【参考資料】日本の電力会社 2014.11.4

<参考資料>電力会社の有価証券報告書−電力会社理解の基礎資料


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【T】
 原発を巡る諸構成要素は複雑多岐にわたっている。しかもその構成要素がそれぞれ相互に関連し合い、ダイナミックに動いている。これら構成要素を分類し、それぞれの関連を明らかにし、そのダイナミズムを説明し、これを叙述する仕事は面白いが、困難を通り越して不可能とすら思える。

 それら構成要素のうち「日本の電力会社」は、原発を巡る核利益共同体の同心円構造の中心に位置し、いわば一つの心臓部を形作っている構成要素であり、これは誰しも異存のないところであろう。しかし電力会社について私たちはあまりにも知らなさすぎる。一番身近な株式公開会社でありながら、また電力会社に関する情報が、一見あふれかえっているように見えながら、基本的情報と、それら情報をまとめて、一つの構図として理解する視点に欠けている。一つには電力会社やその広報・プロバガンダ機関の流す、虚実取り混ぜた情報にかき回されている側面がある。マスコミの不正確で、理解不足の報道がそれら混乱に拍車をかけている。

 電力会社を理解するまとまった資料としては、「有価証券報告書」がある。幸いにして日本の電力会社は全て上場会社だ。上場会社には株主や社会に対して、その企業活動を報告する義務がある。すべての情報を公開しているわけではないが、基本的な情報は公開しなければならない。もう一つ重要なことは、有価証券報告書ではあからさまなウソはつけないということだ。マスコミに向けてはウソに近い情報、あるいは時にはあからさまなウソをついても何の罰則や制裁もないが、有価証券報告書ではそうはいかない。虚偽報告には、時には、刑事罰もまっている。その意味では、有価証券報告書はもっとも信頼できる基本資料だ。

【U】
 私が駆け出しの記者で、東京支社で見習い時期を過ごしていた頃、まず教えてもらったのが上場会社の有価証券報告書とその見方だ。本当はすべての上場会社の有価証券報告書を編集部の資料キャビネットに保管し整備しておくべきだが、貧乏会社でその経費はない。

 地下鉄銀座線に乗って虎ノ門でおりる。正面にアメリカ大使館を見ながら、共同通信社本社ビルを目指す。今はどうか知らないが、その頃共同通信本社ビルの建物の半地下階にいくと上場会社の有価証券報告が閲覧できた。手続きを踏んで料金を払えば、必要なページのコピーもできた。ある会社の輸出品目と輸出FOB価額、総売上に占める輸出比率を調べるのにそれだけの手間がかかる。その会社の幹部にインタビューするのに、必要な資料だ。企業の幹部は自分に都合のいいことしかいわない。時にはウソに近いこともいう。そのまま話を聞いて原稿にすれば、編集長から突き返される。「キミ、この原稿はおかしいよ。輸出額と輸出比率、会社全体の売上げが辻褄あわないじゃないか」
 私は、自分の活躍を吹聴したい、その会社の国際部長にまんまといっぱい食わされたのだ。私は「人間性悪説」論者では、断じて、ない。しかし企業人にはこの性悪説は100%当てはまる。「性悪」でなければ生き残れないのだから仕方がない。だから欺すのが悪いのではない。欺される方が悪い。企業社会では「間抜け」は軽蔑の対象を通り越して、「罪悪」ですらある。だから有価証券報告書を事前にチェックしておくと、こうした初歩的な「間抜け」は犯さない。こうして企業を取材する時は、あらかじめ有価証券報告書や企業の会社概要に目を通しておく癖がついた。

 しかし、銀座線に乗って虎ノ門まででかけ、有価証券報告書閲覧室にこもって、必要な個所をメモをとってまた編集部まで引っ返してくる。取材を終えて、メモとつき合わせてみると閲覧し足りないところが出てくる。また出かけなければならない。1回が半日がかりだ。時には丸1日潰れる。

【V】
 今は夢のような時代だ。グーグル検索をする。「中国電力 有価証券報告書」と打ち込む。すると、あーら、不思議、お立ち会い。たちどころに中国電力有価証券報告書の項目がズラリと表示される。後は選ぶだけだ。しかも私は新幹線どころか銀座線にも乗らない。虎ノ門にも出かけない。広島の私の事務所のパソコンの前にすわったままだ。それでいて、10電力会社の有価証券報告書、おまけに電源開発と日本原子力発電の12社の有価証券報告書が30分も経たずに私のパソコンのホルダに納まる。まるで魔法である。

【W】
 インターネット検索では様々なサイトが有価証券報告書を掲載している。私は『株式プロ』のサイトからダウンロードするようにしている。といって私は株を1株も所有していない。電力会社の一株株主ですらない。『株式プロ』の表示が一番閲覧するものに親切だからだ。だから表示する有価証券報告書はすべて『株式プロ』のサイトから引用・ダウンロードしたものである。

【X】
 以下電力会社の有価証券報告書で、特に私が、皆さんに見ておいて欲しい項目を列記する。といって私は電力業界の専門家でもなければ、株式や有価証券報告書分析のプロでもない。有価証券報告書でも私がしっかり読み取れていない部分もかなりある。興味の焦点は、電力会社が、原発産業の、核利益共同体の中心サークルに位置している点にある。その観点で見落としている個所は数多くあると思う。逆にご教示をいただければ有り難い。
 
 なおここでいう電力会社とは、電気事業法(<http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/law3.html>)第1章第2条1項及び2項で定める「一般電気事業者」のことを指している。北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、四国電力、中国電力、九州電力、沖縄電力の10社である。これに電力会社が金を出し合って作った原発専業の卸売り会社・日本原子力発電、日本最大の電気卸売り事業者・電源開発の有価証券報告書も加えた。さらに上場企業ではないものの、青森県六ヶ所村に本社を置く、核燃料サイクル会社・日本原燃が会社概況書を公開しているのでそれも合わせて掲載しておく。

【Y】
 見所は、
【主要な経営指標等の推移】
【生産、受注及び販売の実績】のうち「(1) 需給実績」「(2) 販売実績」
【事業等のリスク】
【財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析】のうち「資産・負債・純資産比較表」「経営成績の分析」
【設備の状況】のうち【設備投資の概要】
同【主要な設備の状況】
【大株主の状況】なお「自己株式所有状況」も記載してある。
【連結財務諸表】のうち【連結貸借対照表】
同【損益計算書】
「会計処理基準に関する事項」 これは連結財務諸表に関連した注記であるが、電力会社独特の、特に原発事業に関連した特殊な会計処理に関して極めて重要な記述がある。
単独【貸借対照表】
単独【損益計算書】
【電気事業営業費用明細表】水力発電、汽力発電、原子力発電などの発電事業で、費用項目とその明細数字を知ることができる。
【注記事項】重要な会計方針について記載されている。原発関連の独特な会計基準に関する説明も記載されており、極めて重要。
【減価償却費等明細表】
【長期投資及び短期投資明細表】

以下有価証券報告及び会社概況書である。



北海道電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
東北電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
東京電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
北陸電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
中部電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
関西電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
四国電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
中国電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
九州電力株式会社 第90期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
沖縄電力株式会社 第42期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
日本原子力発電株式会社 第57期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
電源開発株式会社 第62期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)
日本原燃株式会社 第35期 (2013年4月1日〜2014年3月31日)会社概況書