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第129回広島2人デモ 2015年5月8日報告

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みなさま

毎度毎週お騒がせしております。
第129回広島2人デモ5月8日の報告です。

待ち合わせ場所に行く車の中での哲野と網野の会話。
網野「今日もICRPだから、反応は鈍いだろうねえ。」
哲野「人間、自分が聞いたこともない、食べたこともない、触ったこともない、
   全く知識のないことには興味を抱かないことになっている。
   反応が鈍いのはやむを得ない。」
網野「だからチラシは8部にしたんだもんね。
   でもICRPは私たちとは強くかかわってるから」
哲野「そう。皆が関心がないからといって、関係がないわけじゃない。
   それどころか大いに関係がある。
   知らなきゃ、知らせればいい、という話だ。
   いつかは、ICRPが日本の社会の常識になるよ。
   それまでやりつづければいい。」
網野「それにしても、知れば知るほど、支配されてる感じがするね。」
哲野「ま、支配というか。
   中川保雄が『放射線被曝の歴史』の中で、なぜあれほどICRPに腹を立てていたのか、
   今ごろになってよくわかる。
   ICRP批判ができないようじゃ、反原発運動の看板を下ろした方がいい。」
網野「そういえば、中川保雄はICRP批判から反原発運動は出発すべきだ、と言ってたよね?」
哲野「そう。そう言ってた。
   結局、当時の状況は反原発は言うけれど、
   それを強力にバックアップしているICRP学説批判に踏み込まない、
   当時の反原発運動にも同時に腹を立てていたんだと思う。
   結局、ICRPを潰してしまわなければ、原発、核施設、核兵器はなくならないということだね。
   その事情は今でも変わらない。
   同じ広島出身だけど今中哲二や、振津かつみみたいな学者が
   反原発や脱原発運動の側からもてはやされているようじゃあ、原発はなくならない。」

てなおしゃべりをしていると、待ち合わせ場所に向かおうとするツナさんの姿が見えました。
今日はてっきり、2人きりだと思っていたので、ツナさんの姿が見えて嬉しくなりました。

3人で待っていると、警備の警察の方が来たのでいつも通り指令書を確認して時間を待ちます。
チラシを渡して、解説していると音楽が鳴りましたので出発です。

そうそう、プラカード作りに今日は苦労しました。
内容が内容だけに、プラカードになりそうなフレーズがなかなかないのです。
結局次のようになりました。

▼今日のプラカード

▼植え込みにたてたプラカード

いつのまにか、ツツジも盛りを過ぎました。

▼第129回チラシ
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150508.pdf

▼タイトル
ICRP学説に基づいてフクシマ事故の放射能影響を考えて本当に大丈夫か?

▼トピック
1.ICRP学説の基礎は広島・長崎原爆被爆者寿命調査-Life Span Study-LSS
2.ABCCからICRPへ―放射能安全神話の形成
3.低線量内部被曝影響過小評価の歴史
4.「放射能安全神話」こそ最終にして最強の砦
5.ABCCの成立
6.ICHIBANプロジェクトからDS86へ
7.ICRP勧告の変遷
8.人口動態上の大惨事に見舞われるウクライナ
9.ICRP勧告に無条件に従うポスト・フクシマの日本は大丈夫なのか?

トップバッターは哲野です。
哲野「広島2人デモと申します。
   毎回原発や被曝のことについて皆さんにお伝えして
   本通りと金座街をいったりきたりしながら歩いております。
   現在は3人で歩いております。
   3人で歩いているからといって、バカにしてはいけません。
   これでもちゃんと、県の公安委員会に『示威行進』の申請をして許可を得ております。
   3人で歩いて示威行進とは、ちゃんちゃらおかしいんですが、
   これでも公安委員会の届け出は示威行進です。

   今日のテーマは、被曝です。
   放射能汚染食品の安全基準にしろ、原発苛酷事故時の避難基準にしろ、
   放射性廃棄物と産業廃棄物の境目の基準にしろ、
   なんにしろかんにしろ、ある国際的な組織の勧告に従って
   現在様々な基準や規制が決まっていると、こういう話です。
   その国際的な組織の名前は、国際放射線防護委員会、
   International Commission on Radiological Protection、
   英語の頭文字を取ってICRPと呼ばれています。
   放射能問題に関する限り、このICRPの勧告が私たちの生活の隅々まで浸透し、
   あらゆる判断の基準になっているにもかかわらず、
   その存在や、その名前すら、知らない人が圧倒的に多いという
   一種SFチックな状況の中にいま、私たちは暮らしています。

   ICRP学説を一言で表現すれば、『放射能は100mSv以下なら健康に害がない』というものです。
   最近は言い方を変えて、『100mSv以下なら、健康に害があるという科学的証拠はない』
   となってきていますが、中身は変わりません。

   というのは、もし本当に彼らが100mSv以下で健康に害があるという科学的証拠はない、と主張するなら
   放射線被曝は無条件にゼロに近づけるべきである、と勧告するはずです。
   わからないんだから、限りなくゼロにすべき、のはずです。
   ところが実際にはそうではなく、科学的証拠はないから100mSvまではOKと主張します。
   日本の政府の中には、例えば、厚労省のように、このICRP学説に悪乗りして
   『放射能汚染食品は基準値内ならいくら食べても安全』と主張もします。

   ところが実際には、1950年代にさかのぼっても、100mSvまでは害があるという科学的証拠はないどころか
   現在の2mSvの100%外部被曝でも、人体に害があるという科学的証拠が出ていました。
   この証拠を出したのは、アリス・スチュアートというイギリスの偉い女医さんです。
   この人は、ある時、生まれた子どもに小児性白血病が多発していることに気がつき、
   その原因を調べてみたところ、妊娠中の女性にレントゲンを当てていることが原因だと突き止めました。
   様々な研究を行ってみると、妊娠初期では2mSvのレントゲン照射でも
   胎児に白血病を起こさせることが判明しました。
   彼女の研究のおかげで、妊娠中の女性にレントゲンを照射するなどという、
   およそ野蛮なことは行われなくなりました。
   この意味で、アリス・スチュアートは私たちの恩人でもあります。

   2000年代に入ると、1986年のチェルノブイリ原発事故での
   深刻な健康影響が世界中に知れ渡るようになりました。
   チェルノブイリ事故の深刻な低線量内部被曝の実態が、徐々に明らかになってきたこと、
   国際的なインターネットの普及で、報告や研究が
   直接私たちの手元で読めるようになったことなどが大きな要因かと思います。
   これら厖大な研究や報告を読むと、ICRPの主張する
   『100mSv以下では健康に害があるという科学的証拠はない』などとは全くの嘘っぱちで、
   100mSvどころか、人や状況にもよりますけど、0.5mSvでも深刻な健康影響が出ていることがわかります。
 
   証拠がないのではなく、彼らが証拠を見ようとしないだけの話です。

   一般社会ではこういう場合、科学とは呼ばず、信念と言う言葉で表現します。
   ですから、ICRP学説は科学ではなく、一つの信念、
   もう少し言えば宗教、つまりICRP教というわけです。 
   今日のチラシのテーマは、こんなICRPの勧告に従っていて
   放射能をめぐる日本の社会は今後大丈夫かいなと、こういうお話です。』

次にツナさんです。

ツナ「今日はICRP、先週もここでICRPとたくさん言ったんですが
   ICRPとはなんぞやと。
   国際放射線防護委員会。
   まるで私たちを放射能から護ってくれているような感じの名前の組織です。
   被曝防護の3原則の中で、正当化の原則といいまして、
   被曝の害、健康損傷よりも社会の便益を優先しろと言ってるんです。

   みなさん、リスクのトレードオフという言葉をご存知でしょうか。
   あるリスクを気にして、もう片方のリスクを見落としてしまうということなんですが
   このリスクのトレードオフという言葉を使って
   NPO団体の「食の安全と安心を科学する会」、
   安心を科学する会ってなんだろうって感じなんですが
   その会の理事長のヤマザキさんが
   私は事故当時から放射能で汚染された野菜を少々食べても大丈夫だ
   それよりも野菜を食べない事でがんになる、そっちのほうが危ないんじゃないかと
   わたしは散々言ってきた、というようなことを言ってたんですが
   そこでもこの人は同じように
   個人の健康を少々我慢してでも、社会経済を回すことを考えないといけないんじゃないかと
   お前らなにを我がまま言ってるんだ、という様な事を言ってるんですよ。
   要は、個人をそうやって、世の中のために犠牲になれというふうに言ってるんですが。
   本当に安全なら結構なことです。
   でも、その人も暗に害が起きるということを言ってるんですけども。
   害があるのかないのか、ということを日本政府が判断している基準がこのICRPの勧告です。

   100mSvと言う言葉は4年前はテレビでよく聞いたなぁ、
   でも最近は全然聞いてないなぁって感じじゃないないかと思うんですが
   100mSv以下の被曝ではがん以外の健康障害が起るかどうか、
   科学的には解明されていないと言ってるんですね。
   科学的に解明されていないといっても、安全であるとは一言も言っていないんですが。
   日本ではこの勧告を利用して、食品の放射能汚染基準をつくり
   基準値内ならいくら食べても安全だというふうになってしまいました。

   私たちの公衆被曝線量は年間1mSvと決められています。
   それが20mSvまでは大丈夫だということになりました。

   原発などで事故が起きて大量に放射能が放出されると
   山や、川や、町や、海が放射能に汚染されます。
   その放射能はたかだか4年では消えません。
   とりあえずは20mSvは大丈夫だと言っています。
   要はこれ、妥協です。
   安全でもなんでもないんです。

   いままで通り1mSvで、となると今の避難区域、今の広さでは済まないんです。
   今は福島県の浜通りあたりだけですが、1mSvにするとこれが拡がってしまう。
   より多くの人が生活に影響を受ける。
   被害を被る被害者になるんです。
   被害者になるから20mSvまでOKにしたんです。
   東電1社では補償なんてとても無理ですから、日本政府の都合なんです。

   福島から遠く離れたこの広島では、関係ないじゃないかと思っている人も
   いるかもしれませんが、これは他人事でもなんでもないんです。
   放射能というのは色んなルートでここに来ます。
   それにここから南西に100km進んだところに四国電力伊方原発があります。
   瀬戸内海に向かって建っています。
   もしここが苛酷事故を起こしたら、この広島市、ちょうど私たちが歩いているここも
   避難の必要があるかもしれません。

   ICRPという名前を是非覚えておいてください。
   このICRPの勧告の元になっている研究は、広島・長崎の原爆被爆者寿命調査です。
   1950年1月から始まっています。
   1949年12月末までに亡くなった方は調査の対象に入っていません。
   ですがなぜか、5年後から調査しているのに
   5年間は放射能の影響はない、
   だから甲状腺異常が見つかっているのは検査したから、
   将来甲状腺がんになる人が見つかったんだ(スクリーニング効果)と
   めちゃくちゃな理屈を言ってるんですが、それが今通っています。
   とても危ない状況です。

   本当に私たちは明確に、放射能にじわじわと殺されているような、
   そんな状況のような気がします。」

『リスクのトレードオフ』という言葉が出てきましたが、確かにご覧のように
『食の安全と安心を科学する会』が使っている言葉です。

http://www.nposfss.com/blog/trade-off.html

リスクのトレードオフは、あるリスクと、別なリスクが存在して、そのリスク同士が矛盾対立関係にあるとき、
両方のリスクのバランスを取ろうという考え方で、これ自体はちゃんとした根拠のある考え方です。
しかし、リスクのトレードオフが成立するのは、2つのリスクが天秤にかけられる場合に限ります。
2つのリスクを同一線上に置けず、天秤にかけられない場合は、当然リスクトレードオフの考えは成立しません。

今回の場合でいえば、放射能汚染食品を積極的に消費することで得られる経済的利益と、
放射能汚染食品を積極的に消費することで失われる健康を
同一線上に置き、天秤をかけることができるかどうか、という問題になります。
片方は経済的利益、片方は生命に直結する健康問題、
当然、天秤にかけることはできません。
すなわち、この場合、リスクトレードオフは成立しません。
論理的に見ても、成立しないリスクトレードオフを、あたかも成立するかのように見せかける
『食の安全と安心を科学する会』は、まがいもの、ということになります。

ところで、本来成立しない経済的利益と、健康損傷のリスクトレードオフを
成立させようとする一種の詭弁論法は、いま、新たに現れたものではありません。
実は、これは、長い歴史を持つ、古ぼけた手口なのです。

1959年、アメリカ放射線防護委員会(NCRP)は、特別委員会報告を発表し、
リスクベネフィット論を展開しました。
これは核利用による利益と、放射能による健康被害を
同一線上に置いて比較考量する『リスク受忍論』でした。
これは典型的にリスクトレードオフの詭弁使用でした。
翌1960年、成立したばかりのアメリカ連邦放射線審議会(FRC)は、
NCRPの特別報告を受けて、同じリスクベネフィット論を展開しました。
翌1961年、全米科学アカデミーはBEAR報告を公表、
なかでNCRP、FRC、と同様のリスクベネフィット論を展開しました。
いずれも、本来、天秤にかけられないリスクトレードオフを展開しています。

これら意見を受けて1965年、ICRPは65年勧告を公表、
ここでリスクベネフィット論の総仕上げをします。
そして、線量等量限度概念を打ちだして、人々に被曝の受忍を迫りますが
これもベースは本来天秤にかけられない、リスクトレードオフを展開しています。

こうしたリスクトレードオフの詭弁使用を見破ったのが、2014年5月の福井地裁判決でした。
まず、福井地裁判決は次のように述べます。
  「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、
   各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権である。
   人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、
   また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、
   我国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。」

その上で次のように結論します。
「原発は電気の生産という社会的には重要な機能を営むものではあるが、
 原子力の利用は平和目的に限られているから(原子力基本法2条)。
 原発の稼働は電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属する。
 憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれる。」

つまり、人格権と原発による利益のリスクトレードオフは成立しないと述べているわけです。
もちろん福井地裁判決は、ICRPの長い歴史を持つ
詭弁論法の変遷について知っていたわけではないと思います。
しかし、日本国憲法をベースに合理的にものを考えれば、
本来成立しないリスクトレードオフの詭弁は簡単に見破られるということでもあります。
日本国憲法、なんと頼もしい存在ではありませんか。
それだけに、安倍さんはこの憲法を変えたいでしょうねぇ。

デモ中、プラカードはよく見られました。
この哲野とツナさんのスピーチ中に、チラシを取りにきた人は3人いました。
次は網野です。

網野「広島2人デモです。原発や被曝に関して情報をお知らせする広報デモです。
   今日のテーマは被曝です。
   ICRPが、私たちの生活の中で被曝を強制していること、
   ICRPの根拠は広島・長崎の原爆被爆者寿命調査であること、
   特に広島・長崎の人は、是非読んでください。
   そして是非、このことを記憶にとどめておいてください。
   広島・長崎の原爆被爆者のデータが、世界中で新たな被曝者を生んでいる、という
   とんでもないパラドクスをぜひとも知っておいてください。
   知って、怒っていいんです、怒ってください。  

   もしよかったらチラシをお取りください。
   チラシを取るのが気恥ずかしいなぁと思う方、webでもチラシがご覧いただけます。
   広島2人デモで検索してみてください。
   毎回チラシのテーマが違っております。
   過去チラシも是非ご覧ください。

   ICRPの勧告に基づいて、日本ではフクシマ事故の避難基準は20mSvになりました。
   チェルノブイリ事故の時は、5mSvで避難でした。
   つまり、日本政府のコスト負担は、旧ソ連政府のコスト負担の4分の1で済んだわけです。
   しかし、よ~く考えてください。
   コストが4分の1になったからといって、放射能による健康被害が4分の1になるわけではありません。
   それどころか、コスト4分の1で健康被害は4倍となります。
   4倍で済めばいいですが…

   チェルノブイリの健康被害についても、ウクライナの資料をチラシに抜粋して掲載しています。
   この問題を考えていただければと思います。
   お騒がせいたしました、ありがとうございました」

元安橋に帰ってデモ終了。
チラシは結局、8部持って行って、残りは3部。
終了後、哲野がツナさんをつかまえて、是非今日のチラシの解説をさせてくれ、と
コーヒーショップに連れ込みました。
哲野は、36時間以上寝てないので、頭の中が躁状態になってるようです。
コーヒーショップでは網野を交えて、1時間半、チラシを中心に被曝問題で議論しました。

以上ご報告いたします。