| 哲野 | 次の論点です。「平和運動を見る眼の甘さ」、これはもちろんジャーナリズムに対する批判として言っておられるんですが、ここで書いておられることは、原水禁分裂、衰退化と共に、平和運動の形骸化が進んだが、被爆者が絡む運動であるだけに、組織の運動のあり方に遠慮があった。「原水禁運動」は「善なる運動」という前提があり、記者の眼に甘さがあった、と言う風に書いて居られるんです。確か2005年の「新聞研究」に書かれておられることで、今このお考えにそう大きくは・・・。 | 
          
            | 平岡 | 変わりはないですね。 | 
          
            | 哲野 | ちょっとここをもう少し普遍化して、平和運動を見る眼の甘さ、という点で言われると・・・。 | 
          
            | 平岡 | あのね、これは私の体験から言いますと、私市長の時ですけど。小渕(小渕恵三)の前は誰だったかね?橋本龍太郎? | 
          
            | 哲野 | 橋龍ですよね。 | 
          
            | 平岡 | 橋龍? | 
          
            | 哲野 | うん。だと思う。小渕の前。 | 
          
            | 平岡 | それで小渕が死んでから森(森喜朗)になったんかな。 | 
          
            | 哲野 | そうです。それで沖縄のサミットを彼が肩代わりしたんだったと思います。 | 
          
            | 平岡 | 
              
                
                  | 毎年、内閣総理大臣が8月6日に(広島に)来ますね。その後陳情というか、要望する場を設けるんですよ。これは広島市が、総理官邸に行って、時間があれば、是非被爆者の声を聞いてあげてください、とセットするわけですね。毎年。 
 橋龍の時かな。橋龍の時に突然、被爆者団体が、「あんなものは形骸化してるから出ない」と言ってきたわけです。僕はちょっと怒ってね。こっちも一生懸命、総理官邸に行ってお願いをして、一応やる、と決まった。いいかどうかはわからんけれど、しかし、公の場で、しかも新聞記者が居るところで、自分たちの声を、要望を言うというのは、大事な事なんだから。
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            | 哲野 | 政治的意味はありますよね。 | 
          
            | 平岡 | やるべきじゃないか、と。そしたらやらん、と言うわけですよね。で、結局「そうか」とパーにしたんですよ。その年は。 
 その翌年、こんどやるっていうんですよね。小渕になったら。「理由は?」って聞いたら、あのおっさんはよさそうだからって。僕は頭に来てね。何を言うとるんかと。
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            | 哲野 | ハハハハハ。(大笑い) | 
          
            | 平岡 | 自民党よ、歴代。顔で・・・(笑いながら)、人が良さそうだとか悪そうだとか、そんなこと・・何を言うとるんかって、僕は怒ったんです。それは。 | 
          
            | 哲野 | うんうん。 | 
          
            | 平岡 | そしてね、(その年は、被爆者代表と総理の対面を)やるわけです。 
 そのことについて僕はマスコミにね、批判しろ、と。我が儘もいいところだ、と。(総理会見を)やめるのはやめてもいいんです、こんなものはね。でも又やるっていうんです。やる理由がね、今度の首相は人が良さそうだからとか、こういう事について、やはり批判をするべきだろう、と言うわけですよね。
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            | 哲野 | まぁ、「バカ殿様」化したわけですね。 | 
          
            | 平岡 | (笑う)で、(マスコミが批判)しないんですよ、これが。僕はちょっと、記者クラブに言ったんだけどね。どう思うかと、こういうのを。全然答えがない。私たちはあることを書くだけです、という。批判しない。 | 
          
            | 哲野 | 自民党政権とは言いながら、一国の総理に対する敬意はやっぱり持たなきゃいけませんね。 | 
          
            | 平岡 | (笑う)いや、ま、そりゃいい。だけどやっぱり、言うべき事はね、言わなきゃいけないよ、と。 
 僕はその時に、橋龍の、あの顔が気にいらんからと、言ってる事が気にいらん、と言ったかなぁ。「物申す会はやらない」、という。
 
 それはあんた、少なくとも組織の代表だろうと。組織の代表は、どんなにイヤな奴とでも言うべき事は言わなきゃいけないんだよと。社長の顔が気に入らないからと組合の要求を言わないって、そんなバカなことはないじゃないか・・・。だから、それは会って言うべきだよと言ったら、いや、「もうやらんのだ」、と。
 
 それで市の職員が、総理官邸に断りに行ってね、それはやっぱり・・・、誠に申し訳ない話ですからね。で、それでずっとやめればよかったんだけどね、次の年にまたやるって言う・・・。
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            | 哲野 | 今度は良さそうだから? | 
          
            | 平岡 | 
              
                
                  | (笑いながら)理由がそれだからね。そういうレベルの話でしょ、運動が。ああ、こりゃ駄目だなと思った。ま、これは一つの例ですよ。どういうかなぁ・・・理念・・或いは組織を動かしていくというような目標がなんにもない。そういう、まさしくあるとすれば・・・僕はないと思ってるんだけどね。でも、一応7団体と言っておるんだから。 |  |  
 
              
                
                  |  | 被爆者7団体は、通常次の7団体を指す。 財団法人広島原爆被爆者協議会、広島県原爆被害者団体協議会、韓国原爆被害者対策特別委員会、広島県朝鮮人被爆者協議会、広島県原爆被害者団体協議会(前掲とは同名別組織)、広島県労働組合会議被爆者団体連絡協議会、広島被爆者団体連絡会議。
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