(2011.11.29)
【関連資料】アメリカ経済

<参考資料> アメリカの物品・サービス貿易とその内訳 2009年―2011年11年


 私は前世紀の遺物である。貿易(Trade)とは“物品”(goods)の輸出入のことだと思いこんでいた。だから「物品・サービス」の貿易の自由化といわれてもピントこなかった。
 
 アメリカの物品・サービスの国際収支を見てみると(資料1:「アメリカの物品・サービス国際収支 2009年から2011年」を参照の事、すでにアメリカの輸出に占める「サービス」の割合は3割を占めるに至っている。しかもこのカテゴリーは出超である。2010年を例にとってみれば、物品における約6460億ドルもの莫大な「入超」を「サービス」カテゴリーの約1460億ドルの黒字で埋めて、全体を約5000億ドルの「入超」に抑えているという案配だ。またこの表からは明らかではないが、貿易全体に占める「サービス」カテゴリーの比率は年々大きくなってきている。

 オバマ政権が「輸出の倍増」を目指すと言う時、このカテゴリーの急成長が計算に織り込まれていることはまず疑いない。

 それでは、「サービス」のカテゴリーを構成する項目とはどんなものか?

 それを不十分ながら示すのが、「資料2」「アメリカの主要項目別サービス輸出 2009年から2011年」と「資料3」「アメリカの主要項目別サービス輸入 2009年から2011年」である。

 輸出入とも最大の項目は、「その他民間業務サービス」である。ただし金額が違う。2010年に例を取れば、輸出が約2500億ドルだったのに対して、輸入は約1800億ドルだった。内容は不明確であるが、別表「アメリカのGDP 産業分野別内訳 1998年から2010年」(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Economy_of_the_US/14.html>)からおおよそ推測ができる。この表の「専門職・業務サービス業」の内容がほぼどれに相当しよう。つまり、公認会計士や弁護士などの専門職サービス、医療関係のサービス、教育関係のサービス、コンサルタントや調査業務などのサービス、研究・開発などのサービスである。いずれもアメリカが世界一の質量を誇る分野である。この分野、医療分野における「サービス輸出」が特に有望な分野となろう。このためには医師などの資格の共通化、医療などの基準の標準化が必要になってくるだろう。

 特に特徴的なことは「特許権使用料及び使用許諾料」の項目である。この項目では、2010年に例をとると、約1056億ドルの輸出に対して、輸入は約300億ドルである。いうまでもなく圧倒的にアメリカが強い分野である。この分野の強化は必要であろう。このためには特許に関する基準や標準のアメリカ標準化を世界中に推し進める必要がある。

 一方で物品分野の輸出入を見てみよう。(資料4「アメリカの品目別物品輸出の内訳」及び資料5「アメリカの品目別物品輸出の内訳」、資料1「アメリカの物品・サービス国際収支 2009年から2011年」を参照の事)

 なんといっても特徴的なことは、圧倒的な「貿易赤字国」でありこの傾向は全然変化していないと言う点だろう。2010年に例をとれば、アメリカの物品輸入は、約2兆3880億ドルだった。その一方で輸出は、約1兆8380億ドルだった。輸入の中で単一の最大輸入品目は原油である。2011年1月―9月期を例にとれば総輸入の約15%を占めている。逆に言えば、原油を除いて考えれば、物品の分野でも輸出入はほぼ拮抗するかあるいは、出超になるかもしれない。

 次にアメリカの物品輸出の特徴は、「工業用資材・原材料」や「資本財」の比率が圧倒的に高いということである。2011年1月―9月期を例に取れば、この2つのカテゴリーで輸出全体の約67%を占めている。これに「自動車・自動車部品」のカテゴリーを加えれば、ほぼ75%がこのカテゴリーでしめる。ところが、この分野はコンピュータや関連製品を除けば、ほぼどの分野も成熟産業であり、飛躍的に輸出を伸ばすのには新規市場を獲得する以外には道がなくなっている。だからアメリカが新たに物品輸出を飛躍的に伸ばすためには全く新たな物品を技術革新によって創設するか、あるいは全く新規市場を獲得するか、あるいはその両方かを同時に進める以外にないということになる。

 輸入の特徴は、原油の比率が極めて高いという点以外に、消費財の輸入比率が高いということが挙げられる。総輸入のほぼ2割強が消費財だ。このことは、輸入を絞り込むことはなかなかむつかしいということを示している。

 以下資料は、

 資料1 アメリカの物品・サービス国際収支 2009年から2011年
 資料2 アメリカの主要項目別サービス輸出 2009年から2011年
 資料3 アメリカの主要項目別サービス輸入 2009年から2011年
 資料4 アメリカの品目別物品輸出の内訳
 資料5 アメリカの品目別物品輸入の内訳