http://www.inaco.co.jp/isaac/back/008/008.htm)で、なぜ私が『ポツダム宣言』の全訳に(無謀にも)取り組んだか記述してある。『ポツダム宣言』本文を読む人が増えると同時に、私がなぜ全訳に取り組んだか、その動機も読んで欲しくなった。そこでここに関係個所だけを抜き出して再掲することにした。以下「 」内が抜き書き本文である。今読んでみると不十分な記述だが、そのまま再掲することにした。

 「・・・このポツダム宣言も今考えると、おかしな宣言である。というのはこの宣言の署名者は、トルーマン米大統領、チャーチル首相、蒋介石主席の3人だが、この時ポツダムにいたのは、トルーマン一人だったからだ。スターリンもいたけれど、ソ連は当時まだ日本の戦争相手国ではないので署名者からは外れた。チャーチルは総選挙のためイギリスに帰っていてポツダムにはいなかった。蒋介石はポツダムくんだりまで出てこれるような状況ではなかった。

 『英国代表クレメント・アトリーは総選挙後の後始末のために不在であり、中華民国代表蒋介石もポツダムにいなかったため、トルーマンが自身を含めた3人分の署名を行った(蒋介石とは無線で了承を得て署名した)。
 ソビエト連邦が宣言の具体的内容を知ったのは公表後であったためヨシフ・スターリンは激怒したという。8月8日にソ連対日宣戦布告してから宣言に加わった。』
(日本語ウィキペディア『ポツダム宣言』より)

 つまり、トルーマンはチャーチル・蒋介石と自分自身と3人分の署名をしたわけだ。前代未聞である。

 13箇条からなるポツダム宣言には、原爆が使用可能であることには触れていなかった。どころか新兵器開発成功にすら触れていなかった。
(ポツダム宣言の原文は、http://www.ndl.go.jp/constitution/e/etc/c06.html
  http://afe.easia.columbia.edu/ps/japan/potsdam.pdf
 
 ポツダム宣言の英文原文はインターネットでどこかでも手にはいるが、日本語の訳文がなかなか手に入らない。唯一公式の訳文が、以下である。(外務省仮訳)ちょっと見て欲しい。
http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html

 この文章を理解できる日本人が何人いるか?少なくとも私は分からない。英語の原文を読んで何を言っているかはじめて知ることができる。ポツダム宣言は、日本が戦後再出発することになる基本文書だ。日本人全員が戦後の歴史の大前提条件の一つとして共通認識を持っておくべき文書だ。この宣言を受け入れることによって、連合国との戦争は終結したのだから。

 ところが、今なおかつこの公式訳文の状態で止めておくと云うことは、日本政府は宣言の内容を、日本国民に知らせたくないのではないかと邪推したくもなる。民間の訳もないではない。しかし、すべてこの日本政府の訳(と思うけれど・・・)を下敷きにしているため、ところどころ意味の通じないところが出てきている。参考に私が訳した文章を掲げて置く。較べてみて欲しい。(ポツダム宣言訳)

 私は英語の専門家でもなければ、国際政治の専門家でもない。その私が簡単に発見できる、「意味の通じないところ」がそのままになっているのはどういうわけか。この文書を、日本再出発の基本文書と見なしていない、という他理由が思い当たらない。

 私が誤っているかも知れないので、いくつか例示しておく。

まず第1項。(外務省仮訳では)「グレート・ブリテン国総理大臣」としてある。原文は「the Prime Minister of Great Britain」である。the Prime Ministerを総理大臣というのはまだしも、Great Britainを「グレート・ブリテン」としたのでは、この署名者の資格が分からなくなる。ここは明らかに「英国本土政府」という意味だ。すなわち、英連邦に所属する政府全体ではなく、英国本土に限定した政府の首相という意味だ。

 第3項で、「the British Empire」という言葉が使ってあり、これは大英帝国に属する国々の軍隊という意味で、Great Britainとは明確に使い分けてある。

 第9項「日本国軍隊は、完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し、」とあるが、ここは原文では「The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes」である。「return to their homes」は「各自の家庭に復帰し」なのか?そうではないだろう。特に日本国外に展開する日本将兵を念頭に置けば、「帰還を許されるものとする」ではないのか。でなければポツダム宣言の精神が分からなくなる。

 第11項「但し、日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は、此の限に在らず。」この文章が英語原文のどこに該当するのかというと唯一該当しそうなところは、「permit the exaction of just reparations in war.」である。「exaction」は取り立てることを意味する名詞である。「reparations」は「賠償」という意味である。従って「もって戦時賠償取り立てを可能とする(経済の維持)」という意味以外にはあり得ない。再軍備云々は前段、6項で「日本の人民を欺きかつ誤らせ世界征服に赴かせた、全ての時期における影響勢力及び権威・権力は排除されなければならない。従ってわれわれは、世界から無責任な軍国主義が駆逐されるまでは、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能であると主張するものである。」といい、第7項でも「そのような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。」(いずれも拙訳)と明確に述べており、第11項で再軍備に触れる必要もないところだ。

 第11項で云いたいことは、平和産業・経済は一営んでいいし、支配の目的でなければ原材料輸入もしてもいい、ただし賠償を忘れるなよ、と言うことだ。

 私は私の訳が正しいと言っているのではない。ポツダム宣言は戦後日本再出発の基本文書であり、全ての日本人が賛成・反対は別としてその内容を、そしてそれを受け入れることによって戦後がスタートしているということを理解しておく必要がある、そのためには正しい、わかりやすい日本語文章を作らなければならない、と云っているだけだ。日本政府がこんな訳文をまだ公式文書として掲げているのは、ポツダム宣言の精神を日本人に理解させたくないと気持ちがあるのではないか、と考えたくもなる。専門家を集めて作業すれば、すぐできることではないか。」
 



(原文:http://www.ndl.go.jp/constitution/e/etc/c06.htmlまたは
<PDF>http://afe.easia.columbia.edu/ps/japan/potsdam.pdf)


ポツダム宣言条文 全訳


(1) われわれ、米合衆国大統領、中華民国主席及び英国本国政府首相は、われわれ数億の民を代表して協議し、この戦争終結の機会を日本に与えるものとすることで意見の一致を見た。

(2) 米国、英帝国及び中国の陸海空軍は、西方から陸軍及び航空編隊による数層倍の増強を受けて巨大となっており、日本に対して最後の一撃を加える体制が整っている。(poised to strike the final blows)

(3) 世界の自由なる人民が立ち上がった力に対するドイツの無益かつ無意味な抵抗の結果は、日本の人民に対しては、極めて明晰な実例として前もって示されている。現在日本に向かって集中しつつある力は、ナチスの抵抗に対して用いられた力、すなわち全ドイツ人民の生活、産業、国土を灰燼に帰せしめるに必要だった力に較べてはかりしれぬほどに大きい。われわれの決意に支えられたわれわれの軍事力を全て用いれば、不可避的かつ完全に日本の軍事力を壊滅させ、そしてそれは不可避的に日本の国土の徹底的な荒廃を招来することになる。

(4) 日本帝国を破滅の淵に引きずりこむ非知性的な計略を持ちかつ身勝手な軍国主義的助言者に支配される状態を続けるか、あるいは日本が道理の道に従って歩むのか、その決断の時はもう来ている。

(5) これより以下はわれわれの条件である。条件からの逸脱はないものする。代替条件はないものする。遅延は一切認めないものとする。

(6) 日本の人民を欺きかつ誤らせ世界征服に赴かせた、全ての時期における影響勢力及び権威・権力は排除されなければならない。従ってわれわれは、世界から無責任な軍国主義が駆逐されるまでは、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能であると主張するものである。

(7) そのような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。

(8) カイロ宣言の条項は履行さるべきものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする。

(9) 日本の軍隊は、完全な武装解除後、平和で生産的な生活を営む機会と共に帰還を許されるものする。

(10) われわれは、日本を人種として奴隷化するつもりもなければ国民として絶滅させるつもりもない。しかし、われわれの捕虜を虐待したものを含めて、すべての戦争犯罪人に対しては断固たる正義を付与するものである。日本政府は、日本の人民の間に民主主義的風潮を強化しあるいは復活するにあたって障害となるものはこれを排除するものとする。言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重はこれを確立するものとする。

(11) 日本はその産業の維持を許されるものとする。そして経済を持続するものとし、もって戦争賠償の取り立てにあつべきものとする。この目的のため、その支配とは区別する原材料の入手はこれを許される。世界貿易取引関係への日本の事実上の参加はこれを許すものとする。

(12) 連合国占領軍は、その目的達成後そして日本人民の自由なる意志に従って、平和的傾向を帯びかつ責任ある政府が樹立されるに置いては、直ちに日本より撤退するものとする。

(13) われわれは日本政府に対し日本軍隊の無条件降伏の宣言を要求し、かつそのような行動が誠意を持ってなされる適切かつ十二分な保証を提出するように要求する。もししからざれば日本は即座にかつ徹底して撃滅される。