中高生のための「核兵器廃絶」基礎知識

【第9問】核兵器のない世界」を目指すと宣言したオバマ大統領は、核兵器廃絶に向けてどんな具体的な道筋を描いているのですか?


 まずオバマの「プラハ演説」からその内容を見ていきましょう。


 核兵器を使用した唯一の核大国(the only nuclear power)として、アメリカ合衆国には行動する道義的責任があります。

 この真剣な試み(endeavor)にわれわれだけで成功することはできません。しかしわれわれはこれを主導することはできます。

 ですから(*アメリカには行動する責任があるから)、私は、核兵器のない世界に関する安全保障と平和の追求に関し、アメリカのコミットメントを、確信を持って明確に述べようと思います。

 この目標への到達は容易ではありません。おそらく私が生きている間ではないでしょう。

 それは忍耐と継続が伴います。

 しかし、いまやわれわれもまた、世界は変えられないとわれわれに告げる声を無視しなければなりません。


 と述べ、「核のない世界」へ向けてのアメリカの関与について具体的に次に述べます。

 ここで注目しておかねばならないことは、「核兵器を使用した唯一の核大国として、アメリカ合衆国には行動する道義的責任があります。」と述べつつ、「おそらく私が生きている間ではないでしょう。」と核兵器廃絶がさほど近い将来のことではない、という見通しを述べている点です。

それではどんな具体的なステップを描いているのでしょうか?

第一に、アメリカは核兵器のない世界へむけて確固とした第一歩を踏み出します。 』

 『 われわれの核弾頭と貯蔵(stockpiles)を削減するため、私は今年中にロシアと新たな戦略兵器削減条約(strategic arms reduction treaty)に関する交渉にはいるつもりです。 』

 とロシアとの核削減交渉に入っていることを明確にしています。

 事実この後、アメリカの交渉代表とロシアの交渉代表がローマで実務レベルの会談を行っています。

 ですから、ここではロシアとの「核削減交渉」が本当に「核兵器廃絶」につながるのかの検討がポイントになります。

 『 核実験の地球的禁止を達成するため、私の政権は即座にかつ前向きに(aggressively)、包括的核実験禁止条約のアメリカにおける批准を模索します。』

 と述べ、包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty −CTBT)の成立に努力することをあげています。

 包括的核実験禁止条約の発効要件は、1996年6月時点で、ジュネーヴ軍縮会議の構成国であり、かつ国際原子力機関の『世界の動力用原子炉』および『世界の研究用原子炉』に掲載されている44ヶ国すべての批准が必要です。

 現在、44カ国中、批准していない国は、アメリカ、中国、インドネシア、エジプト、イラン、イスラエル、インド、パキスタン、コロンビア、北朝鮮の10カ国。

 インド、イスラエル、パキスタン、北朝鮮は批准どころか署名もしていません。

 だからアメリカ議会がこれを批准したところで、即座に発効するわけではありません。

 またこの条約は臨界前核実験やコンピュータ上の爆発シミュレーションまで禁止しているのではありません。

 そして、そもそも核実験の禁止が核兵器廃絶にどうつながるのかの検討も必要でしょう。

 さらにカット・オフ条約に触れ、この条約の実現に全力をあげること、NPT体制の強化として、国際的な査察制度を強化するための権威当局(authority)とその資源がもっと必要、ルールを破ったり、理由もなくこの条約を離れようとする国々に対する実効的ですみやかな結果をだすことが必要だ、としています。

 さらにテロリストに核兵器や核分裂物質が手に入らないような、国際的仕組みを作ることなど、の提案を述べています。

 一つ一つの内容を具体的にチェックし、これらが本当に「核兵器廃絶」つながるのかどうか、検証した上で、オバマ演説を評価しなければならないでしょう。



【第10問】オバマ大統領が広島あるいは長崎を訪れるとしたら、
そこには、どんな意味や意義があるでしょうか?