【参考資料】ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ 2012.5.29
訂正 2012.9.20
2012年度版追加 2013.5.5
2013年度版追加 2014.2.10

<参考資料>原子力施設運転管理年報


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 2013年度版追加 2014.2.10
  <参考資料> 原子力施設運転管理年報 2013年度版 (2012年度実績)

 ずっと待っていた原子力安全基盤機構(JNES)の原子力施設運転管理年報平成25年度版が同機構のWebサイトに2014年1月10日付けであがっていた。平成25年度版、すなわち2013年度版は、2012年度すなわち2012年4月から2013年3月までの12ヶ月間にわたる日本の核施設の状況について報告している。公表時期は例年より大幅に遅れている。福島第一原発事故後の、日本における原子力規制行政の大幅な変更で2013年度版の公表が遅れたのかも知れない。ページ数もA4版表紙を含めて526頁とややスリム目だ。

 原子力安全基盤機構は2003年に経産省所轄の独立法人だが、これまで原子力業界のいいなりデータを公表してきた、その基本機能を果たしていないという批判が強かった。現在原子力規制委員会の『独立行政法人評価委員会』の「独立行政法人評価委員会原子力安全基盤機構部会」でその評価作業が進んでいる。JNES(Japan Nuclear Safety Organization)は5つの業務が柱とされる。これまでは経済産業省の所管だったが、以下のように所管が原子力規制委員会と内閣府となる。
1. 原子力施設の検査等~JNES法13条1項1号~(原子力規制委員会所管)
2. 安全性の解析・評価~JNES法13条1項2号~(原子力規制委員会所管)
3. 安全性の調査・試験・研究・研修~JNES法13条1項4号~(原子力規制委員会所管)
4. 原子力災害対策等~JNES法13条1項3号~(原子力規制委員会・内閣府共同所管)
5. 安全情報の収集・整理・提供~JNES法13条1項5号~(原子力規制委員会所管)
(以上「独立行政法人評価委員会原子力安全基盤機構部会」第1回会合提出資料「内閣府原子力安全基盤機構分科会について」<2012年12月内閣府大臣官房原子力災害対策担当室>による)

 2013年度版はちょうど所管が経産省から原子力規制委員会への過渡期にあたる。内容の上では規制委色はまだ出ていない。このまま電力業界(今のところまだ『原発安全神話派』)よりの内容のままなのか、それとも規制委色(原子力規制については『国際標準派』)を強めていくのか。

 どちらにせよ極めて不十分ながら、原発・被曝問題に関する基本資料の1つである。真剣にお読みになるのであれば、いったん自分のパソコンにダウンロードして閲覧されることをお勧めする。ネットからだと重すぎて自由に閲覧できない。

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 2012年度版追加 2013.5.5
 2012年(平成24年度版)を追加
 2012年度版であり、2011年4月1日から2012年3月末までを反映している。

 東電福島第一原発事故の後の状況。注目されるのは、p604の『参考資料2.放射性気体廃棄物中の放射性ヨウ素の年度別放出量』の表。要するに放射性ヨウ素(ヨウ素131が中心と思われる)の放出量だ。北海道電力原発、東北電力女川原発・東通原発、東京電力福島第二原発(当然のことだが)・柏崎刈羽原発、中部電力浜岡原発、関西電力美浜・高浜・大飯原発、中国電力島根原発、四国電力伊方原発、九州電力玄海・川内原発、日本原子力発電東海第二原発・敦賀原発と軒並み例年にない高い値を示している。例年通りの値を示したのは北陸電力志賀原発だけだ。

 管理年報の注1は「福島第一原子力発電所の事故による影響と推測される」と小さく記載しており、私もまたそうだと思う。ヨウ素131の半減期が約8日であることを考えると、以下のことがいえると思う。

 1.ヨウ素131は九州まで含め日本全体に拡散した。
 2.しかも放出は止まっておらず現在も出続けている。

 私たちは警戒を強めねばならない。 


【お詫びと訂正】

 本記事中に引用している関西電力の美浜原子力発電所、高浜原子力発電所、大飯原子力発電所から放出されているトリチウム(液体)の2001年から2010年までの誤りがあった。簡単に言えば私が一桁読み違えたのである。お粗末極まりない。正しい表を掲載して差し替えておく。大変申し訳ない。お詫びと共に訂正する。

 

 問題の箇所を平成23年度原子力施設運転管理年報から引用すると、該当箇所は「第四編 放射線管理」の中の「参考資料4.放射性液体廃棄物中のトリチウムの年度別放出量」(p602)で下記の表である。



 上記の表で、たとえば関西電力美浜発電所の2010年の欄を見ると「1.3E+13」と記入してある。「E+13」という表記の仕方はこの業界(学界)独特の表記の仕方で「1013」(10の13乗)という意味である。したがってこの年美浜発電所は1年間で、「1.3×1013」ベクレルほどのトリチウムを液体の形で若狭湾に流したことになる。「1013」は一体どの位の単位になるのかは、下記表を参照していただきたい。「1013」は十兆(10テラ)の位である。したがってこの年美浜は13兆ベクレルのトリチウムを放出したことになる。私はよく確認しないまま、これを全欄に渡って「兆」の位で計算し表を作成した、というお粗末である。

 しかしながら、この記事全体の要旨は訂正する必要はない。美浜・高浜・大飯の関電3つの発電所は2001年から2010年の間に158.5テラベクレルではなくてその10倍の1585テラベクレルの液体トリチウムを若狭湾に放出し続けていたのだから。私が考えていたより10倍も危険な原発、ということだ。

 これに伴い本文中の文章を以下のように訂正する。(訂正は赤字)


さてその「原子力施設運転管理年報 2011年度版」だが、2010年度(2010年4月1日から2011年3月11日)の間、たとえば関西電力美浜発電所は1.3×1013Bqのトリチウムを液体の形で(すなわち若狭湾に)放出している。すなわち13テラ(兆)Bqである。同じく関西電力高浜発電所は65テラBqのトリチウムを液体の形で若狭湾に、また関西電力大飯発電所は56テラBqを若狭湾に流し込んだ。つまりこの3つの原発だけで、1年間に約135テラBqの放射性トリチウムを若狭湾に流し込んだことになる。』

 同年報は2001年から2010年までの、液体の形での放出トリチウムを記載しているが、3つの原発から10年間で若狭湾に流した放射性トリチウムの総量は、1468テラBqとなる。10年間でこれだけの量が若狭湾に流れ込んだことになる。』

 私には、関西電力なり、電気事業連合会なり、原子力産業なりで働いたり、経営したり、あるいはこうした原子力発電所を受け入れている地元の人たちや、福井県やそこで働いている役人たちがどうしても正常なバランス感覚を持っているとは思えない。少なくとも「ヒトの健康」よりも「金」という、私とは真逆の価値基準を一番大切、と考えている人たちだということはいえると思う。

 以下本文




 「独立行政法人原子力安全基盤機構」(<http://www.jnes.go.jp/kouhou/>)が毎年発行している日本の核の商業利用、産業利用に関するデータ年報。原子力安全基盤機構によれば、『実用発電用原子炉施設、研究開発段階炉、加工施設、再処理施設及び廃棄施設に関する諸データをとりまとめたものです。』(<http://www.jnes.go.jp/kouhou/unkan/index.html>)ということらしい。

 日本語ウィキペィア「原子力安全基盤機構」によれば、『独立行政法人原子力安全基盤機構(げんしりょくあんぜんきばんきこう、JNES)は、経済産業省所管の独立行政法人。独立行政法人原子力安全基盤機構法により規定されている。』ということで法律に基づく独立行政法人らしい。2003年10月1日に設立された。

 業務内容は、『・原子力施設及び原子炉施設に関する検査その他これに類する業務を行うこと。・原子力施設及び原子炉施設の設計に関する安全性の解析及び評価を行うこと。・原子力災害の予防、原子力災害の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関する業務を行うこと。 ・エネルギーとしての利用に関する原子力の安全確保に関する調査、試験、研究及び研修を行うこと。・安全確保に関する情報の収集、整理及び提供を行うこと。・原子炉等規制法や電気事業法の規定による立入検査 ・原子力の安全の確保に関する業務』ということでまことに結構なことだが、実際には、

 『同機構が、原子力発電所の安全検査について、検査内容の原案を対象の電力事業者に対し事前に作成させた上で、それを丸写しした資料に基づいた検査を実施してきていることが、2011年11月になって発覚し、検査の形骸化に批判の声が噴出している。枝野幸男・経済産業大臣は、検査手法や体制に問題がある可能性が高いとして、第三者委員会を設置し調査するよう、同機構に指示した。』(同日本語ウィキ)ということで、「原子力安全」を看板に掲げた「原子力(核)利益共同体」のトンネル機関の一つらしい。

 同日本語ウィキは2つの新聞記事を根拠にあげている。『「原発検査:業者が原案 基盤機構、丸写し常態化 「合格」後、ミス判明も 」毎日新聞 2011年11月2日』、『「原発検査:資料丸写し 原子力機構、手法を検証 調査委設置へ」 毎日新聞 2011年11月5日』

 実際、2011年枝野の指示に基づいて第三者調査委員会がスタートしている。
(<http://www6.jnes.go.jp/>)

 従ってこの「原子力施設運転管理年報」も「電気事業者」の検査・報告の丸写しということであるが、それはそれで十分に参考になる。たとえば、2011年版(平成23年度版-2010年度実績。一部東電福島第一原発事故以降のデータを含む)をみると、日本の原発の放出トリチウム(三重水素)のデータが掲載されている。トリチウムは原発の通常運転で大量に発生する放射性物質である。核崩壊の時に発する崩壊エネルギーは1万8950電子ボルトと電離エネルギーはさほど大きくはないが、ベータ崩壊するので体内にはいると非常に危険である。これまで世界的には「トリチウムは人体に害がない」と印象づけるキャンペーンをおこなってきた。たとえば中部電力の『トリチウムについて』(<http://www.chuden.co.jp/resource/energy/hama_haikibutsu_tritium.pdf>)という説明書きを読んでみると、

 『④トリチウムの人体への影響は、現状の放出量であれば小さいものです。』という項目で次のように述べている。
 『トリチウムから出ている放射線はベータ線と呼ばれるものに限られます。そのベータ線は、エネルギーが非常に弱いことから、空気中を約5mm、水中(人体組織中)を約0.005mmしか進むことができません。』とか『体の外部に、トリチウムからの放射線を受けた場合、皮膚の表面で止まってしまい放射線に対する影響はありません。また、呼吸によって空気中のトリチウムを吸い込んだり、口から水に含まれるトリチウムを飲んだりした場合でも、新陳代謝などにより普通の水と同じように排出されることから、人の体に溜まっていくことはありません。』とか説明をおこない、全く細胞レベルの損傷や電離エネルギーについては触れていない。

 『水中(人体組織中)を約0.005mmしか進むことができません。』というが、人体の細胞を平均8ミクロン(100万分の8m)直径としてみれば、0.005mmも飛べば十分電離放射線の影響を受ける飛程である。(それにしてもベータ線が水中を0.005mmしか飛ばないというのは位取りの間違いではないか?)

 「トリチウムは人体に害がない」というキャンペーンに反して、世界各地の原発立地近傍でトリチウムによる健康損傷が報告されている。特に「乳児」に関する報告が多い。

 現在の放射線防護基準や体制に批判的な科学者が集まって作った「市民機構」、「欧州放射線リスク委員会」(ECRR)が2010年に公表した「低線量電離放射線の健康影響」と題する勧告では、その第9章『低線量被爆時の健康影響の検証:メカニズムとモデル』の中で『放射線損傷からがんへの進展に影響する因子』と題する別表を掲げ、「最終的ながんへの寄与」で当然のことながら「電離密度の増加」を指摘し、その主要な3つの因子の中の一つとして「トリチウムのような弱い崩壊」と、わざわざトリチウムの危険性を指摘している。

 さてその「原子力施設運転管理年報 2011年度版」だが、2010年度(2010年4月1日から2011年3月11日)の間、たとえば関西電力美浜発電所は1.3×1013Bqのトリチウムを液体の形で(すなわち若狭湾に)放出している。すなわち13テラ(兆)Bqである。同じく関西電力高浜発電所は65テラBqのトリチウムを液体の形で若狭湾に、また関西電力大飯発電所は56テラBqのBqを若狭湾に流し込んだ。つまりこの3つの原発だけで、1年間に約135テラBqの放射性トリチウムを若狭湾に流し込んだことになる。

 

同年報は2001年から2010年までの、液体の形での放出トリチウムを記載しているが、3つの原発から10年間で若狭湾に流した放射性トリチウムの総量は、1468テラBqとなる。10年間でこれだけの量が若狭湾に流れ込んだことになる。(同年報p602参照のこと。ちなみにトリチウムの物理的半減期は約12年である。私なら若狭湾で取れた魚は食べないし、水遊びもしない。近辺に住むこともためらう。関西電力は若狭湾を「危険なベイ」としてしまった。)

以下がその管理年報である。

 原子力施設運転管理年報
http://www.jnes.go.jp/kouhou/unkan/

2013年度(平成25年度)版 (26MB)
 2012年度(平成24年度)版 (32MB)
2011年度(平成23年度)版 (30MB)
2010年度(平成22年度)版 (50MB)
2009年度(平成21年度)版 (45MB)
2008年度(平成20年度)版 (80MB)
2007年度(平成19年度)版 (146MB)
2006年度(平成18年度)版 (23MB)
2005年度(平成17年度)版 (43MB)
2004年度(平成16年度)版 (32MB)