(2011.9.17) 
【参考資料】ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ 

<参考資料>ECRR 2006 チェルノブイリ:20年とその後
“ECRR Chernobyl : 20 Years On”


   
 
  2006年、チェルノブイリ事故後20年目にECRR(欧州放射線リスク委員会)が公表したチェルノブイリ事故による電離放射線による健康影響報告書である。全文は無料でここからダウンロードできる。ただ残念なことに英語のままである。原文はECRRのサイトにある。
(<http://www.euradcom.org/publications/
chernobylebook.pdf
>)



 ECRR2010年勧告は、その第11章「被曝に伴うガンのリスク 第2部:最近の証拠」の第3節「核事故」の中で次のように書いている。

 『 ECRR2003 の報告書が出たころの西側諸国に現れていた全体的な様相は、ひとつの混乱であり、一方においてはガンや白血病そして遺伝的疾病における増加の報告と、他方ではその被ばくに関連するいかなる有害な(adverse)健康影響をも否定する、互いに相容れない報告があった。

 現在では、これがソビエト当局による基本的データの偽造や隠蔽によるものであったことが明らかになっている。数多くの取締りの命令が発見され、それらはヤーブロコフの2009 年の著者のなかで再現されている(Yablokov et al. 2009.)。例えば、ソビエト連邦公衆保健省第一副大臣シュチェピン(O. Shchepin)は、1986 年5 月21 日に次のように書いた。

 「  ・・・電離放射線に被ばくした後入院した特定の個人に対しては、退院時に急性放射線障害の兆候や症状がなければ、診断は栄養血管性ジストニア(vegetovascular dystonia)とせよ。」

 もう一つの例はソビエト連邦国防省の軍中央医療委員会(Central Military Medical Commission of the USSR Ministry of Defence)の説明文に現れている。

 「  (1) 電離放射線によって引き起こされる時間的に離れた結果、及び因果関係について:50ラド(訳注:= 0.5グレイ)を超えた被ばくの後の白血病や白血症、・・・急性の放射性症が診られなかった個人(リクビダートル)における急性の身体的疾患や慢性的疾患の発症、については電離放射線との因果関係があるものとしてはならない。」

 事故の本当の健康影響についての評価は、UNSCEAR(国連原子放射線の影響に関する科学委員会)やIAEA(国際原子力機関)による、高圧的な隠ぺい工作やデータの隠蔽に支配されていた。』 

 日本語ウィキペディア「チェルノブイリ原子力発電所事故」は次のように書いている。(なおこの記事は概説ながら非常に優れている。出典も明確である。)

 『 1986年8月のウィーン(IAEAの本部)でプレス(報道陣)とオブザーバーなしで行われたIAEA非公開会議で、ソ連側の事故処理責任者ヴァレリー・レガソフは、当時放射線医学の根拠とされていた唯一のサンプル調査であった広島原爆での結果から、4万人が癌で死亡するという推計を発表した。しかし、広島での原爆から試算した理論上の数字に過ぎないとして会議では4,000人と結論され、この数字がIAEAの公式見解となった。ミハイル・ゴルバチョフはレガソフにIAEAに全てを報告するように命じていたが、彼が会場で行った説明は非常に細部まで踏み込んでおり、会場の全員にショックを与えたと回想している。結果的に、西側諸国は当事国による原発事故の評価を受け入れなかった。2005年9月にウィーンのIAEA本部でチェルノブイリ・フォーラムの主催で開催された国際会議においても4,000人という数字が踏襲され公式発表された。
 
 報告書はベラルーシやウクライナの専門家、ベラルーシ政府などからの抗議を受け、表現を変えた修正版を出すことになった。』

 なおこのゴルバチョフの証言は、2006年イギリスBBC放送のドキュメンタリー「チェルノブイリ 核の惨劇」(Chernobyl Nuclear Disaster)に収録されている。

 ECRR2010年勧告の記述に戻る。

 『  2003 年の報告書(ECRR2003年勧告のこと)以後、チェルノブイリの健康影響に関する状況は著しく変わった。

 これは主に、健康障害に関する研究、及び動物実験と遺伝子研究に関するロシア語のピア・レビュー審査付きの報告書(これらは、UNSCEAR とICRP に無視されたものであったが)が今や英訳され、レビューされたことによるものである(Yablokov & Busby  2006,Yablokov et al. 2009)。

 ヤーブロコフ教授(Prof Yablokov)とブルラコバ教授(Prof Burlakova)は2003 年にオックスフォードで開催されたCERRIE(イギリスに設置された内部放射体の放射線リスク検討委員会のこと)の会議に出席し、ロシア語で公表されている論文の証拠は、IAEA やUNSCEAR の報告書にあるものと極めて異なったものであるとCERRIE の事務局に告げた。これらの論文の多くはヤーブロコフとバスビーによって英語に翻訳され、また要約された。しかしながら、CERRIE の報告書はそれらとその参考文献を除外した。

 それらはCERRIE の少数者報告書(Minority Report)に含まれている(CERRIEa,  CERRIEb)。

 ECRR はヤーブロコフ教授が議長を務めるチェルノブイリに関する小委員会を、2003年に立ち上げた。これは”ECRR2006 - Chernobyl 20 Years on(ECRR2006 チェルノブイリから20 年とその後)”の公表につながり、これはeuradcom のウェブサイトから自由に無料でダウンロードすることができる。

 この研究論文には、ロシア共和国とウクライナ、ベラルーシからの著名な幾人かの科学者たちの貢献が含まれており、詳細については読者にその本を読んでいただきたい。

 簡潔に言えば、それは事故の深刻な健康への影響を報告しており、ヒトや動物、植物の集団への遺伝子的及びゲノム的な効果を含んでいる。

 従って、チェルノブイリの疫学調査とチェルノブイリ効果(Chernobyl effects)が、UNSCEAR2000 報告やUNSCEAR2006 報告、及びICRP2007 勧告から除外されているのは信じがたいことである。UNSCEAR2006 報告の中では、ある量の紙面が放射線疫学に割り当てられているが、チェルノブイリに付いてはほとんど言及されておらず、上記のたった1つの論文の引用もなされておらず、議論もされていない。』


 2009年には第2版が出版されているが、これは無料ダウンロード版は存在しない。
(<http://www.euradcom.org/publications/chernobylbook2009.htm>)

 なおこの2006年版に収録されている論文は以下の通り。
 (http://www.euradcom.org/publications/chernobyleflyer.pdf)
 
1. Alexey V. Yablokov 
  Russian Academy of Sciences and Centre for Russia Ecological Policy, Moscow
“The Chernobyl Catastrophe - 20 Years After”  
 
 2. E.B. Burlakova and A.G Nazarov
  Emanuel Institute of Biochemical Physics, Russian Academy of Sciences and “Union of Chernobyl” Moscow committee
 “Is it Safe to Live in Territories Contaminated with Radioactivity? Consequences of the Chernobyl Accident 20 Years Later” 

 3.   Konstantin N. Loganovsky
  Department of Radiation Psychoneurology, Institute for Clinical Radiology,Research Centre for Radiation Medicine, Academy of Medical Sciences of Ukraine
“Mental, Psychological and Central Nervous System Effects of the Chernobyl Accident Exposures” 

 4.  Eugene Yu. Krysanov
  Institute of Ecology and Evolution, Russian Academy of Sciences
“The Influence of the Chernobyl Accident on Wild Vertebrate Animals”

 5.  G.P.Snigiryova and V.A.Shevchenko
  Federal State Institution Russian Scientific Centre of Roentgenology & Radiology Roszdrav and Vavilov Institute of General Genetics, Moscow, Russia
“Chromosome Aberrations in the Blood Lymphocytes of People Exposed as a Result of the Chernobyl Accident” 

 6.   Inge Schmitz-Feuerhake
  Chair, ECRR, Department of Physics, University of Bremen, Germany
“Teratogenic Effects After Chernobyl”

 7.   D.M.Grodzinsky
  General Secretary, Division of Biology, Ukrainian National Academy of Sciences
“Reflections of the Chernobyl Catastrophe on the Plant World: Special and General Biological Aspects” 

 8.   Chris Busby
  Scientific Secretary, ECRR, University of Liverpool and Green Audit, Aberystwyth, UK
“Infant Leukaemia in Europe After Chernobyl and its Significance for Radioprotection; a Meta-Analysis of Three Countries Including New Data from the UK” 

  
 9.  Alexey V. Yablokov.
  Institute of Ecology and Evolution, Russian Academy of Sciences
“The Health of the Chernobyl Liquidators- a Metaanalysis” 

 10.  Tetsuji Imanaka(今中哲二)

  Research Reactor Institute, Kyoto University, Japan(京都大学原子炉実験所)
“Did Acute Radiation Syndrome Occur Among the Inhabitants of the 30 km Zone? “

 11.   Helmut Küchenhoff, Astrid Engelhardt, Alfred Körblein
  “Combined Spatial-temporal Analysis of Malformation Rates in Bavaria After the
Chernobyl Accident” 

  
 12.  V.B. Nesterenko and A.V. Nesterenko
  Institute ‘Belrad’ and Belarus Academy of Sciences
“Radioecological Effects in Belarus 20 Years After the Chernobyl Catastrophe: The Need for Longterm Radiation Protection of the Population” 

  
 13.  Alfred Koerblein
  “Studies of Pregnancy Outcome Following the Chernobyl Accident”

 14.  Rosalie Bertell
  “The Death Toll of the Chernobyl”