(2010.5.19)
<参考資料> 2010年NPT再検討会議
<参考資料>トルコ首相エルドアン:国連安保理は“信頼性”が欠如

 5月18日付け、イランのTV局「プレスTV」(Press TV)に掲載された記事。<http://www.presstv.ir/detail.aspx?id=126927&sectionid=351020104> トルコ首相レジェップ・タイイップ・エルドアンは、このところ大活躍だ。5月18日には早朝、テヘランに飛んで、イラン大統領アフマディネジャド、ブラジル大統領ダ・シルバ(ルーラ)と会談して「イラン医療用原子炉核燃料棒(ペレット)」問題に画期的な決着をつけたかと思うと(「イラン、トルコ、ブラジル核燃料取り引きに合意−テヘラン・タイムス」<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/iran/04.htm>)、翌18日にはマドリッドに飛んで「EUラテン・アメリカ・サミット」に出席したらしい。そしてそこで「国連安全保障理事会」の信頼性について批判した。この記事は「イラン核疑惑」問題を中心に「エルドアン発言」を扱っているが、エルドアンの真意は国連改革にあると思われる。

 国際連合(the United Nations)は、また第二次世界大戦の連合国(the United Nations)でもある。「the United Nations」に「国際連合」の訳語を当てたのは、誰かは知らないが、国連とは第二次世界大戦の主要戦勝国が、彼らの「力の均衡」を一つのエンジンとしながら、戦後世界を支配する体制を保障する国際機関だ、という言い方もできるだろう。それを象徴する仕組みが安全保障理事会の「常任理事国」(Permanent Members―P5 )制度だろう。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国だけが「拒否権」(Veto)を持ち、安全保障理事会が事実上の国連最高意志決定機関となっている仕組みだ。またこの5カ国は、核兵器不拡散条約が確認する「核兵器保有国」である。すなわち「談合世界支配体制」は軍事的には「核兵器保有と実戦配備」によって裏付けされている。

 従って国連の運営は、この5カ国の談合によってなされてきた。戦後65年以上も経ち、未だに「第二次世界大戦後世界支配」が継続されている。エルドアンの念頭にあるのは、この国連改革であるに違いない。

 エルドアン、国連安保理の信頼性に疑問符

 トルコの首相、レジェップ・タイイップ・エルドアンは、2010年5月18日(火)マドリッドで開かれた「EUラテン・アメリカ・サミット」での新たな会合で発言している。

 エルドアンは「イラン核問題」に対処する国連安全保障理事会は、その信頼性が欠如しているという。

 エルドアンは、常任理事国が、他の国には核兵器の放棄を要求しながら自ら核兵器能力を維持していることを批判した。

 エルドアンのこの論評は、イランが、120Kgの20%濃縮ウランと交換に3.5%濃縮ウラン1200Kgをトルコに送ることに合意すると語ったその翌日になされた。この核宣言(イランの合意声明のこと)はテヘランでの、トルコ、イラン、ブラジル3カ国の交渉の後発表された。

 もし自分自身は核兵器を持っていて、他国には持つなというのであれば、その国の信頼性は一体どこにあろうか?』

 とエルドアンは、名誉博士号を自ら授与されるマドリッドのヨーロッパ大学を訪問中に述べた。イギリス、中国、フランス、ロシア、アメリカ(ABC順)が、安全保障理事会で拒否権を行使できる5つの国である。

 イラン核問題を解決するにあたり外交を使うべきと云うのが世界の要求にもかかわらず、アメリカ国務長官ヒラリー・クリントンは、火曜日(18日)早く、新たな対イラン制裁に関して「より強力な原案」を作成することでロシアと中国と合意に達したと発表した。

 このクリントンの演説は、イラン核問題を解決する重要なステップとして、イランの核宣言を歓迎するとしていた北京とモスクワには驚きをもって迎えられた。

 トルコとブラジルは共に国連安全保障理事会の非常任理事国である。そして国連の新イラン制裁決議案を受け取るために火曜日(18日)、理事会を開催したと伝えられている。