(原文:http://www.doug-long.com/stimson3.htm )
(スティムソン日記の註)

1945年5月16日
重要決定は原爆完成まで待て



 ホワイトハウスへ行って、いつものように待たされることなく大統領に会えた。
2−30分時間を取ってくれた。大統領はいつものように好意的だった。私はしばらくいなくなるがいいかと聞いた。短い休息を取るようにという主治医の命令がでていることも伝えた。
【77歳のスティムソンは心臓麻痺の持病を抱えておりまた疲れやすかった】
 大統領は励ましてくれて、なにがあろうと行ってくれと云った。目の前には色々問題が山積しているから、その時までに間に合うように戻ってきてくれ、と私に云った。そして彼の要請でその日の話をメモランダムにして添付しておく事にした。


 (以下はそのメモである)


 親愛なる大統領

 今朝私が貴方に披露した見解の骨格(skeleton outlines)をお示しします。
1. アメリカ軍が中国本土で日本軍本隊と相まみえるいかなる企てもあり得ません。日本軍を叩く最も優れた戦略でもなければ、私の意見ではアメリカの世論が受け容れるはずもありません。そこまで深入りして戦うことは、アメリカ軍の志気を殺ぐでしょう。もしその地で日本軍を叩く必要があるなら、中国がそうすべきです。
2. 対日戦争の計画は今統合参謀本部で作成中です。【統合参謀本部は陸軍主導】中国本土でのそのような闘いでアメリカ人将兵の犠牲などを発生させずに、日本を屈服させるような適切な計画となるはずです。
3. ヨーロッパ戦線からのアメリカ軍の転進には、必要にして一定の時間がかかります。われわれのせっかちな友人が考えているほど短時間では実現できず、貴方の必要な外交努力には間に合わないでしょう。
【せっかちな友人はイギリスのチャーチル首相のこと。チャーチルはできるだけ早くソ連の首脳陣との会談を望んでおり、それは原爆の実験前になるはずだった。】
貴方が私に云われた会談(ポツダム会談)に向けての政策は、正しい、無害なものとして下さい。恐らくは今より遅ければ遅いほどわれわれは手に豊富なカードを持つことになるでしょう。
4. 私が貴方に申し上げた理由によって、私はできるだけ我が国の
空軍を温存しておきたいと思います。精確な爆撃をしますし、ヨーロッパでも立派な仕事をしています。それは可能だし、適切でもあると聞いております。アメリカのフェア・プレイの精神と人道主義に対する評価は、来るべき和平の時代にあっては、世界で最も大きい財産であろうと思います。私は同様な原則が一般市民にも当てはめられるべきであり、いかなる種類の使用にも適用されるべきだと考えています。

(以上、大統領メモの項終わり。以下日記本文)

 これは難しい問題であり、ロシアとアングロ−アメリカンの協調関係を必要とする。
ロシアは中央ヨーロッパでは、肥沃な農業地帯を主として占領した。一方アメリカは産業地帯を得た。ロシアに対して「プレイボール」を説得する方策を見出さなければならない。