(更新:2010.10.13)
【参考資料】世界各国の基礎データ

<参考資料>中国、各国国債を格付け
 
アプロードして見て、このままでは不十分と考えるようになった。私が世界経済に興味を持っているのは私が投資家だからではない。あくまで「核兵器廃絶」という観点からである。核兵器の存在と第二次世界大戦以降のアメリカによる世界支配との間には密接な関係がある。アメリカ(正確にいえばそれは、国家独占金融資本に完全に転化して自己増殖を続け、今や世界最悪のパラサイトとなった帝国主義アメリカのことであるが)を中心に核兵器は存在してきたのである。そのアメリカの力が弱まることは、核兵器廃絶に一歩近づくという視点から、私は世界経済に興味をもっている。だから、ここで私が知っておきたいのは、「大公国際信用評価有限公司」の立場から見た世界経済観である。なにもその結論が大切なわけではない。この記事はこのままでは、彼らの世界経済観がほとんど表現されていない。それでこの報告の分析部分を追加することにした。


 これは、「大公国際信用評価有限公司」(Dagong International Credit Rating Company)による各国国債信用格付け記事である。同社のサイトは次(<http://www.dagongcredit.com/dagongweb/index.php>)。私はこの会社の存在を田中宇の「国際ニュース解説」の記事で知った。(田中の記事は次。<http://tanakanews.com/101010china.php>)

 これまで、国債の格付けはアメリカの格付け会社、例えばスタンダード・プーアやムーディーズの独壇場だった。彼らの格付けは一応権威のあることにはなっているが、特に2008年の「リーマン・ショック」以降、彼らの格付けにクビを傾げる向きが増えてきた。一部の人たちは全く信用していない、といって過言ではない。というのは、彼らは信頼のおける格付け機関というより、アメリカ・イギリスの、別な表現で言えばアングロ・アメリカン・ブロックの宣伝機関とみなしているからだ。

 田中は前掲記事で次のように断じている。

従来型の格付け機関は、債券発行者から手数料をもらって債券を評価・格付けしてきた。CDOやサブプライムなど、債券の裏の仕掛けが複雑になるほど、関係者以外の人々が債券を評価しにくくなり、格付け機関が、金を出す発行者とぐるになって良すぎる格付けを債券に与えても、ほとんど誰も見破れないようになった。その結果として起きた信用バブルの崩壊がサブプライム危機であり、リーマンショックだった。』 

 しかし、私たちはそれでもスタンダード・プーアやムーディーズの格付けをクビを傾げながらも参照してきた。他になかったからである。それだけに今回「大公国際信用評価」の格付けには大いに興味があるというわけだ。

 この格付け報告の中で、「大公国際信用評価」は次のように述べている。
この報告は、先の大公国際信用評価のサイトから無料でダウンロードできる。私は中国語が読めないので、「English」ページから「Sovereign Credit Rating Report of 50 Countries in 2010」をクリックしてPDF文書でダウンロードした。) 

グローバル金融危機は、国際的な信用システムの中でその矛盾をさらに激化させた。その国際的な信用システムは、国家的信用の危機を引き起こし、グローバルな信用連鎖の中のもっとも敏鋭で重要な部分を対置している。歴史的な国家信用危機は世界経済と人類社会の安全に挑戦している。責任ある信用格付け機関として、大公国際信用評価公司(“Dagong”)は、信用リスクを明らかにすることに関与し、投資家に専門的でえこひいきのない助言を提供することとした。ここに「大公」は50カ国の国家信用格付けに関するレポートを提示する。−中略−今回この50カ国は世界のあらゆる大陸に散らばっており、その国内総生産の価値総額は、世界の総経済力の90%を占めている。これら諸国は、信用リスクにおける典型的な地域的特徴を含んでおり、世界の信用リスクの進展と伝播を代表している。』 

 格付け方法は「大公」独自の方法論に基づいている(<http://www.dagongcredit.com/dagongweb/uf/Rating_Methodology_Final100908.pdf>)と同社は述べている。

 以下が同社の発表した格付けである。



 「大公国際信用評価有限公司」(Dagong International Credit Rating Company)による各国国債信用格付け

順位 国家名 自国通貨 外国通貨   ムーディ スタンダー
ド・プーア
 フィッチ
格付け 概観 格付け 概観
1 ノルウェイ AAA 安定 AAA 安定   Aaa AAA AAA
2 デンマーク AAA 安定 AAA 安定 Aaa AAA AAA
3 ルクセンブルグ AAA 安定 AAA 安定 Aaa AAA AAA
4 スイス AAA 安定 AAA 安定 Aaa AAA AAA
5 シンガポール AAA 安定 AAA 安定 Aaa AAA AAA
6 オーストラリア AAA 安定 AA+ 安定 Aaa AAA AAA
7 ニュージーランド AAA 安定 AA+ 安定 Aaa AAA AAA
8 カナダ AA+ 安定 AA+ 安定 Aaa AAA AAA
9 オランダ AA+ 安定 AA+ 安定 Aaa AAA AAA
10 中国 AA+ 安定 AAA 安定 A1 A+ AA-
11 ドイツ AA+ 安定 AA+ 安定 Aaa AAA AAA
12 サウジアラビア AA 安定 AA 安定 Aa3 AA- AA-
13 アメリカ AA 弱含み AA 弱含み Aaa AAA AAA
14 韓国 AA− 安定 AA− 安定 A1 A+ AA
15 日本 AA− 弱含み AA− 安定 Aa2 AA AA-
16 イギリス AA− 弱含み AA− 弱含み Aaa AAA AAA
17 フランス AA− 弱含み AA− 弱含み Aaa AAA AAA
18 ベルギー A+ 安定 A+ 安定 Aa1 AA+ AA+
19 チリ A+ 安定 A+ 安定 Aa3 AA A+
20 南アフリカ A+ 安定 A+ 安定 A3 A+ A
21 マレーシア A+ 安定 A+ 安定 A3 A+ A
22 エストニア A+ 安定 A+ 安定 A1 A- A-
23 ロシア A+ 安定 A+ 安定 Baa1 BBB+ BBB
24 ポーランド A+ 安定 A- 安定 A2 A A
25 スペイン A 弱含み A 弱含み Aaa AA+ AA+
26 イスラエル A− 安定 A- 安定 A1 AA- A+
27 ブラジル A− 安定 A- 安定 Baa3 BBB+ BBB-
28 イタリア A− 弱含み A- 弱含み Aa2 A+ AA-
29 ポルトガル A− 弱含み A- 弱含み Aa2 A- AA-
30 インド BBB 安定 BBB 安定 Baa3 BBB- BBB-
31 タイ BBB 安定 BBB 安定 Baa1 A- A-
32 メキシコ BBB 安定 BBB 安定 Baa1 A BBB+
33 アラブ首長国連邦 BBB 弱含み BBB 弱含み Aa2 - -
34 カザフスタン BBB 安定 BBB− 安定 Baa2 BBB- BBB-
35 ハンガリー BBB 弱含み BBB− 弱含み Baa1 BBB- BBB+
36 インドネシア BBB- 安定 BBB− 安定 Ba1 BB+ BB+
37 エジプト BB+ 安定 BBB− 安定 Ba1 BBB- BBB-
38 ベネズエラ BB+ 安定 BB+ 安定 B2 BB- B+
39 ナイジェリア BB+ 安定 BB+ 安定 - B+ BB
40 ルーマニア BB+ 弱含み BB 弱含み Baa3 BBB- BBB-
41 ギリシャ BB 安定 BB 安定 Ba1 BB+ BBB-
42 トルコ BB 安定 BB- 安定 Ba2 BB+ BB+
43 アイスランド BB 弱含み BB- 弱含み Baa3 BBB BBB+
44 ベトナム BB- 安定 BB- 安定 Ba3 BB+ BB-
45 モンゴル B+ 安定 B+ 安定 B1 BB- B
46 フィリピン B+ 安定 B+ 安定 Ba3 BB+ BB+
47 アルゼンチン B 安定 B 安定 B3 B- B-
48 ウクライナ B 安定 B- 安定 B2 B+ B-
49 パキスタン B- 弱含み B- 弱含み B3 B- -
50 エクアドル CCC 安定 安定 CCC - CCC+ -


註1 ムーデイ、スタンダード・プーア(S&P)、フィッチの格付けは、自国通貨のみ表示。
註2 ムーディは2010年6月21日発表資料。S&Pは2010年5月31日、フィッチは2010年6月18日。
註3 ムーデイはナイジェリアの格付けなし。S&P、フィッチはアラブ首長国連邦の格付けなし。
註4 ムーディ、フィッチはエクアドルの格付け資料なし。
註5 フィッチのパキスタンは不明。
註6 「大公国際信用評価有限公司」の格付け報告の4つに分散した表を合体させたもの。
註7 3社から見て「大公」の評価が高いのは
 
註8 3社から見て「大公」の評価が低いのは
 
註9 3社からみて「大公」の評価がほぼ同等は
 
 

 「大公」は次のように説明している。

 『 「大公」による格付けの基盤を説明するため、また「大公」の格付け方法の核心的分析思想を反映させるため、また格付けの科学的結論を示すために、この部分は2つの視点から比較分析を採用するであろう。1つの視点は格付けグループによる基礎的格付けの特質を比較すること。もう1つの視点は、ムーディ(Moody’s)、スタンダード・プーア(Standard & Poor’s)、フィッチ(Fitch)などによる格付け結果を比較すること、である。
 
 Moody’s Investors Service。
親会社のMoody’s Corporationはニューヨーク証券市場に上場している。1909年創設。世界の格付け市場の40%をもっている。その格付けの信憑性については大いに議論のあるところで、英語Wikipediaでは、「Credit rating agency」という項目の中で大いに批判されている。(<http://en.wikipedia.org/wiki/Credit_rating_agency#Criticism>)中でも最大の批判のポイントは、これら格付け会社が、格付けの対象とする機関や法人から金をとって格付けを行っている点であろう。「大公」は一切無料とし客観的な格付けであるとしている。たとえばムーディは「恐喝」の疑いで告発されている。ドイツの「ハノーバー・リ」という保険会社は、ムーディから「無料格付け」の提示を受けたが、やがてこれが有料になるのがわかっているので、断り続けた。しかしムーディは「無料」の格付けを行い続け、そのたびに同社の社債の格付けを下げ続け、最後にはこの会社の社債を「ジャンク」と格付けした。このため、「ハノーバー・リ」の発行社債総額は1時間で1億7500万ドルの損失をこうむったと云う事件。(以上英語Wiki<http://en.wikipedia.org/wiki/Moody's>などを参照の事。)私から言わせれば、どんなに歴史が古かろうが、ニューヨーク証券市場に上場していようが、こんな企業は金融資本主義の中に巣くうパラサイトそのものだと思うが・・・。

 Standard & Poor’s。
ムーディと並び称される格付け会社である。独立の会社ではなく、マグローヒル・カンパニーズの子会社である。運営方法は全くムーディと同じ。(「Standard & Poor's」<http://en.wikipedia.org/wiki/Standard_%26_Poor's>を参照の事。)


 Fitch’s。
イギリスとアメリカに本拠を置く金融会社フィッチ・グループの子会社で、Fitch Ratings, Ltdのこと。日本語Wikiではフィッチ・グループそのものが、フランスの.「フィマラックS.A」の子会社としている。

(以上英語Wiki<http://en.wikipedia.org/wiki/Fitch_Group>及び日本語Wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%
83%E3%83%81%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82
%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%
83%9F%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89>
を参照の事。) 


1.「大公」国家格付けの比較分析

国家信用リスクのレベルにおける違いを際だたせるために、我々の分析目的として現地通貨Aレベルの中から、3つの格付けの諸国を選択する。』と述べている。国家信用リスクを、投資家の立場から見て、対象国通貨でその国債を購入するのと、他国通貨で購入すす場合とでは、為替リスクを考えれば、当然リスクが異なるはずだ。自国通貨と他国通貨で国家リスクを考えるというのは、一定の合理性がある。 

  (1)現地通貨で「AAA」格付けの諸国
現地通貨で国家信用格付けが「AAA」の諸国は、ノルウエィ、オーストラリア、デンマーク、ルクセンブルグ、スイス、シンガポール、ニュージーランドである。これら諸国はすべてのコア(核)要素において強みを発揮しており、あらゆる要素においていかなる欠陥も見いだせない。このことは、いかなる予見しうる状況においてもこれら諸国が債務不履行(insolvency)に陥ることがないことを保証している。その主な特徴は、政治機構が成熟しかつ良く機能:国家発展戦略が明確かつ明らかな効果を伴って積極的に実行:国家安全保障体制が安定:経済的に強靱かつグローバルに力強い競争力の優位性を確保:世界経済回復の中で経済成長の見込みを確保:よく行き届いた金融システムを保持かつショックに強い耐性を保持:政府が長期間にわたって良好な年間予算記録を維持:経済危機のため政府赤字や債務が増加しているとはいえ、国家予算の持続性を維持:通貨の国内価値が安定:その債務は主として自国通貨の中では名目的であるか、あるいは良好な外部流動性を保持かつ十分な外国通貨を保持:通貨の国外価値が安定。』

 などの理由を挙げている。なお、今回「大公」はスエーデン、フィンランド、アイルランドなどは50カ国の中に含めていない。
 
  (2)自国通貨で「AA」の諸国
「AA」の諸国は、中国、カナダ、オランダ、ドイツ、アメリカ、サウジアラビア、フランス、イギリス、韓国、日本である。「AA」の諸国は、4つのコア要素のうち最低3つまで良好に保持している。しかし、あと1つないし2つが欠陥である。従ってこれら諸国の債務履行能力は「AAA」諸国より低い。

リスクという点では一般的にこれら「AA」諸国は2つのカテゴリーに分類される。1つのカテゴリーはヨーロッパやアメリカの危機の中心に存在する先進国を含んでいる。コア要素がすでに弱いため、金融危機の下で国家予算ポジションが極めて悪化している。ドイツ、アメリカ、フランス、オランダ、カナダを含んで、そのすべてが年間予算プレッシャーをかかえている。しかし、包括的な機構の優位性のおかげで金融と負債を調整する余地を増している。

もう一つのカテゴリーの属する諸国は、年間予算の強みを維持しており、もっと楽観的な経済的外観を有している。それら諸国は経済構造の調整に直面しているか、あるいは実際的な諸問題の地政学的なリスクに直面している。それら諸国は「AAA」諸国に比べれば耐性が低い。これらの国は中国、サウジアラビア、韓国を含む。』

 まず妥当な分析であろう。アメリカ、ヨーロッパの先進国は極端な財政赤字に苦しんでいるが、長年培った様々な金融システムで何とか危機を乗り切っている。(世界の基軸通貨を有するアメリカは全く異なる条件にいるが。)それに対して中国、サウジアラビア、韓国はそれぞれ地政学的なリスクをかかえているが基本的には経済構造が成長基調である。従って前者が弱含みの「AA」に対して、後者は安定した「AA」である。この記述の中で日本の名前が出てこない。どちらのカテゴリーにも分類できない特殊な事情があるという分析だろう。日本が抱える最大のリスクは恐らく「対米従属」だろう。すなわち自分のことが自分で決定出来ない。「対米従属路線」は、1995年頃までは、日本の独占資本層にとってはプラスに働いた。しかしそれ以降は、日本の独占資本層にとってもマイナスに働いている。アメリカの「経済の傘」(核の傘ではない)がしぼんで来ており、アメリカの経済の傘に止まるかぎりじり貧だからだ。


  (3)自国通貨で「A」の諸国
格付け「A」の諸国は、ベルギー、チリ、スペイン、南アフリカ、マレーシア、ストニア、ロシア、ポーランド、イスラエル、イタリア、ポルトガル、ブラジルである。

「A」レベルの諸国は一般的に言って格付け要素のうち2つないし3つで強みを発揮している。そして彼らの弱みは「AA」レベルの諸国に比べれば明らかだ。全体的な債務履行能力はさらに低い。

「A」レベルの諸国は全般的に見て、2つのタイプの特徴を示している。1つのタイプは、先進国で包括的な体系力が落ち込んでおり、また国家予算が深刻な挑戦を受けている。もう1つのタイプは極めて急速に市場経済が発展しているが、その経済に不安定要素をかかえている。』
 
  この階層序列の中で、スペイン、ポルトガル、イタリア等々の先進国は、統合的システムの強さが劣化しており、経済成長の潜在性や見込みが極めて限定的である。それに加えて、その負債や財政赤字問題が顕著となってきている。もし経済成長あるいは税収の伸びが、依然として歳出との間の間隙を埋められないならば、突然の、あるいは比較的大きな外的あるいは内的衝撃が、彼らの財政的あるいは負債償還に関して大きなリスクに直面することになるだろう。

 市場経済が勃興している諸国、チリ、ロシア、ポーランド、ブラジルなどといった諸国は、経済構造変革に関わっており、急激な経済成長を謳歌している。財政状況も満足であると共に、その経済規模は、継続的に拡大している。しかしながら、依然として経済構造に問題を抱えており、ショックに対する耐性能力や安定成長性に関してはさらに強化すべきであろう。』


2.ムーディ、フィッチ、スタンダード・プーア3社格付けとの比較

3大格付け会社の評価との比較(+、−といった点を度外視すれば)という点では、「大公」と3社との間には大きな違いがある。またその違いは3社間では小さい。』

 「大公」は前出50カ国の格付けを行っているが、ムーディはナイジェリアの評価を行っていない。またスタンダード・プーアとフィッチはアラブ首長国連邦(UAE)の評価を行っていない。またムーディとフィッチはエクアドルについて外国通貨にのみ評価を行い自国通貨による比較を行っていない。従って正確には、この3カ国を除いた47カ国の評価比較と言うことになる。しかし大勢には影響ない。

 「大公」が比較に使ったのは、ムーディは2010年6月21日発表、スタンダード・プーアは5月31日、フィッチは6月18日に発表した格付け資料を使っている。

 前出の「各国信用格付け」を参照して欲しいのだが、ムーディ、スタンダード・プーア、フィッチの3社からみて「大公」が高い評価をした国は、中国、サウジアラビア、ロシア、ブラジル、インド、インドネシア、ベネズエラ、ナイジェリア、アルゼンチンの9カ国。

 この理由について「大公」は次のように説明している。

これら諸国の国家運営能力は、引き続き改善していること、長い目で見て経済成長力の潜在性は安定していること、年間予算の安定性や外部ショックからの耐性は良くなる方向にあること。特にグローバル金融危機後、これら諸国の(経済成長力で)発揮した力は禍を転じて福とした観があり、そのことは国家信用レベルを増している。』


 実際問題として、アメリカCIA実情報告から作成した「世界各国 国家負債のGDPに占める比率ランキング」(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/kono/GDP_CIA.htm>)を見てもこれら諸国は軒並み低い。中国で15.7%、ロシアでは6.8%である。また09年4月国際通貨基金が発表した、各国GDPの推移予測(「国際通貨基金<IMF>推測による世界各国GDPの推移<2007年-2013年>」<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/world_data/GDP_IMF.htm>)を見てもここに挙げられた諸国は、2008年リーマンショック以降も力強い経済成長をとげている。特に09年、リーマンショック後、世界経済が縮小したにもかかわらず、経済成長した国が7カ国(中国、インド、インドネシア、イラン、サウジアラビア、ポーランド、南アフリカ)あり、そのうち4カ国が、「大公」が高い評価をした9カ国とダブっている。

 我々も欧米中心の世界経済観(それはアングロ・アメリカン・ブロックの世界観だが)を改めなければならない時に来ている。

 一方、3大格付け会社よりも、「大公」の評価が低かった諸国は、カナダ、オランダ、ドイツ、アメリカ、イギリス、フランス、ベルギー、スペイン、イスラエル、イタリア、アラブ首長国連邦、タイ、メキシコ、ルーマニア、アイスランド、ギリシャ、フィリピン、エクアドルの18カ国である。

 一見しておわかりのように、3大格付け会社は欧米先進国に甘く、逆に言えば、「大公」は先進国に辛い、という事がいえる。しかし、年間国家負債が2兆ドルも積み増しているようなアメリカや国債の販売で売れ残りが出てきているようなイギリスが、3大格付け会社では最高位の「AAA」という評価は誰も納得しないし、国家予算の何倍もの借金があるようなアイスランドが、資源を梃子に経済成長著しいカザフスタンや工業国家として着実な歩みを見せるハンガリーとほぼ同じ「BBB」クラスというのは誰も納得しないだろう。

 繰り返しになるが、欧米中心の「世界経済観」を改めなければならない時に来ている。

 さて最後に日本についてである。日本は「大公」でも3大格付け会社でも「AA」と、トップの次グループという評価である。GNPの2倍も国家負債があり、その比率はジンバブエ並みという事実を考えれば、これでも甘い方かも知れない。

 しかし、日本の真の問題は、国家負債にはない。日本の行く末をわれわれ日本の市民が自由に自主的に決定出来ないという点にある。言い換えれば、日米安全保障条約下でアメリカの従属下にある点が最大の問題だろう。

 「日米安全保障体制」「日米同盟」は、今や日本の経済支配層にとっても桎梏になりつつある。