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朝日新聞に見る「世論調査」という名の「世論操作」

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今回話題は新聞の世論調査

哲野が「網野、悪いけどちょっと来てくれ」と言うので行ったら
新聞を突き出して「ちょっと、これ読んで俺とやりとりしてみんか?」

見ると朝日新聞の世論調査。(7月15日大阪本社版、朝刊4面)
質問とその回答が書いてある。

哲野「どうもこれ胡散臭いんだよな」

まず調査方法。
7月13日・14日の土日、朝日RDD方式と称する方式で実施した電話による世論調査。

世帯用と判明した番号は1989件
有効回答は1087件
回答率56%

網野「世帯用と判明した番号てどういうことだろ?」
哲野「間違いなく抽出した電話番号のうち、法人とか商店の電話番号ではない、
   個人の家庭用の番号だと判明した、という意味だろうね。」
網野「2000件足らず電話して、半分でしょ?回答は。
   これって世論調査と言えるの?」
哲野「僕もよく勉強したわけじゃないけど、統計学とか疫学とかでいえば
   サンプル数があまりに少なく信頼性に欠ける、というレベルだろうね、これは」
網野「これ、携帯電話にはしてないんでしょ?」
哲野「当然そうだよね」
網野「だから土日に家にいてかかってきた世帯用電話に出て答える人ってどんな層だろうか…」
哲野「まぁ難しいけど、はっきり言えることはCATVとかBSとかはあまり見てない、
   新聞はそれぞれのローカル紙か、洗剤と引き換えの読売か、
   ま、よくて朝日、毎日だろうね。
   当然インターネットなんかやってる人は少ないだろうね。」
網野「それに高齢者のイメージだけど、どう?」
哲野「若い層はいないだろうね。土日に遊びに出るだろうからね。」

で、早速模擬調査を実施してみました。

網野が質問者
哲野が回答者

網野「安倍内閣を支持しますか。しませんか?」
哲野「そりゃないだろ、いきなり。電話なんだから。」
網野「そりゃそうね。やり直し。
   もしもし、お休み中のところ大変失礼いたします。
   こちらは朝日新聞の世論調査を実施しております。
   宜しければ質問にお答え願えますでしょうか?」
哲野「そう、そうだろうよ、きっと。
   中にはうるさく身元を聞くやつもいるかもしれない。」
網野「じゃ質問をはじめます。
   安倍内閣を支持しますか、支持しませんか?」
哲野「しません。」
網野「それはどうしてですか?
   次の中から選んでください。
    1.首相が安倍さん
    2.自民党中心の内閣だから
    3.政策の面
    4.なんとなく  」
哲野「ちょっと待ってよ、その政策の面ってどういうこと?」
網野「私は単なるオペレーターなのでよくわかりません。」
哲野「これ、この質問おかしくない?
   たとえばぼくなんか、安倍内閣支持しない理由は明確で
   一部大企業だけのための政策を打ってるから支持しないんだけど
   そんなのどこにはいるんだろうか?」
網野「それは政策の面じゃないかな」
哲野「そういうことになるかね?」
網野「次いくよ、今どの政党を支持していますか?」
哲野「そんなの答えられないよ!だってそれ投票の秘密を侵すことになるよ?!
   憲法違反の質問じゃん!!
   君と僕は相当親しいけど、それでも僕は君に投票前にどこに投票するかとは聞かないし
   君だって聞かれたら答えないだろ?」
網野「うん、私の親にすら、意見は言うけど聞かないし、言わないよ。親もそうだし。」
哲野「そりゃ選挙が終わった後でね、どこに入れたと聞くことはあるけどさぁ、
   今その質問はないだろう?」
網野「まともな人なら答えないね。この質問に答える人は、政治意識の低い人だということは言えるわね」
哲野「間違いないね」
網野「ちょっと待ってよ、これで質問に答えなかったら、有効回答にならないといことかな?」
哲野「そうだろうねきっと。お答えできません、と言った時点で、質問終了だろうね。
   で、有効回答とみなさないだろうね。ま、続けてみよう」
網野「仮に今、参院選の投票をするとしたら、比例区ではどの政党、またはどの政党の候補者に投票したいと思いますか?
   次に挙げる政党の中から1つだけ選んでください。…ってこれおかしくない?」
哲野「おかしいもおかしくないも、ないよ。おかしいよ。
   そんなの答えられるわけないじゃない、見ず知らずの人に。
   これに抵抗感なく答える人はどういうタイプの人か。
   まず間違いなく政治意識や権利意識の低い人だろうね。」
網野「でも新聞の世論調査に協力するという意識で答える人もいるんじゃないだろうか」
哲野「もしいたとしても結論は変わらない。
   だいたい、様々な質問をしてその回答を分析して支持政党を割り出すというのが
   世論調査の常道で、いきなり支持政党はどこか、はないだろう。
   これじゃまるっきり消費者調査と一緒じゃないか。
   あなたはオートマ車が好きですか、ミッション車が好きですかという。
   選挙は消費活動とは違うんだから。
   で、どんな質問なの次は」
網野「自民、民主、維新、公明、みんな、共産、生活、社民、緑の風、新党大地、その他政党が選択肢」
哲野「投票したいところがないというのは、どうなるの?」
網野「答えない・わからないに分類されるでしょうね。」
哲野「次の質問は?」
網野「その政党に投票したいという気持ちは強いですか?強い、弱いの二者択一問題です」
哲野「僕は絶対投票するけど、こういうプロセスでは投票しない。
   頭の中で投票したくない政党の順番に並べて行って
   一番投票したくない政党から離れた政党を選ぶ。
   というと、この世論調査には絶対ひっかかってこないよね。
   この質問をつくった人はこれ、政治のプロじゃないね
   たぶん広告代理店的発想で作ってるよ」
網野「じゃ次いきます~。今度の参院選にどの程度関心がありますか?」
哲野「つよ~~~い関心がある。」
網野「ありがとうございます、次、参院選挙の結果
   自民党が公明党を含めなくても、単独で過半数を占めたほうが
   良いと思いますか?占めないほうがよいと思いますか?」
哲野「占めないほうがいいに決まってるじゃん。」
網野「ありがとうございます、次にいきます。
   自民党に対抗できる政党としてその政党に期待しますか?」
哲野「ちょっと待ってよ、自民党に対抗しようがしまいが、きちっとした政策出してくれるといいのよ、僕は。
   その質問は僕には全く答えられない質問なんだけどなぁ、問題の立てかたが全然違うから。
   こういうの、どうなるの?」
網野「たぶん、答えない・わからないに分類だろうね。はい、次に行きます。
   日本の政治に今求めらえているのは、次のうちどちらだと思いますか?二者択一です
   1・政治の仕組みを大きく変えること
   2・今より政治を安定させること」
哲野「ちょっと待ってよ!!なんでこれが政治に求められてることになるの?
   仕組みなんかどうだってよくて、要するに僕たち貧乏人が楽になる政策かどうかが問題なんじゃない?
   政治を安定させるっていうのはどういうこと?」
網野「この質問おかしいよね。どちらも本質問題じゃない。」
哲野「だんだんわかってきた。この質問の目的は、政治意識に関する調査じゃない。
   政局だよ。政局に関する調査なんだ。だから党派争いを中心にどこが権力をとるか、が関心の的なんだ。」
網野「次!安倍首相の経済政策を評価しますか、しませんか?」
哲野「しませ~~ん!」
網野「ありがとうございました。次、安倍首相の経済政策が賃金や雇用に結び付くと思いますか?そうは思いませんか?」
哲野「おもいませ~~~~~ん!
   アベノミクスはね、要するに大企業、一部金融資本が儲かる仕組みなの。
   今まではね、中間層にもおこぼれがあった。
   でも大企業も余裕がなくなってるからおこぼれなし。
   やらずぶったくり。」
網野「次。憲法は第96条で憲法を変えるためには衆参それぞれ3分の2以上の議員が賛成して
   提案し、国民投票で過半数が賛成することを必要としています。
   この第96条を変えて、衆参それぞれ過半数の議員の賛成で提案できるように
   条件を緩めることに賛成ですか?反対ですか?」
哲野「はんた~~~い!」
網野「ありがとうございます。次。
   今、停止している原子力発電所の運転を再開することに賛成ですか。反対ですか。」
哲野「ちょ、ちょ、ちょっとまって。
   この質問は要するに、原発の再稼働のことを言っているの?」
網野「うーんよくわかんないけど、そう読める。」
哲野「もう一回質問を読んで。」
網野「今、停止している原子力発電所の運転を再開することに賛成ですか。反対ですか。」
哲野「あ、わかった。今停止している、という前振りが僕を混乱させたんだ。
   要するに、停止しようが停止してまいが、原発を動かすことに賛成か、反対か、ということだよね。」
網野「あ、そっかそうだね。大飯は動いてるからね。」
哲野「なんか奥歯にものの挟まった聴き方だけど。」
網野「最初から原発は再稼働のスタンスで聞いてるよね、これ。」
哲野「停止してるのが、なんか悪いみたいじゃない。どちらにしても原発再稼働、はんた~~~~い!!」
網野「ありがとうございます、次の質問です。
   今度の参院選からインターネットによる選挙運動ができるようになりました。
   投票先を決めるとき、インターネットの情報をどの程度参考にすると思いますか?」
哲野「正確な情報はインターネットしかとれないので、100%参考にする。」
網野「それはなぜですか?」
哲野「今答えたじゃない。」
網野「いやそうじゃなくて、参考にしない、と答えた人に対する質問項目があるのよ」
哲野「なんなのよ」
網野「・ネットをあまり使わないから、
   ・ネット上にあまり役にたつ情報がないから
   ・選挙にあまり関心がないから
   の3つの選択肢があるんだけど」
哲野「この選択肢はネットを参考にしないという人のための選択肢?」
網野「うん。」
哲野「ネットを参考にする、と言う人のための選択肢はないの?」
網野「ない。」
哲野「なぜ?」
網野「朝日に聞いてよ。」
哲野「釈然としないなぁ、でもわかったことがある。要するにネットを参考にしないというよりも
   ネットを使っていない人に対して聞いた質問だね、これは。
   だってそうでしょう?使ってなきゃ参考にも何にもできないんだもん。」
網野「以上で質問は終わりです、ご協力ありがとうございました。」
哲野「今のやりとりで何分くらいかかった?」
網野「丁寧なやりとりしてなかったから、それを考えると10分なんだけど、
   哲野と私のやりとりだからスムーズだったので
   たぶん1件あたり、20分はかかるよ、これ。」
哲野「いやこれが面白いのよ。
   この世論調査の結果が一面に掲載されてるんだけど。
   まず支持政党比例区投票先で自民党がダントツ1位で43%。
   どう思う?この結果。」
網野「いやちょっと、私は厳しいと思うよ。」
哲野「それよりなにより、12年12月の衆議院選挙では自民党の全国区得票率は27.62%だった。
   それより1.5倍近い得票率を獲得するとこの世論調査は言っている。
   それじゃ前回世論調査の結果はどうだったかというと
   この記事では全く検証していない。
   実際には朝日の世論調査は自民党支持率を48%程度だと言ってた。
   この一事を見てみても、この調査は自民党を過大評価した調査だとわかる。」
網野「どうしてそうなっちゃうのかしら。」
哲野「まず有効回答が1000ちょっとしかない。
   その1000ちょっとしかない、サンプルを9000万近い有権者全体に拡大しているところが
   調査として科学性客観性に欠けるというところだろうね。
   次に仮にサンプルが1000ちょっとだとしてもそれが日本の有権者の全体を代表しているサンプルならば
   まだ信頼性があるけど、そうなってない。」
網野「どういうこと?」
哲野「調査の方法に問題がある。
   土日の昼間、に固定電話をかけてサンプルをとると
   高齢者世帯、非ソーシャルネットワーク世帯にアクセスする確率が高くなる。
   3つ目はやはり質問内容にある。
   支持政党はどこかと聞かれてなんの疑問もなしに答える層は
   民主主義社会の権利意識や投票行動の重大さの認識には欠けている層が多くなる。
   言い換えれば政治意識の低い層に偏ったサンプリングにならざるを得ない。
   だからこの世論調査で出てくる結果と実際の結果が大きく違っていることになる。」
網野「でも前回衆院選ではほぼ世論調査通りの議席獲得数になったんじゃないの。」
哲野「その通り、でも投票率が全然違ってる。
   前々回に民主党が大勝した衆議院選挙のときと比べて10%近く投票率が落ちている。
   これは自民党に入れたくない人が投票にいかなかったことを意味している。
   だから結果として世論調査と獲得議席数が一致した、というに過ぎない。
   前々回並みの投票率だったら衆議院選挙の結果だってどうなったかわからない」
網野「なぜ投票率が落ちたんだろうか」
哲野「君はどう思う?」
網野「マスコミがしつこく、結構前から自民圧勝のデカデカとした字を新聞に載せテレビで流して
   もう選挙の意味がないという雰囲気づくりがあって
   自民党に入れたくないのひとが投票にいかなかった。」
哲野「自民支持の人はどうしたと思う?」
網野「投票に行ったと思うよ。」
哲野「そう、僕もそう思う。勝ち馬に乗るのはみんな好きだからね。
   逆に自民を勝たせたくないと思った人は、他の政党に入れたか、行かなかった」
網野「他の政党?」
哲野「うん。この衆議院選挙の時に、維新の会が全国区で20%近い得票率を得ている。
   だから反自民の人は維新に入れたか、実際には投票にいかなかったひとも多いと思う。
   それが投票率全体の低下になって現れていると思う。」
網野「これじゃ世論調査ってのは世論操作だよね。それに対抗するには?」
哲野「投票に行くってことだよね。
   こないだ朝日新聞に絵本作家のおじいちゃんがでていて
   その人に、今は支持する政党がない、だからわしは行かん、棄権も立派な選択肢であると言わせていた。」
網野「ひっど~~~~い!朝日、そこまでバカなの?意味わかんないの?なんでそんなの堂々掲載するの?
   報道としてのプライドもないのかね」
哲野「いや、一部の知識人やインテリ層に対しては説得力のあるいい方ではあるんだよ。
   つまり、民主主義社会においては投票行動は有権者の義務である、という一種偽善のにおいのする言い方があって
   世の中に対して斜に構えている人たちには喜ばれるいい方ではある。
   しかし今回の参議院選挙では全く当てはまらない」
網野「そういう人たちがいるんですね。」
哲野「うん、いる。それがね、やっかいなことに文化人とか知識人とかインテリだとか言われる人に多いのよ。」
網野「投票に行く。棄権をすると自公連立政権・安倍内閣に白紙委任状を渡すことになるからね。」
哲野「まさしくその通りでございます。」