(2010.5.6)
<参考資料> 2010年NPT再検討会議


イランとアメリカの激突の意味、NPT再検討会議
<抜き書き>

 核兵器の犯罪性

 アフマディネジャドは、彼の演説の中で重要なことを幾つか云ってきた。

 その一つは、「核軍備をしていることは、むしろおぞましく、恥ずべきことである。さらに恥ずべきなのは、そのような兵器を使用したり、あるいは使用すると脅すことである。」としている点だ。

 これは、単純素朴だが、極めて重要な思想だ。

 20世紀に置いては、核兵器を保有することは「大国の証拠」だった。そして核兵器を保有している国が大国として、他の諸国から尊重され、畏怖されてきた。そして世界の政治を牛耳ってきた。国連の安全保障理事会で拒否権を持つ国はすべて核兵器保有国である。北朝鮮が核実験に行った時、北朝鮮のメディアは「これで北朝鮮も大国の仲間入りをした。」と報じた。嗤うべしである。北朝鮮は大国の仲間入りをしたのではなく、「恥ずべき諸国」の仲間入りをしただけだ。

 しかしアフマディネジャドはこうした、「核兵器保有国は大国」という考え方を真っ向から否定する。彼によれば、「核兵器」を装備すること自体「おぞましく、恥ずべきこと。」なのだ。

 この考え方を押し進めていくと、フィリピンで成立している「非核兵器法」の考え方につながっていく。フィリピンの「非核兵器法」は、核兵器を取り扱うこと自体を犯罪と規定している。そのための刑事罰すら具備されている。

たとえば、

第十条(罰則)

本法律の第五条に於て違法或は禁止と宣言されている行為を犯した者は以下のように処罰される。

(1) 違反が核兵器を含む場合には、裁判所の判断により、20年ないし30年の禁固、または、
(2) 違反が部品又は構成部分、或は核兵器関連設備に関わる場合には、裁判所の判断により、6年ないし12年の禁固。

違反者が、船舶又は車両或は航空機、設備又は施設の、船長、指揮官、責任ある職員及び乗組員又は補助職員であるならば、場合に応じ、また彼らの違反への関与の程度に応じて、船長、指揮官或は責任ある職員は上記に規定されたうち最高の処罰、乗組員又は補助職員の構成員は上記に規定されたうち最低の処罰を受ける。

核兵器を組み立てる共謀が立証された場合には、すべての共謀者に対して上記に規定されたうち重い方の処罰が科される。』
(「フィリピン非核兵器法案」
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/philippines_2.htm>)

 この考え方を踏襲すれば、さしずめオバマも、メドベージェフも、サルコジも、ブラウンも、胡錦涛も、みんな揃って、公民権剥奪の上、禁固30年である。

 この法律は、「核兵器」を「麻薬」や「奴隷取り引き」並に人類に対するもっとも恥ずべき犯罪として取り扱っている。

 アフマディネジャドは、国連総会場の場でこのことを最初に指摘した現職の大統領ということになろう。

 西側の大手メディア、日本の大手メディアはアフマディネジャドのこの指摘を「イランの核疑惑」から目をそらせるための発言で、その実イランは核兵器開発を行っている、という観点から捉え、ほとんどまともに扱っていない。

 私はアフマディネジャドは本気だろうと思う。そして、「核兵器のなくなるその日までアメリカは核武装します。」と宣言するオバマの「核兵器のない世界」ではなく、これが21世紀核兵器廃絶を準備する思想だろうと思う。