(原文
http://www.trumanlibrary.org/whistlestop/study_collections/bomb/large/documents/index.php?documentdate=1945-08-07&documentid=8&studycollectionid=abomb&pagenumber=1

                                            1945年8月9日
  親愛なるディック:(ディックはリチャードの愛称)
 
 8月9日付けのあなたの電報を興味深く拝見しました。
戦争において、日本が恐ろしく冷酷で、反文明的な国であることは私も承知しています。しかし、日本が野蛮であるから私たちも同様に振る舞うべきだという考え方には私は与しません。

私自身のことと言えば、その国の指導者たちが頑迷(pigheadedness-豚頭という言葉を使っている)であるゆえに、人口まるごと消し去ってしまわねばならないことを後悔しています。これはあなただからお伝えするのですが、私はそれが(原爆のこと)、絶対に必要という状況でなければ、使用するつもりはありません。私の意見では、ソ連が参戦すれば日本はすぐに降伏するでしょう。(降伏はfold up という口語を使っている)

私の目的は、できるだけ多くのアメリカ人の命を救うという点にありますが、日本の子どもや女性に対して人間的な感情も同時にまた持ち合わせるものであります。

敬具
ジョージア州・ワインダー リチャード・B・ラッセル足下へ

ラッセル上院議員のトルーマン大統領宛の電報―8月7日付け
ジョージア州ワインダー 8月7日 427P 米国大統領
(本人手渡し ホワイトハウス)

 ポツダム宣言に沿って、日本を降伏させようと甘言をあやつるという努力を停止すべきだという進言を謹んでさせて頂きたい。無条件降伏をさせてくれと彼らが頼み込んでくるまで、この戦争を続けて行こうではありませんか。パールハーバーにおける彼らのだまし討ち(the foul attack)でわれわれはこの戦争に引きずり込まれたのです。ドイツよりも日本に対してより思いやり深く寛大でなければならないどんな有効な理由も私には見出せません。私はドイツに対してと同様に日本に対して冷酷に対応すべきだと声を大にしていいたい。日本には穏便な和平(soft peace)を享受する権利はありません。健全な考え方を持っている広範なアメリカ人は、東洋に通じた人たちを含めてですが、裕仁に不可侵性ありとするグルー氏の態度に全く同意できません。天皇は去るべきです。
 (ジョセフ・グルー。開戦前の駐日大使で、当時は国務長官特別補佐官だった。日本の軍国主義は徹底的に処罰しなければならないが、天皇制は維持すべきだとしたシカゴ演説で有名。詳しくはhttp://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/01/003shoshi.html
日本の神道には何の義理もありません。ポツダム宣言に対する日本(ここではJapという言葉になっている)のにべもない回答は、その文書の中身やより厳格な和平条項を修正しても構わないと言うことに他なりません。もし今われわれが、即座に仕事をかたづける(日本をたたきのめすこと)に十分な数の原爆を保有していないなら、原爆ができ上がるまで、TNT爆弾でも焼夷弾でも攻撃を続けましょう。

 また私は、空軍の司令官たちに対して、日本の都市爆撃に関する事前警告を禁止する命令を出して頂きたいと考えるものです。これら将軍連中が日本の上空を飛行するわけではありません。彼らの向こう受け狙い(the showmanship)は、多くの空軍の立派な若者たちに無用な損害を及ぼすだけです。そればかりではありません。日本の手中に捉えられている無力なアメリカ人捕虜やバターン死の行進で捉えられた捕虜たちは、間違いなく空襲警告を受けた都市に移送されるでしょう。

 私たちの敵に全てのカードが揃って限り、この戦争は限定なしの全面戦争なのです。現在のアメリカの優位はアメリカ人の血や財産や困難に打ち勝つ力で勝ち得たものです。なぜ今ルールを変える必要があるでしょうか?これっぱかりの警告もなしに、日本がわれわれに最初の一撃を加えたことを忘れてはなりません。日本がわれわれの足元に這いつくばるまで日本を叩き続けると信じています。私たちは日本に対して和平の申し出をすることを即刻やめるべきです。次の和平の宣告は東京を焼け野が原にした後にすべきです。
 ようこそお帰りなさい。(トルーマンは8月2日までポツダムにいた。)
 尊敬を込めて。

米国上院議員 リチャード B ラッセル