(原文は以下:
http://www.trumanlibrary.org/whistlestop/study_collections/bomb/large/
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 )


暫定委員会会議議事録
1945年5月31日 木曜日
午前10:00〜午後1:15 午後2:15〜午後4:15


出 席 者
委員会メンバー
ヘンリー・L・スティムソン長官 委員長
ラルフ・A・バード閣下
バニーバー・ブッシュ博士
ジェームズ・F・バーンズ閣下
ウイリアム・L・クレイトン閣下
カール・T・コンプトン博士
ジェームズ・コナント博士
ジョージ・L・ハリソン氏
(委員会メンバーについては「暫定委員会について」を参照のこと)
招聘科学者
J・ロバート・オッペンハイマー博士
エンリコ・フェルミ博士
アーサー・H.コンプトン博士
E・O・ローレンス博士
招聘参加
ジョージ・C・マーシャル大将
レスリー・グローヴズ少将
ハーベイ・H・バンディ氏
アーサー・ページ氏

T.委員長開会あいさつ
   
  スティムソン長官は以下のことを説明した。暫定委員会は長官自身が大統領の承認を得て指名したこと。そして委員会の役割は、戦時暫定管理、公式声明、法制化、戦後機構などについて勧告を行うことである。陸軍長官は、我が国の科学者がなした輝かしいそして効率的な支援に対して、最高度の賞賛を示した。そして出席している4人の科学者の業績と暫定委員会が当面する複雑で困難な問題に進んで助言をなすことに最高度の感謝を表明した。陸軍長官は、科学者が、全く自由にその所信をあきらかにすることを希望すると表明した。

  委員会は暫定委員会(Interim committee)と名付けられているが、これはこの計画がさらによく知られるようになると、議会によってなされるもっと恒久的な組織、あるいは必要な条約でなされる恒久的な組織にとって替わられることが期待できるからである。

  陸軍長官はまた、マーシャル将軍が長官と共に、その軍事的観点から大統領に勧告を行う責任を共有していると説明した。従って、科学者の見解を直接把握するためにこの委員会に出席することが、極めて必要であると考えられる。

  陸軍長官は、ある見解を表明した。またこの見解はマーシャル将軍とも共有しているとも述べた。この見解は、この計画を単に軍事的目的の観点からのみ考えるべきではない。自然界を含めた世界と人類の関連からも捉えられるべきである。この発見はコペルニクスの理論や重力の発見にも比肩できるかも知れない。人類の生命という観点からは、それよりもっと大きな重要性を持つかも知れない。確かに戦争の必要性のために育成されて発展した分野には違いないが、文明に対する脅威となるよりも将来の平和を保障するような管理が加えられるべきである。

  陸軍長官は、この委員会で以下のような議題について議論することを望むと提言した。

    1.将来の軍事兵器
    2.将来の国際競争
    3.将来の研究
    4.将来の管理
    5.将来の開発、特に非軍事分野


U.開発の段階

  討論者のための技術的背景として、A・H・コンプトン博士は開発の色々な段階を説明した。最初の段階はウラニウム235の分離である。第二段階はプルトニウムや新しいタイプのウランから濃縮物質を獲得できる、増殖層の使用である。第一段階は、これまでかつて見られなかった爆発力を持った爆弾原料を製造するのに使われた。濃縮物質の製造は今や数ポンドから数百ポンドの規模になっている。この過程は、トン規模の製造ができるまでに十分に拡張すると考えられている。実際の爆弾は第二段階から製造されるのであり、まだその実効性が証明されていないが、そのような爆弾の実現は科学的知見から間違いないものと考えられている。推測では1946年1月から1年か1年半の間に、この第二段階が証明されるものと考えられる。技術的問題や冶金工学上の困難性から考えて、相当量のプルトニウムが製造できるのは恐らく3年かかるであろう。もし他に競争相手がいるとすれば、その競争相手がこの段階に達するには6年かかるであろう。
フェルミ博士
  直近の工学技術の問題は、おおよそ20ポンドのプルトニウムを研究上必要としている。第二段階ではこれは半トンから1トン規模での供給が必要という事になるだろう。

  陸軍長官の質問に答えて、A・H・コンプトン博士は、第二段階は第一段階での、いきいきとした成果に大きく依存することになると述べた。また現在建設した工場に投じられた費用を大きく減価させることにもなる、と述べた。
コナント博士
  いわゆる「第三段階」について触れ、この段階は第二段階の製造物から開発するもので、重水を爆発物として使用する。コナント博士はオッペンハイマー博士に、この段階に達するにはどのくらい時間がかかるであろうかと、質問した。
オッペンハイマー博士
  それは前段階よりはるかに難しい開発段階で、製造にかかるまでに最低でも3年かかるだろうと述べた。またオッペンハイマー博士は、重水(水素)は、他の物質よりはるかに低コストであり、量においてもはるかに入手しやすいと指摘した。
オッペンハイマー博士
  これら数段階における爆発力の規模について概観した。最初の段階では、爆弾1個あたりTNT換算で2000トンから2万トン。しかし実際の精確な威力については、実験をしてみるまで分からない。第二段階では威力はNTN換算で5万トンから10万トン。第三段階では爆発力はNTN換算で1000万トンから1億トンの爆弾を製造できるようになると考えられる


V.国内計画

 ローレンス博士 
  この開発計画において、政府の指導者たちが得難い機会を作ってくれたことに感謝の意を表した。ローレンス博士はもしアメリカがこの分野において先頭にとどまらなければならないものとすれば、われわれが他の国より、よく知りもっと研究するのは避けがたいことであると述べた。
  博士は、この研究はたゆまず続けていくべきものと感じている。トリウムやウラニウムを超えて、もっと他の新しい物質や新しい方法があり、その分野は依然として未開拓であると述べた。事実、この分野では、すべての重金属物質は、その潜在性があると述べた。彼は将来必要なエネルギーソースは、太陽からよりも地球上に存在する物質から得られるようになるかも知れないと考えている。ローレンス博士はこの計画の健全について、それを疑う現実的な根拠は何もないと指摘した。今発生している失敗や、将来発生しうるかも知れない失敗は、一時的な後退に過ぎず、それ以上ではない、またそのような一時的後退は、すぐに克服できる。

  ローレンス博士はこの計画の工場拡張は真剣に追求すべきであると指摘した。同時に一定規模の爆弾の貯蔵や原材料の貯蔵はなされるべきである、と提言した。安全上の理由から、そうした工場は全土に散らすべきであるとも述べた。産業上の適用やその開発は、前進させるべく努力を傾けるべきである、と述べた。必要な工場拡張と基礎的研究の拡大を真剣に追求することによってのみ、そして適切な政府の援助を担保することによってのみ、この国はその最前線にとどまることができる。この見解は、A・H・コンプトン博士によって完全な賛意が寄せられた。

カール・T・コンプトン博士
これまで出された見解を要約して、次のような計画を提言した。
    1.第一段階での生産の拡張、貯蔵用の爆弾の製造、研究用原材料の整備。
    2.第二段階研究への注力。
    3.必要な第二段階の実験工場の建設。
    4.新しい製品の製造
オッペンハイマー博士
  将来国内生産計画を誘導するに際しての、困難の一つは、用途に応じた原材料の割り当てであろうと、指摘した。カール・T・コンプトン博士はさらに付け加えて、われわれの基礎研究を強化するために、産業界を元気づける努力がなされなければならない、と指摘した。


陸軍長官は国内生産に関する見解をグループにまとめ次のように要約した。
    1.産業用工場をそのまま維持する。
2.軍事使用目的、産業用使用目的及び技術的使用目的で原材料を一定規模製造する。
3.産業用開発に門戸を開く。


W.基礎的研究

オッペンハイマー博士
 戦争の圧力下で行われている現在の研究は、単にその前段階における研究の成果をもぎ取っているに過ぎないと感じている。この分野における潜在性をもっと完全に取り出すためには、もっとゆったりとした、もっと通常の研究環境を設立することが必要だと感じている。オッペンハイマー博士は、強く次のように主張した。現在のスタッフは、相当数が大学に戻って、もっとこの分野で枝分かれした研究に携わるべきである、ある目的にだけ的を絞った現在の研究の仕方は、あまり多くを生み出さない、そしてもっと低コストで単純な製造方法を開発すべきである。ブッシュ博士は現在は戦時であるから、狭い範囲での研究を強いられているが、平和時の研究の仕方としては完全に誤っているとの見解を表明した。ブッシュ博士は、オッペンハイマー博士に、現在のスタッフは中性子研究の分野にだけ残し、その他のスタッフは解放してもっと幅広い、自由な調査をさせるべきと云う点で全面的に賛意を示した。A・H・コンプトン、フェルミの両博士は、完全な基礎的研究をなすまでは、この分野での大きな可能性を保証することはできないという点を協調することで、この見解を再度強化した。


X.管理と査察の問題

  陸軍長官は、純粋な軍事目的以外にどんな潜在力を持っているかを模索した。それに答えて、オッペンハイマー博士は、喫緊の関心は戦争を早く終わらせることであると指摘した。この開発をもたらす研究は、将来の諸発見にいかに門戸を開くかにかかっている。この主題に関する基礎的知識は世界中にすでに拡散しているのでわれわれがたどった初期の研究は、世界中に分かるだろう。オッペンハイマー博士は、アメリカが平和時使用目的に重点を置いた形で、世界と自由に情報交換するというのは賢いやり方だと、指摘した。この分野におけるすべての探究の基本的目標は、人類の福祉に拡大すべきである。原爆を実際に使用する前に、もしわれわれが情報交換をするなら、われわれの人道主義的正義の立場は強化されるであろう。

  陸軍長官は、非軍事用途の潜在可能性を理解しておくことは、情報交換の問題や国際的協力体制を考慮する際の基本的背景となる、と述べた。陸軍長官は、ブッシュ−コナント・メモランダムに言及し、それは自己規制方針を保証する科学の役割を強調している、と述べた。このメモランダムは、いかなる形でもこれから設立されるかの知れない国際的機構において、完全な科学的自由を提供され、また国際的管理法人が査察の権利を持つことを提言している。陸軍長官は、どの様な種類の査察が効果的であり、また民主主義的政府は、科学的自由と結合させた管理計画のもとに全体主義的政権に対して、どのような立場であるべきか、と質問した。陸軍長官は、今回の戦争において、民主主義的諸国は十全に公平でなければならないと述べた。ブッシュ博士は、この見解を熱烈に支持し、全体主義国家に対するわれわれの優位性は極めて大きいと指摘した。証拠はドイツである、ドイツはこの分野の技術においても他の分野においても、はるかにわれわれより立ち後れている。ブッシュ博士は、われわれのはるかに大きい優位性は、われわれのチームワークの仕組みにかなりの程度由来しており、われわれがそれによって勝ち得てきた自由な情報交換の仕組みは、これからも国際的な科学競争や技術競争の分野でわれわれに勝利をもたらしてくれるであろうと述べた。しかしながら、ブッシュ博士は、もし、相互交換という形でなく、一方的にわれわれの研究の結果を自由競争の下で、ロシアに対して公開してしまえば、永久にわれわれが先頭の地位を維持できるかどうかについては疑わしい、と述べた。カール・T・コンプトン博士は、最低限、建設の遅れを取り戻すまで、われわれの優位性を確保したいと感じている。しかし、どちらにせよ、この秘密は永久には保てるはずはない、だから世界と共有した方がいい、それでも世界のトップの地位を保てるとも感じている。

A・H・コンプトン博士
  この発見の破壊的応用は恐らくその管理において、建設的応用より易しいだろうと述べた。(核兵器の方が平和利用より管理しやすい)また博士は、数年前に作成した原子力趣意書に言及し、そこで触れられている新しい潜在可能性、艦船の推進力、健康、化学やその他の産業分野での応用の可能性について触れた。また博士は、ファラデーの夢と電子力学における予想は、何十年かの後にエジソンによって実現された、と指摘した。そのようなまだ実現していないことは、また海図にも記されない可能性である、とも述べた。この分野での基礎的知識は、すでに多くの国で知られており、規制して行こうという政策や科学的着想を一国ものとして止めておこうとしても役に立たない。世界を通じてこの分野での発展が、横並びで進んでいかない限り、科学者は多くの開発のチャンスを失ってしまうだろう。
コナント博士
  この分野での国際管理は、査察力を必要とすると感じている。また科学者の間での国際的調整が、この力を強化するために要求されると感じている。オッペンハイマー博士は、この分野におけるロシアでの研究がどの程度まですすんでいるかは、その可能性において疑わしいと表明したが、しかし、科学者の間の利益に基づいた友愛的結合が、この問題の助けとなるだろうと表明した。
マーシャル将軍
  査察の提案にあまり信を置きすぎることへ警告を表明した。クレイトン氏は、この点についてかなりの疑問を表明した。


Y.ロシア

  管理の問題及び国際協力の問題を考慮するにあたって、突出した関心事はロシアの態度である。オッペンハイマー博士は、ロシアはこれまで科学に対して常に友好的であり、この問題について仮の装いとして、ロシアに解放して見てはどうか、われわれの生産的努力を詳細には触れないで、一般論として話あってみてはどうかと、提言した。この計画に対する国家的努力について語ってもいいし、この分野での協力関係についても論じてみてはどうかと表明した。ロシアの態度について事前に予断を持つべきではない、と強く感じている。

  この点についてマーシャル将軍は、これまでのアメリカとロシアの間の典型的な関係からくる、攻撃の筋書きと反撃の筋書きについて相当程度議論した上で、これらの主張は、何もしっかりした根拠を持っていないことが証明されていると指摘した。もし、ロシアに、軍事的問題で、非協力的姿勢が見られるとすれば、それは安全体制の維持にその原因があるのだろうと、指摘した。ロシアと取引するに際して、それはそれとして受け容れるし、ロシアの態度もそれについて変わってくるだろうと、述べた。戦後の状況や他の純軍事以外の事柄に関しては、マーシャル将軍は見解を述べる立場にはないと言った。この分野(核兵器)では、マーシャル将軍は志を同じくする強国間で結合力を構築し、その連合の力を背景に、ロシアを軸の中に引き入れると云った考え方に傾いている。マーシャル将軍は、もしロシアがこの計画に関する知識を持っていたとして、日本にその情報を公開するとしても何らの恐れも感じないことは確かだ。核実験にロシアの有名な物理学者2名を招待するかどうかという問題を提起した。

バーンズ氏
  仮に一般的な話としても、もし情報をロシアに公開して、スターリンと提携関係をもつことに恐れがあると表明した。これは、とりわけわれわれのこの問題に対する関わり方の問題であり、イギリスとの協力関係に対する誓約の問題である。これに関連して、ブッシュ博士は、イギリスは工場の青写真すら持っていないと指摘した。バーンズ氏は、参加者全員による全体的合意事項として、もっとも望ましい計画は、ロシアと望ましい関係を作る努力を行うと同時に、常に先頭に立って置くために、できる限り急いで生産と研究を前に推し進めるべきだという見解を表明した。


Z.国際的計画

A・H・コンプトン博士
  適切な政治的合意に向けて作業すると同時に、われわれの優位な地位を維持することが極めて重要と強く強調した。またコンプトン博士は、できるだけ安全と国際的状況を維持した形での研究活動の自由と自由な競争が望ましいと述べた。また安全面を強くしすぎると、研究が不毛な結果となり、完全競争とするのも国家にとって不利益だと述べた。より大きな自由研究の枠組みの中で、軍事的側面から見た高い安全性を維持することはできうると述べた。科学的調査や科学的好奇心を自由に相互交換することによって、他の諸国に対する技術的優位性を維持することはできる。先ほどマーシャル将軍が表明した見解に触れて、志を同じくする国同士の協力を合意して、同時にロシアに対してその連帯に入るよう働きかけるのがよい、と主張した。
A・H・コンプトン博士
  今後最低限10年間、大きくは次の様な計画が採用されるべきだと提言した。

   1.研究の自由は、国家安全と軍事的必要性のレベルで維持されつつ、発展すべきである。
   2.この分野で民主主義的諸勢力の結合が、協力関係の目的で確立されるべきである。
   3.協力的相互理解がロシアとの間に達成さるべきである

  会議は1時15分昼食のために一時中断し、2時15分に再開した。マーシャル将軍を除いて、午前中の出席者は全員出席した。


Z.日本とその戦意に関する原爆投下の効果

  一つの原爆を一つの軍事施設に投下するのは、通常空軍による現在の次元の爆撃とその効果に置いて大きな違いはない、とする指摘があった。しかし、オッペンハイマー博士は、原爆による爆撃はその視覚効果がとてつもなく大きい、と指摘した。高さが1万フィートから2万フィートにも昇る、まばゆいばかりの光の柱をともなうだろう。爆発における中性子の効果は最低限半径2/3マイルの間の生命が危険となるだろう。色々な種類の目標物や生み出される効果に関する議論の後、陸軍長官は委員会全体の合意として以下の結論を表明した。
     日本には警告なしに投下する、一般市民が住む地域はあまり考えない、しかし、日本の住民にできうる限り大きな心理的効果を与えることを模索する。コナント博士の提言に基づいて、陸軍長官は、最も望ましい目標は、極めて重要な軍事工場であり、かつ大勢の従事者が働いており、かつ従業員の住宅に隣接して囲まれているような所、ということで同意した。

  同時に数発攻撃の試みについて、議論があった。オッペンハイマー博士の判断は、数発攻撃は実現可能である、と言うものだった。しかしグローヴズ将軍は、この提案に疑問を呈し、次の点でこの案に反対であると指摘した。
   (1)1回1回の連続攻撃でこの兵器に関する追加情報の獲得の利点が失われてしまう。
   (2)このような計画は爆弾製造を相当急がせることになり、かえって効力の薄いものなるかも知れない。
   (3)通常空軍による爆撃計画との違いを十分には際だたせないかも知れない。

([の項目はとんでいて、議事録から落ちている。記録ミスによるものなのか、後で故意に欠落させたものなのかは不明。)


\.望ましくない科学者の取り扱い

  グローヴズ将軍は、その開始時点から、ある種の疑わしい方向性を持った科学者や忠実性に欠ける科学者の存在があって、それに計画が悩まされてきた、と述べた。実際にこうした連中を退職させるのは、原爆を使用した後か、精々実験が行われた後でも良かろうと云うことで、合意された。この兵器に関する何か発表がなされた後、計画からこうした科学者の分断を図り、もう必要のない要員の雑草取りを徐々に進めていく。


].シカゴ・グループ

 A・H・コンプトン博士
  シカゴ計画の規模と性質について手短に概括した。グローヴズ将軍の指示に基づき、戦争遂行に有益な部分だけにシカゴにおける研究開発を限定する事にした。その活動は次ぎにまとめた項目に落ち着く。
    1.プルトニウム開発を行うハンフォード計画への支援。
    2.サンタフェ・グループへの支援。
    3.トリウム使用層の研究。
    4.ウラニウム層の拡張のための初期段階調査。
    5.この物質の従事員の健康に関する研究。

  上記のうち3と4は、今次戦争で使用するための目的という点では直接関連しない。しかし、全体の20%程度の仕事だけがシカゴで遂行されている、この研究を将来的にも継続して開発するという意味では、望ましいと考えられる、と言う指摘があった。シカゴ・グループで何をなされるべきかと言う点に関して、コナント博士とブッシュ博士の提言に委員会全体が学ぶと言う点が会議の総意である。まずブッシュ博士、次ぎにコナント博士は、シカゴを含めた現在の計画は、戦争終結まで現在のレベルで継続すると提言した。この提言は陸軍長官に送付されるということで賛同した。


XI.科学顧問団の位置づけ

  ハリソン氏は、科学顧問団はブッシュ博士とコナント博士の提言によって、招集され、委員全員が心より承認したものである、と述べた。いついかなる時でも、科学顧問団は委員会に自由にその見解を表明できるものと考えられている。委員会はどんな機構がこの分野で方向性を出し、管理していくのにふさわしいかと言う点で、特に、科学者たちが自由に考えることを保証したいと望んでいる。

  委員会は、この議題に関して科学顧問団にできるだけ早くその見解をまとめて欲しいと要望した。
  ブッシュ博士は、現在時点では、国家安全研究理事会との関係を考慮して、この分野における機構に関するまとめをする必要はないと指摘した。
  カール・T・コンプトン博士は、機構は後には、国家安全研究理事会の核物理部門と連携していくべきだと提言した。

  科学者たちは、自分たちそれぞれの部門の人間に暫定委員会についてどう説明するか、どのように招集するかについて疑問が提出された。委員会は以下のように合意した。4人からなる科学顧問団は、暫定委員会は陸軍長官が指名した、また陸軍長官を委員長とする、管理、組織機構、法整備、対外発表などの問題を取り扱うものとして設立された、とそれぞれ自分のチームに説明する。委員の身分については漏らさない。科学顧問団はこの員会に出席していること、またこの議題にいかなる段階についても自由にその見解を述べることができるという事は説明して良い。政府はこの問題について最も活発に有利となるような動きをしているという、印象を絶対に残さなければならない。


XU.次回会合

 次回会合は、1945年6月1日金曜日、11時とする。場所は陸軍長官執務室。会合の目的は産業界からの代表団の見解を聴取すること。

 会議は4時15分に終了した。


R・ゴードン・アーネソン
米国陸軍少尉
書記