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大分県の悪質な「放射能安全神話」パンフレット

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Sさま

ICRP(国際放射線防護委員会)についてご理解いただきありがとうございます。
ICRPとその学説(教義)に関する理解が肝心要になると私は考えています。
その理解が進むと、多くの私たち一般市民が放射線被曝をめぐる「ジョージ・オーウェル的世界」に生きていることがわかると思います。
「1984」は決してSFの世界ではありません。

こちらに戻ってから、例の大分県パンフレットをダウンロードし
あれ以来ずっと私のパソコンに表示させ続けています。

◆「放射線ってなんだろう」(大分県発行)
http://www.pref.oita.jp/soshiki/13900/housyasen.html

これまで私が見たこの手のパンフレット、
文科省の副読本、
関西電力の子会社が作成した学校向け副教材、
厚生労働省のパンフレット、
環境省のパンフレット・・・
どのパンフレットよりも悪質です。

たとえば

「20 胎児への影響 約100ミリシーベルト以下(しきい値)の線量では生じない」
「母親の妊娠中に、胎児が放射線を受けて生じる影響を胎児影響といいます。胎児影響は妊娠時期により異なります。」
「この中で器官形成期において最も影響を受けることがわかっていて、主な影響は奇形や発育遅延などです。また、胎児影響にはしきい値があり、約100ミリシーベルト以下では生じません。」

公式的なICRPの「直線しきい値なし仮説」(Linear Non-Threshold LNT仮説)からも逸脱した説明であり、
例を胎児と妊婦に取っているところが悪質極まりないと思います。

哲野報告
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/zatsukan/054/054-2.html
にも書きましたが、経口でセシウム137を実効線量100mSv分摂取すると体重1kgあたり約770万Bqになります。
(換算係数「1.3×10-5mSv」を使用)


<実効線量は放射能濃度に換算することができます。
 放射線核種によって、また、経口摂取か呼吸摂取かによっても放射性物質の人体に対する影響は異なってきます。従って、放射線核種の濃度および摂取形態によって換算係数が事細かに定められています。私は文部科学省の公表している「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科学技術庁告示第五号)最終改正 平成二十四年三月二十八日 文部科学省告示第五十九号 」に添付されている別表の係数を使用しました。実はこの換算係数にもトリックがあるのですが、今、それには触れません。
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/1261331_15_1.pdf

この妊婦が体重50kgだとします。
1kgあたり770万ベクレルの蓄積ですから
体重50kgでは、身体全体に3億8500万ベクレルのセシウム137を蓄積していることになります。
この厖大な蓄積でも、このパンフレットは、胎児にも母体にも影響がないとうそぶいていることになります。

いつぞや引用し、また今回報告のスライドにも引用した
バンダジェフスキーの研究を再び引用します。
◆画像参照のこと

ご承知のように、バンダジェフスキーは生後6か月未満で死亡したゴメリ地区の乳児6体を病理解剖しました。
身体の中にどれくらいのセシウム137が蓄積されているかを確認したかったからです。
この表はその6体の乳児の臓器や器官に蓄積したセシウム137を計測したものです。

『子どもたちの臓器におけるセシウム137の慢性的蓄積』
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/08.html
尚上記では英語原論文も読めます。

この表は、母体ではなく胎児に蓄積したセシウム137の総量と臓器別蓄積量です。
また、バンダジェフスキーが絶対的に正しいわけでもありません。
また、この研究では6例しか公表していません。
しかし、この研究は疫学研究ではなく、私たちに直接証拠を示す病理学研究であることが極めて貴重です。

バンダジェフスキーは別な論文で
母体の胎盤が胎児をセシウム137から守ることの出来る濃度は
胎盤1kgあたり100ベクレルだろう、と述べています。
従ってこの乳児の体内蓄積レベルは母体の体内蓄積レベルをほぼ反映したものと考えることができます。

「3 敗血症・出血」で死亡した乳児を見て下さい。
合計7578 Bq(1万Bq以内)です。

今、他の部位の蓄積(表示計測されていない)を無視して考えれば、この乳児は合計7578 Bqのセシウム137蓄積で死に至っています。

この乳児の体重を3000gと見れば、体重1kgあたり約2600Bqのセシウム137で死に至っているわけです。
先ほどの換算係数を使って実効線量になおすと


<セシウム137>1Bq=1.3×10-5mSv
<セシウム137>1Bq=1.3×0.01μSv
<セシウム137>1Bq=0.013μSv

体重1kgあたりの濃度は2600Bqですから
<実効線量>2600Bq×0.013μSv=33.8μSv

従って、この乳児の体重1kgあたりのセシウム137濃度は
実効線量に換算すると、わずか33.8μSvに過ぎません。

100mSvはおろか、また、1mSvはおろか、33.8μSvでこの乳児は敗血症で死んでいます。
信じがたい話ですがこれが事実です。

パンフレットに戻って100mSv、これはセシウム137経口摂取換算では前述のように、770万Bq/kgとなります。
恐らく、この場合、母体も同じレベルで蓄積されています。
現在の基準では完全に高濃度放射性廃棄物のレベルです。
恐らく母体も胎児も生きてはいないでしょう。

このような悪質極まるパンフレットは徹底的に批判し、
そのトリックを暴いていかなくてはなりません。

哲野イサク