【参考資料】ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ
 (2011.5.7)
 

<参考資料>福島原発危機:山内知也、文科省への申し入れ書 2011年5月7日
『福島の子供たちの被曝はそもそも憲法違反である』

 2011年5月7日、山内知也は5月5日に続いて文科省に申し入れを行った。中で山内は憲法13条「個人の尊重(尊厳)、幸福追求権及び公共の福祉」、第14条「平等権」、第25条「生存権と国の社会的使命」に照らして、福島の子供たちは「憲法の適用外」に置かれている、と指摘している。さらに憲法違反であるばかりでなく、放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とした「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(昭和32年法律第167号。現行法)第31条にも違反している、と指摘している。

 これら憲法違反、法律違反を犯しているのは他ならぬ文科省、菅政府なのだ。

 憲法は、国民が守るものではない。国民の権利を侵す潜在性を持った国家権力が遵守するものだ。今菅政府は憲法を侵している。

 以下5月7日付け申し入れ書全文。


2011年5月7日
児童・生徒の被ばく限度についての
申 入 書 (3)

文部科学省学校健康教育科 電話 03-6734-2695
FAX 03-6734-3794
原子力安全委員会事務局 電話 03-3581-9948
FAX 03-3581-9837

山内知也 神戸大学大学院海事科学研究科 教授

 大学で放射線を教授している者として申し入れます。

 先に2011年4月21日付け及び5月5日付けで申入書を提出いたしましたように、福島県内の児童と生徒の被ばく限度とされている年間20ミリシーベルトの基準は、子供が浴びる線量としては不当に高いものです。撤回して年1ミリシーベルトの基準を児童と生徒にはまず適用してください。

 日本国憲法は、その第13条において、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定めています。また、第14条では、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とし、第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定しています。

 すなわち、福島県の児童と生徒には他の都道府県の子供らと等しく、社会福祉と公衆衛生のサービスを受ける権利があります。

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律は、その第一条によれば「放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性同位元素によって汚染された物の廃棄その他の取扱いを規制することにより、これらによる放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的」としてつくられています。この法律の中で、放射性同位元素の取扱の制限を定めた第三十一条によれば、「何人も、次の各号のいずれかに該当する者に放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物の取扱いをさせてはならない。一  十八歳未満の者」と定めています。

 福島県の多くの学校を含む土壌汚染の高さは、この法律が定める「放射性同位元素によって汚染された物」に達しています。

 可及的速やかに避難計画や除染計画を立案・実施し、児童や生徒の被ばく量が年1ミリシーベルトを超えない措置をとって下さい。
以上