(2010.7.21)
暫定委員会 関連

<参考資料> 核兵器即時使用の勧告
暫定委員会科学顧問団 1945年6月16日


45年6月1日に開かれた暫定委員会(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Interim%20Committee1945_6_1.htm>)で、大統領特別代表の資格を持つ委員、ジェームズ・バーンズ(バーンズの国務長官就任は7月1日)は「原爆の即時警告なしの使用」を主張し、委員会はこれに同意する形となったが、8人の委員全員と4人の科学顧問団全員が心底納得した訳ではなかった。この時点ではアラモゴードの最初の原爆実験(45年7月16日)前で1発の原爆も完成している状態ではない。だから「即時の使用」といっても、これは「原爆が完成し次第できるだけ速やかに」と云う意味だし、現実にも「出来るだけ速やかに」の言葉が議事録では使われている。順序がおかしいのだが、4人の科学顧問団はこの問題について統一見解を求められる。4人の間で激論があったとされるが、6月16日統一見解を出して暫定委員会に勧告する。これはその勧告の内容である。この勧告に基づき6月21日の暫定委員会(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Interim%20Committee1945_621.htm>)で、科学顧問団は正式に委員会に対して「警告なしの使用」を提言する。この文書は、「6月16日科学顧問団勧告」文書である。出典は「Nuclear Files Org.」(<http://www.nuclearfiles.org/menu/key-issues/nuclear-weapons/history/pre-cold-war/interim-committee/interim-「The Manhattan Project: A Documentary Introduction to the Atomic Age」(1991年テンプル大学出版)としている。
  また4人の科学顧問団は、エンリコ・フェルミ、シカゴ大学冶金工学研究所のアーサー・H・コンプトン、カリフォルニア大学バークレイ校・放射線研究所のアーネスト・O・ローレンス、ロス・アラモス研究所長のJ・ロバート・オッペンハイマーである。(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Interim%20Committee.htm>を参照の事。)
以下本文。


 貴殿方は新たな兵器の初期時の使用に関するわれわれの見解を求めておられた。われわれの意見では、この使用は、われわれを取り巻く国際関係の満足のいく調整を促進するものであるべきだ。同時に、われわれの国家は、日本との戦争においてアメリカ人の命を救うためにこの兵器を使用する義務があるとも認識している。

(1) この目的を達成するために、この兵器を使用する前に、イギリスのみならず、ロシア、フランス、中国にたいしても、われわれが原子兵器に関する業務に関して相当な進展を遂げていることを助言し、国際関係改善に視するこの発展を進めることにおいて、われわれがいかに協力し合うかに関する提言を歓迎するものである、と告げるべきである、と勧告する。
(2) これら兵器(原文は複数形になっている)の初期時の使用(the initial use)に関する科学顧問団の意見は一致を見なかった。:これら意見は、純粋に技術的デモンストレーション説から、降伏を導くべく最良にしつらえられた軍事的応用説まで幅があった。純粋に技術的デモンストレーション説の主唱者たちは、原子兵器の使用を非合法化したい(wish to outlaw the use of atomic weapons)とし、またもし今この兵器を使用すれば、将来の交渉におけるわれわれの立場が偏見をもって眺められることを恐れている。他方は、即時の軍事的使用によってアメリカ人の命を救うチャンスに力点を置いた。そして、そのような使用は、彼ら(軍事的使用説論者)が、この兵器の廃絶よりも戦争の防止により関心をもつと言う形で、国際的展望をより良いものにする、と信じている。

 われわれは、後者の見解により近い、ということが判明した。;戦争終結をもたらしそうな技術的デモンストレーションは奨めることができない。;直接の軍事的使用に替わる代案は受け入れられないと考えている。
(3) 原子力エネルギーの使用に関するこれら総体的な視点に関しては、われわれには、科学者として、独占権(proprietary rights)がないことは明白である。われわれは、過去数年の間、この問題を思慮深く考察する機会を与えられた数少ない市民の中の存在であることは事実である。しかしながら、われわれは、原子力の到来によって直面している政治的・社会的・軍事的諸問題を解決する特別な権能(special competence)を持つと主張するものではない。