（原文は以下：http://www.doug-long.com/stim425.htm　） 　トルーマン大統領へのヘンリー・スティムソンの 　メモランダム　１９４５年４月２５日 １． 恐らく間違いなく４ヶ月以内に、われわれは爆弾一個で都市全体を破壊することのできるような、人類史上もっとも恐ろしい兵器を完成することになります。 ２． 開発計画はイギリスと共有していることになっておりますが、物理的には、現在の所、その製造・使用を自由にできる立場にあり、ここ数年は他の諸国がその位置にたどり着けない情勢にあります。 ３． 云うまでもないことですが、われわれはこの地位を永久に保持できないであろう事は確かなことです。 a. この発見や製造についてのいろいろな部分々は、各国の科学者に広く知られた知見です。ただしわれわれが開発した工程について分かっている科学者はほとんどいません。 b. 現在の方法で建設するのは、多大な科学的かつ産業的努力を要します。またこの知識を有するのは現在のところ一時的にではありますが、アメリカとイギリスのみです。しかし、将来において科学者によってもっと手早くまたもっと安く生産する方法が見つけられるだろう事はほとんど間違いのないところです。それにともない原材料についても、もっと広く流通するようになるでしょう。結果として、将来的にはもっと小さな国やあるいはグループでさえ、もっと大きな国ならはるかに短期間に、核兵器を建設できるようになることも、また、ほとんど間違いないところです。 ４． 結果として、将来、核兵器が秘密裏に製造され、突然使用され、もっと大規模な形で、そして物質的な力で、疑いを持たぬ国々やグループに対して破壊を目的に効率的に使用されるような日がやってくる、と言うことを示しています。原爆の力を借りれば、より小さな国が、疑いを抱かぬ極めて強大ですらある国を２−３日の間に征服してしまうことも考えられます。今のところ、２−３年の間に原爆製造の段階に入ることのできる唯一の国はロシアだけと考えられますが。 ５． モラルの進歩と技術的発展とを較べて見たときの世界の状況は、事実上そのような兵器のなすがまま、と言うことになります。言い替えれば、近代文明は破壊されます。 ６． あらゆる形での国際平和機構の検討は今なされているようですが、その場合アメリカの指導者は核兵器の要素を考慮に入れておりません。この種の国際平和機能は現実的ではないように見えます。これまで考えられた制御システムはこの脅威（核兵器）に関する制御システムとしては、全く適合しません。ある国の内部においても国際間の国同士の間でも、この兵器の制御には疑いようもなく、大きな困難が存在します。完全な査察権や国内的制御権など、われわれがこれまでじっくり考えても見なかった権利が関係してきます。 ７． さらに云えば、この兵器に関するわれわれの現在の地位に照らしてみれば、他の諸国とそれを共有する問題、もし共有するとして、どのような形で、これは国際関係における第一義的問題となります。同時にまた、われわれの今次戦争における主導権、この兵器開発における主導権はわれわれに、ある種の、人道主義的立場から見た正義を守る責任を発生させます。それは将来文明にもたらすかも知れない災渦に対する極めて重大な責任でありますが、その責任を免れるものではありません。 ８． その一方で、この兵器を適切に使用する問題が解決されれば、世界平和とわれわれの文明を救う一種の類型をわれわれは世界にもたらすことになります。 ９． グローヴズ将軍の報告でも述べているとおり、この秘密がこれ以上保たれなく時に備えて、政府部内の執行機関及び法制整備機関に対して適切な勧告を与えるための、特別な資格をもった選別した委員会を創立すべく今その段階をたどりつつあります。 委員会はまた、戦後問題に関与する前の段階で陸軍省が取るべき行動についても勧告をなすものであります。すべての勧告はまず第一番に、大統領になされます。 　＊この委員会の設立にはトルーマンも同意した。これが暫定委員会（Interim Committee）となる。