(2010.3.5)
<イラン核疑惑>関連資料

IAEA(国際原子力機関)新事務局長天野之弥の
初仕事に対するイランの反応

 2月の半ば過ぎから、IAEA(国際原子力機関)の新事務局長天野之弥が「イラン核計画をめぐり、同国には軍事目的を有した未申告の核開発活動が存在する可能性がある。」とする報告書を理事会に提出した、という報道がしきりと流れた。これに合わせるかのようにして、アメリカ、フランス、ドイツなど西側諸国の政府筋から、「イランにさらに厳しい経済制裁を課す」という、という声明も出された。日本の共同通信などは、今にも「国際社会」が「厳格な経済制裁」を実施に移すだろう、といった勢いで記事を流している。アメリカの外交問題評議会の理事長・リチャード・ハースも「もし、経済制裁に実効性がなければ、アメリカとイスラエルがイランを軍事攻撃するのは防衛的攻撃だ。」とする、論文も発表した。(「外交問題評議会理事長リチャード・ハース、対イラン戦争を呼びかける」<http://www.inaco.co.jp/isaac/back/028/028.htm>参照の事)

 私は「天野報告」をIAEAのサイトで探した。ところがIAEAのサイトは極めて平穏無事なのだ。そしてやがてわかったのだが、「天野報告」は非公開で、しかもIAEA参加各国全員に配布されたものではなかった。一部主要各国に対してのみ配布されたものだった。そしてこれら主要各国がそれぞれの国で、「独自」の見解を発表し、一部は情報リークがなされて、西側の大手メディアが一斉に書き立てるという構図なのだ。「天野報告」は昨年末にIAEAの新事務局長に就任した天野之弥の、いってみれば初仕事と云うことになる。その初仕事が、こういう「非民主的」な手法でイランを追い込んでいく、という事になるとその命運は、IAEA初代事務局長スターリング・コールの二の舞を演じる可能性が高くなってきた。(「最も危険な核兵器保有国 イスラエル IAEA新事務局長に天野氏選出の意味」<http://www.inaco.co.jp/isaac/back/025-1/025_1.htm>参照の事。)

 今回の事件「イラン20%未満のウラン濃縮」のいきさつは、「イラン核疑惑:世界を駆けめぐる不気味な戦争待望論」(<http://www.inaco.co.jp/isaac/back/027/027.htm>)の中で、比較的詳細に書いたのでここで繰り返さないが、結論的に云えば正当性はイランの側にある。エルバラダイ事務局長時代は、もともとアメリカのアイゼンハワー政権の時に「アメリカ原子力委員会」の国際版として成立した「国際原子力機関」の中立性・公正性をよく保ってきたものとして評価されよう。「新事務局長」天野は、もう一度「アメリカのための核独占国際原子力機関」時代に揺り戻そうとしているように私には見える。1950年代と違って2010年代のアメリカは見る影もなく衰えている。その世界に対する影響力は、「巨額の負債」と「不透明な財政運用」に支えられた「経済力」と「軍事力」とで行使されている。(参考資料「アメリカ経済 <参考資料>財務省証券―アメリカ国債―の保有者」<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Economy_of_the_US/05.htm>、「アメリカ連邦政府総負債の推移とGDP比率 2010年2月」<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Economy_of_the_US/07.htm>、「アメリカの軍事予算(2010年)」<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Economy_of_the_US/10.htm>などを参照の事。)

 対照的に、ラテン・アメリカ諸国、東南アジア諸国、プーチン以後のロシア、中国、ブラジルなどはそれぞれ問題を抱えつつも、それぞれ経済力を背景にした「影響力」を増しつつある。従来の「西側社会」なり「国際社会」なりが、どれほどの影響力を、これら諸国に対して持ちうるか疑問である。

 こうした大ざっぱなつかみ方をしてみた時、「イラン核疑惑」問題は、イスラエルを軸とした中東情勢を近景としつつ、「没落する西側社会」と「勃興する新興勢力」のせめぎ合いの象徴のように私には思える。こうした新興勢力諸国、そして新興勢力の後を追う「途上国」の中ではイランは圧倒的な支持を得ている。

 今回の「天野報告」と「国際社会」の対応ぶりについて、私は是非イランの反応を知りたいと思った。ところが、この件に関しては英語メディアも非常に限定されるし、日本語メディアでは、特に大手メディアではイランについて正確な情報を得ることは不可能である。(日本の大手メディアが、アメリカの国際金融資本のプロバガンダ支配の道具となっていることの証拠だろう。)

 従って私とすれば(ペルシャ語が読めない私とすれば)、東京外語大学の中東ニュース<http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html>)に大きく依存せざるを得ない。以下はその記事を幾つか並べたものである。印象としては、イランは西側社会と較べて健全で健康だということだ。云うことは云うが病的ではない。ウソやデマを排し事実を重んじている。「西側」に批判的・攻撃的であるがヒステリックではない。(イスラエルやアメリカの一部メディアこの点対照的である。)

 並べ方は必ずしも時系列ではない。俯瞰的にしようと思ったが必ずしも成功していない。

ハーメネイー最高指導者、IAEAを批判―2010年03月01日付 Jam-e Jam紙
ボルージェルディー氏:エルバラーダイー氏の方が西側諸国からの圧力に対してより抵抗を示していた−2010年02月22日付 Iran紙
ロシアもIAEA支持へ:米独仏と同一歩調―2010年02月21日付 Mardomsalari紙
アフマディーネジャード「イランは中東の先駆的存在」―2010年01月31日付 Mardomsalari紙
マーレク・リーギー、逮捕―2010年02月24日付 Jam-e Jam紙
イラン核疑惑―事態打開への日本の役割 朝日新聞社説2010年2月28日付


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ハーメネイー最高指導者、IAEAを批判―2010年03月01日付 Jam-e Jam紙

 【政治部】イスラーム革命最高指導者アーヤトッラー・ハーメネイー閣下は外務大臣、外務省関係者、ならびにイラン・イスラーム共和国在外機関駐在の大使・代表らと面会し、その中で、イスラーム革命は「反覇権主義的対話政策」という名の新たな論理・政策を国際関係にもたらしたと評し、次のように強調した。「イラン・イスラーム共和国の大使・代表らの責務とは、『反覇権主義政策』を推進すべく、高質で力強く、かつ効果的な外交を展開することである。そのためには、革命の原理とイスラーム法の原則を固持し、これらの原理・原則を臆することなく主張し続けることが必要だ」と強調した。

 同師は、「反覇権主義政策」の実践こそイラン・イスラーム共和国独自の特長に他ならないと力説した上で、「覇権主義体制においては、一方に覇権主義者が、他方に覇権を受け容れる者が存在する。しかしイラン・イスラーム共和国は、覇権主義者でもなければ、いかなる国の覇権も受け容れないことを、当初より明確に宣言してきた」と続けた。

 イスラーム革命最高指導者は、「反覇権主義政策」が世界的に見ても極めて斬新な政策であり、〔世界中の〕国々・人々・知識人らも国際関係におけるこの新たな論理に歓迎の意を表してきたと指摘した上で、「反覇権主義政策には、強力な戦略的支えが複数存在する。その一つが、イスラーム革命人民による大いなる支持である」と語った。

 アーヤトッラー・ハーメネイー閣下は、「他の革命とは異なり、イスラーム革命ではその当初より、人民の猛々しき運動が弱まることはなかった」と強調、次のように付け加えた。「〔革命から〕31年が経って、革命記念日の式典への人民の参加が減るどころか、顕著なまでに増加したような国が、他にどこにあろうか。人民の参加という支えこそ、極めて重要なのであり、イラン・イスラーム共和国独自の特長に他ならない」。

 同師は、若きイラン人研究者によるめでたき科学的・技術的進歩もまた、反覇権主義政策の戦略的支えとなっていると指摘し、さらに「人民主権の最高の顕現たる選挙への、人民の比類なき参加も、こうした支えの一つである。実際、選挙への人民の参加は、〔年を経るごとに〕減るどころが、増加すらしているのである」と述べた。

〔中略〕

 イスラーム革命最高指導者は、強力かつ効果的な外交を行うためにはまず何よりも、イスラーム法の原則と、イスラーム革命の原理ならびに思想を一点の曇りもなく信じることが必要だと指摘し、「外交では、国民としての自信を保ち、革命の原理と宗教の原則を臆することなく主張し続けながら、行動することが重要だ」と述べた。

 アーヤトッラー・ハーメネイー閣下は、革命の原理とイスラーム法の原則を堅持することがイスラーム共和国の外交にとって強みとなると指摘し、「合理的思考と共に、こうした〔革命原理への〕堅持の姿勢を保つことが、〔イスラーム共和国体制の〕強固さを〔国際社会に〕示すことになる。それはまた、〔イランへの〕敬意と〔自らの〕謙譲の姿勢を〔外交の〕相手方から引き出すことにもなるのだ」と力説した。

 同師はまた、西洋が好む概念・手法・儀礼を利用し、彼らに同調・接近することが必要だなどという誤った想像が、かつて一部に存在した〔※ハータミー政権下の対欧米融和政策を指す〕と指摘した上で、次のように語った。「こうした人々は、西洋の概念を反復し、彼らに服従すれば、われわれの〔世界での〕地位・立場が高まるなどと想像していた。しかしながら、西洋が用いるボキャブラリー・概念など、200年も前の旧態依然としたものでしかない。これに対し、イラン・イスラーム共和国のボキャブラリー・政策は〔世界にとって〕斬新かつ効果的なものである」。

外務省の政策を評価

 イスラーム革命最高指導者は、外務省のこれまでの政策を評価した上で、外交ならびに国際問題への対処において、イラン・イスラーム共和国が数々の成功を収めてきたことに触れ、次のように語った。「例えば核問題では、多くのウソ、喧噪、圧力がイスラーム体制に加えられてきたが、にもかかわらず世界の列強は自らの目的を達成することができなかった。これは、イラン・イスラーム共和国の基礎・基盤がいかに強固なものかを物語るものだ」。

 アーヤトッラー・ハーメネイー閣下は、「イラン・イスラーム共和国は、エネルギーをはじめとする平和目的に供するべく、核の知識・技術の習得を目指していることを、当初より宣言してきた」と強調、その上で「このことについて米英をはじめとする一部西側諸国、さらにはシオニストたちが垂れ流してきたプロパガンダや喧噪は、全くのでっち上げである。彼ら自身、自らが嘘をついていることを自覚しているのだ。こうした敵対姿勢は、彼らの利益を損なうことになろう」と続けた。

 イスラーム革命最高指導者はさらに、「こうした圧力にもかかわらず、イラン・イ野で自給自足が成し遂げられるよう、必要があればどこまでも、イランは進歩し続けるだろう」と述べた。

IAEAの対応を批判

 アーヤトッラー・ハーメネイー閣下はまた、国際原子力機関(IAEA)の対応を批判し、「IAEAの行動や報告書からは、国際機関である同機関が独立性を失っているケースが見受けられる」と述べた。

 同師はその上で、「IAEAは、アメリカや一部の国の影響下に入るべきではない。このような一方的行動は、IAEAや国連の信頼を失わせ、国際機関としての尊厳や威信に大いなる悪影響を与えるからだ」と強調した。』
(斎藤正道訳。原文<http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html>


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ボルージェルディー氏:エルバラーダイー氏の方が西側諸国からの圧力に対してより抵抗を示していた−2010年02月22日付 Iran紙

 【政治部】国会の国家安全保障外交政策委員会の委員長は、国際原子力機関(IAEA)の最近の報告書に関し、「この報告書は法に基づいておらず、事実にも反している。なぜなら我々は、20パーセントの〔ウラン〕濃縮作業を、書簡を通じて〔事前に〕IAEAに通告し、IAEAの査察官を〔査察に〕招いているからだ」と述べた。

 アラーオッディーン・ボルージェルディー氏は加えて、「われわれの通告を受け、アルジェリアとモロッコ両国からIAEAの査察官がイランを訪れ、イラン原子力庁長官立ち会いのもと、我々の濃縮活動について査察を行った。故に、IAEAの最近の報告書は事実に反している」と述べた。

 ボルージェルディー氏は、IAEA新事務局長〔=天野之弥氏〕がこのような報告書を提出したことについて遺憾の意を表明するとともに、次のように述べた。「IAEA事務局長は加盟各国の信頼を引きとめておかねばならないという重要な地位に位置していることを考えると、どうして天野氏がこのような報告書を提出したのか〔理解できない〕。我々の行動は全て、IAEAの監督下にあり、我々はIAEAの原則を受け容れ、自らの責務を全うしているにもかかわらず、である」

 国会の国家安全保障外交政策委員会委員長はさらに、「国会議員たちがこの報告書に不満を抱いているのも、このことが理由だ。来週、IAEAの事務局長が理事会に報告書を提出する予定であるが、同氏がこの機会を利用して、修正された報告書を理事会に提出することを、われわれは希望している」と続けた。

 ボルージェルディー氏は、IAEA新事務局長の天野氏の性格について、「私の考えでは、天野氏の報告書は政治的な方向に流れているように見受けられる。私の考えでは、〔西側諸国からの圧力に対する〕抵抗という点で、エルバラーダイーIAEA前事務局長のほうが成績は優秀だったように思える」と指摘した。』
(高山奈美訳。原文<http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20100301_131043.html>


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ロシアもIAEA支持へ:米独仏と同一歩調―2010年02月21日付 Mardomsalari紙

 『 【政治部】イラン・イスラーム共和国の平和的核開発に対する国際原子力機関(IAEA)の敵対的報告書に、米仏独が支持を表明したのと時を同じくして、ロシアも西寄りの立場を選択した。これにより、同国はまたしても、敏感な状況下においてはイランから距離をとる姿勢を示した形だ。

 このことに関し、セルゲイ・ラヴロフ氏はイランがIAEAに協力姿勢をとっていないとされる問題に対して、懸念を示した。

 AP通信の報道としてISNAが伝えたところによると、ロシア外相は「イランが自らの核計画が平和目的であることを証明する努力を怠った」とされる問題について、大きな懸念を抱いていると述べた。

 一方でその少し後、ロシア外務次官は、ロシアとしてはイランに対して厳しい制裁を発動することには反対であると発表した。

 ラヴロフ外相は、ラジオ放送「エコー・モスクワ」に対して、「我々は非常に懸念している。イランが(IAEAとの)協力に反抗的立場を示していることを受け入れるわけにはいかない」と述べた。さらにラヴロフ氏は、イランが自らの核計画を秘密裏に行わなければならない必然性はないはずだとも述べた。

 他方、ロシア外相の発言としてノーヴォスチ通信が伝えたところによると、同外相はイランとの関係において、ロシアとアメリカは同じ立場を共有しているわけではないとの姿勢を示した。

 この報道によると、ロシア外相は金曜日にラジオ放送「エコー・モスクワ」とのインタビューにおいて、「我々同様、アメリカも核不拡散体制が侵される事態を容赦するつもりはない。これは我々共通の立場であるが、しかしその達成方法という観点からは、我々が完全に一致しているわけではない」と述べた。

 さらに「アメリカとは異なり、我々にとってイランは近隣国なのだ」と付け加えた。

 金曜日、ロシア外務省のアンドレ・ネステレンコ報道官は、国連安保理は今のところイランへの制裁決議を準備しているわけではないと述べた。

 同氏は、「現在ニューヨークでは、対イラン国連安保理制裁決議の準備は行われていない。しかし、現在の状況ではこのような作業が開始される可能性がないとは言い切れない」と続けた。

 一方でフランスは、イランの核開発に対して「確固たる意思」をもって対処するよう、世界各国に向けて呼びかけた。

 AFP通信の報道によると、フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は金曜日、報道陣を前にイラン核計画に関するIAEAの報告書について言及し、「この報告書は国連安保理がイランの核計画について抱いている深刻な懸念を支持するものだ」と主張した。

 テレビ局ブルームバークが伝えたところでは、ヴァレロ報道官は、IAEAの報告書は「イランの不協力に対して確固たる対応を示すことがどの程度必要なのかを示すものだ」と述べたという。

 仏外務省報道官は、我が国の平和的な核計画に対して敵対的プロパガンダを続ける中で、さらに「ここ数ヶ月間、イランは話し合いの提案や協力要請をことごとく拒んできた。この報告書の内容に鑑みるならば、今やわれわれはパートナー各国と協力して、ここ数週間のうちに新たな措置を国連安保理で採択する以外にないだろう」と述べた。

 ドイツのウルリッヒ・ヴィルヘルム政府報道官も、IAEAの報告書はイランの核計画についてドイツが抱いている「深い懸念」を支持するものだと主張した。独政府報道官はベルリンで報道陣を前に、「イランの危険な核政策によって、国際社会はより包括的な制裁を追求せざるを得なくなった。ドイツはこの動きを全面的に支持する」と述べた。

 同氏はさらに発言の別の箇所で、「イランの核計画は軍事目的」との西側の非難を繰り返した上で、イランはIAEAとの完全なる協力を拒み、「自らの核計画の軍事的側面についての喫緊の疑問に回答せずにいる」と述べた。

 アメリカ当局もイランについてのIAEAの報告書に懸念を表明し、イラン政府に対して自らの核計画についての疑問に回答するよう求めた。

 ホワイトハウスのロバート・ギブズ報道官は木曜日、IAEAの最新の報告書は「イランが自らの国際的義務を履行していないことを示すものだ」と述べた。

 ギブズ報道官は、報道陣に対して「(米国)大統領は何度も〔国際社会との〕協調と国際的義務履行がもたらす利益について発言してきた。イランがこの国際的義務に従わないのであれば、〔悪しき〕結果に直面することになると、我々は常々忠告してきた」と語った。

 フィリップ・クローリー米国務省報道官もまた報道陣を前に、IAEAの最新の報告書ではイランの核開発について懸念が指摘されており、自らの核計画に関する疑問に回答するよう、イランに要請がなされていると述べた。

〈中略〉

 米国務省報道官は続けて、「イランが現在の路線をとり続けるのであれば、〔イランと国際社会の間の〕建設的な関係はあり得ない。アメリカや国際社会が抱いていている疑問に答えなければ、更なる制裁の圧力に直面することになる」と述べた。

 クローリー報道官は発言の別の箇所で、IAEAの報告書は「協力の提案を続けるだけでなく、追加の圧力を加えていくべき時期がすでに来ていることを示している」と述べた。

 同報道官はまた、イランに関するIAEAの報告書は「ゴムにある彼らの秘密施設は、非軍事目的の計画としては、いかなる合理性もないことを示している」と述べた。

 IAEAは12月に新事務局長として天野之弥氏が就任して以降はじめとなる最新の報告書の中で、イラン核計画をめぐり、同国には軍事目的を有した未申告の核開発活動が存在する可能性があることについて、懸念を抱いているとする指摘を行った。

 しかしこのような報告書の一方で、濃縮度20%のウラン濃縮作業は〔革命記念日前夜祭にあたる〕「ファジル10日間」に合わせてIAEAの監視の下で始まったものであり、これまでのところイランの核開発について何ら不審な点はない。

 木曜日、IAEAの報告書が非公式に同理事国に配布された。この報告書は天野之弥氏を事務局長に迎えて、エスファンド月10日(西暦3月1日)に開催される年明け初めての理事会で議題にのぼる予定だ。』
(尾曲李香訳。原文<http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html>


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アフマディーネジャード「イランは中東の先駆的存在」―2010年01月31日付 Mardomsalari紙

 大統領は、「30年にわたり、われわれは毎年、階段を一歩一歩登り続けてきた。すでに頂上は踏破した」と述べ、「神の思し召しがあれば、今年のファジル10日間は、反人間的な資本主義思想・リベラル思想を埋葬する日となろう」と語った。

 イラン学生通信の報道によると、マフムード・アフマディーネジャード大統領は「生徒イスラーム協会連合の先達たち(アーフターブ(太陽)世代)を称揚する会」に出席し、演説を行った。その中で同大統領は、次のように述べた。

〔‥‥〕30年前から40年前を思い出してみよう。当時、どのような状況だったか。イランの状況はどうだったか。預言者の道、イスラーム思想はどのような有様だったか。これに対して現在、われわれはどのようなところに位置しているだろうか。極めて単純な比較だが、明らかなのは、この30年で大いなる飛躍が科学、イラン国民の生活、さらには人類すべての生活に起きたことである。

 大統領はさらに、次のように続けた。

 40年前、アメリカの名前を聞いただけで、ヨダレが出てきた人がいた。アメリカを伝説の大国だと考える人もいた。自由、人権、民主主義というまやかしのスローガンが、彼らを引きつけていた。しかし今日、この体制は武力に訴える以外に、自らの存在を証明する手だてをもっていない。つまり、〔アメリカという〕一つの思想・文明は終焉を迎えたのだ。

 彼らは経済的な観点からも、行き詰まりに陥っている。彼らは「否定的なプロパガンダはするな」と言ってくるかもしれないが、しかし否定的プロパガンダを阻止したとしても、彼らが生き長らえることは不可能だ。政治的な観点から言っても、彼らには世界のいかなる対立を解決することもできなかった。むしろ、すべて悪化させてきたと言っていい。

 アフマディーネジャード大統領はさらに、次のように述べた。

 彼らは凋落・崩壊へと向かっている。それに対しわれわれは、強要された戦争〔=イラン・イラク戦争〕を経験し、敵〔=イラク〕によって我が領土が占領され、多くの国がわれわれに領土を放棄せよ、妥協せよと求めてきた時代を経ながらも、今や「イランは世界で最も強力・強大な国民である」と言えるまでになった。

 今日、いかなる大国も、何事かを言いたい場合は、中東で言わざるを得なくなっている。中東は今や、国際関係が形作られる中心地となっているからだ。中東は神の預言者たちが出現した地であり、世界のエネルギーと富の中心である。この地域で「最後のことば」〔=物事を最終的に決める決定的なことば〕を語る者は、世界で「最初と最後のことば」〔=最初の方向性を決定づけ、最終的に物事を決定することば〕を語ることになるだろう。イランが中東で「最初のことば」を語る存在であるのは、明らかだ。今日、イラン国民が選んだ道と理想は、〔諸国民の間に〕栄誉を生み出す方法・手段となっている。それは世界で、多くの人々によって認められている。

 大統領はまた、最近のデンマーク訪問について触れ、次のように述べた。

 ヨーロッパの某国で、〔同地在住の〕イラン人たちと面会する機会があった。そこには他の国の人たちも来ていた。私は国際関係〔の現状〕について、数名から意見を聞いた。抑圧諸国が不当な関係を〔国際政治に〕作り上げ、すべてを破壊してきた、イラン人たちはこうした状況を変えようとしているとのご指摘を、彼らから受けた。

 アフマディーネジャード大統領はさらに、次のように語った。

 かつて、われわれにはアーフターベ〔※トイレで使うプラスチック製のじょうろのこと。アーフターブで「太陽」の意〕も作ることができないなどと言われていたが、今やわれわれは、衛星〔※マーフヴァーレ。「月のようなもの」という意味〕を天に打ち上げようとしている。まだ初期段階のものだったが、われわれが衛星を宇宙に打ち上げたとき、〔世界の〕多くの諸国民が〔われわれの偉業を祝って〕お菓子を配ったものだ。しかし抑圧主義体制でいかに最先端の衛星が打ち上げられようとも、誰も喜んではくれない。

 大統領は続けて、「30年の間、われわれは毎年一歩ずつ階段を上ってきた。すでに頂上は踏破した」と述べ、「神の思し召しがあれば、今年のファジル10日間は、非人間的な資本主義思想・リベラル思想を埋葬する日となろう。世界中で、革命の花が咲き乱れる時代が始まったのだ」と語った。

 大統領は最後に、第三世代〔の若者〕に向け、次のように語った。

 今日あなた方は、先達が大変な苦労をして、比べるもののないほどの自己犠牲によって獲得した預かりものを引き受けようとしている。革命の最初の数年間、昼夜を問わず〔革命のために〕尽力した者もいた。われわれは多くの殉教者を出した。当時、自分の身の安全を顧みた者は、誰もいなかった。あの自己犠牲、あの努力が今日、あなた方に託されているのだ。』
(斎藤正道訳。原文<http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html>


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マーレク・リーギー、逮捕―2010年02月24日付 Jam-e Jam紙

【政治部】アメリカなどの支援を受けて、過去4年の間に数々のテロ行為をイラン南東部で成功させてきた若きテロリスト、アブドルマーレク・リーギーが、イラン・イスラーム共和国情報省各部隊による5ヶ月間に及ぶ諜報活動の末、逮捕された。

 リーギー逮捕の報は昨日、国内メディア、そして多くの海外メディアでもトップ・ニュースとして報じられ、我が国の人民からは歓喜の声が続々と沸き起こった。

 30歳のテロリスト逮捕の詳細を他に先駆けていち早く伝えたのは、衛星放送局プレスTVであった。同局は、アブドルマーレク・リーギーが空路でキルギスに向かっていたところを逮捕されたと報じた。その後の複数の報道によると、リーギーを乗せたドバイ発の旅客機はイラン・イスラーム共和国の領空に入るや、〔軍による〕エスコートを受け、〔イラン領内の空港に〕着陸、情報省の部隊によってリーギーと彼の率いるテロ・グループのメンバー3名がイラン領内で逮捕されたという。その後、この旅客機は通常のフライトを続けたとのことだ。

〔中略〕

情報相、リーギー逮捕の詳細について説明

 イラン・イスラーム共和国による諜報・治安活動の大手柄とも言えるリーギー逮捕から数時間後、ヘイダル・モスレヒー情報相は記者団の前に姿を現し、このテロリストの逮捕へ向けたこれまでの経緯について説明した。

 中央情報局が伝えたところによると、モスレヒー情報相はこの記者会見で、「時のイマームの無名戦士たち」〔=情報相の諜報員のこと〕が同テロリスト逮捕に向けて行ってきた諜報活動について触れた上で、次のように述べた。「今回の諜報活動は約5ヶ月間にわたるものであった。情報省の各部隊はシューシュタリー司令官とその仲間たちの殉教の後、同テロリストの逮捕へ向けた諜報活動を開始、首尾良く成功を収めた」。

 同相は、アブドルマーレク・リーギーの一部の活動がアメリカやイギリスといった国々、さらにはシオニスト体制の諜報機関の協力の下行われていたことを指摘した上で、「このテロリストは2008年6月から7月にかけて、ジブラルタル海峡を渡って欧州の某国に渡航、そこでイランで破壊活動をするようこの男に要請がなされた」と説明した。

 モスレヒー情報相は、この渡航はアメリカの協力の下、イギリスによってアレンジされたものだったと強調、「この件については、その他の注目すべき証拠も存在する。このことについては後の機会に、国民に提示することになろう」と続けた。

〔中略〕

米英の諜報機関はテロ支援をやめよ

 情報相はまた、アブドルマーレク・リーギーが逮捕の24時間前にアフガニスタンの米軍基地にいたところを撮影した写真を示し、さらにアメリカによって提供された同テロリストの身分証明書ならびにパスポートを見せた上で、「われわれは米英ならびに覇権体制の諜報機関に警告する。テロリストへの支援はやめよ」と語った。

 同相は米英、ならびに一部の欧州諸国がアブドルマーレク・リーギーを支援していたことは、情報省が得た確たる証拠によって完全に明らかとなっていると強調した上で、「アブドルマーレク・リーギーを支援した米英、ならびにその他の国々に対して、国際機関の場で法的追及を行う権利が、イランにはあるものと考えている」と述べた。

 モスレヒー情報相は、「〔中東〕地域の某諜報機関の発表によれば、リーギーはEUに加盟している一部の国々と通じており、これらの一部の国々に渡航したことがあるという」とも述べた。

 同相はさらに、リーギーが2008年の4月に、アフガニスタンに駐留しているNATO軍の司令官と面会した事実を指摘した上で、「この司令官はリーギーとの面会のなかで、『大バルーチェスターン』構想に大いに関心を示した」と明かし、「その他の情報が示すところによれば、アメリカはサルバーズ山〔?〕にあるアル・カーイダのキャンプをアブドルマーレク・リーギーに示し、イラン当局に対する一連の作戦を〔ここから〕行うよう求めたという」と続けた。

〔中略〕

過去4年間のリーギーの犯罪行為

 1384年デイ月〔2005年12月〕:リーギーは初めて、1384年デイ月7日〔2005年12月28日〕、自らのテロ集団のメンバーらとともに、イランの国境警備兵9名を人質に取り、事件への関与をアル・アラビーヤ放送を通じて発表、テロ活動を開始した。

 1384年エスファンド月〔2006年3月〕:1384年エスファンド月25日〔2006年3月16日〕、ザーボル=ザーヘダーン街道タースーキー地区で22名を殺害、これが同集団が関与を認めたテロ行為の2例目となった。

 1385年オルディーベヘシュト月〔2006年5月〕:その後、リーギーのテロ集団は1385年オルディーベヘシュト月23日〔2006年5月13日〕、バム=ケルマーン幹線ダールズィーン地区で道路を封鎖し、通行していた車両の乗員ら34名を殺害、その他多数を負傷させ、あるいは人質に取った。

 1385年バフマン月〔2007年2月〕:この集団は1385年バフマン月13日〔2007年2月2日〕にも、ザーヘダーン県ボゾルグメフル通りをパトロールしていた治安維持軍の隊員4名に銃弾を浴びせ、殺害した。さらにリーギー率いるテロ集団は同25日〔2月14日〕、革命防衛隊員らを乗せたバスをザーヘダーンで爆破、革命防衛隊地上部隊の隊員ら13名が殉教、30名が負傷した。

 87年ホルダード月〔2008年6月〕:1387年ホルダード月23日〔2008年6月12日〕、サラーヴァーンにある駐屯地で、このテロ集団によるテロ行為が発生した。その結果、イスラーム共和国治安維持軍所属の関係者や兵士ら16名が人質に取られ、うち15名が殉教した。

 1388年ホルダード月〔2009年5月〕:今年のホルダード月7日〔2009年5月28日〕、ザーヘダーンのアリー・イブン・アビー・ターレブ・モスクで発生した自爆テロは、リーギーのグループが起こしたテロ行為の中でも、最も激しいものだった。このテロで、〔預言者ムハンマドの娘で初代アリーの妻である〕ファーティマ・ザフラー閣下の死を悼む儀式に参加していた礼拝者・追悼者ら、少なくとも40名が殉教した。

 88年メフル月〔10月〕:リーギー率いる集団の最後のテロ行為が、今年メフル月26日〔2009年10月18日〕にスィースターン・バルーチェスターンで起きたテロ行為である。国境の町ピーシーンで起きたこのテロで、同州の部族長らとともに、東部駐屯所のヌール・アリー・シューシュタリー司令官やイスラーム革命防衛隊地上部隊の副司令官ら42名が殉教した。

 リーギーは過去4年間の自らの犯罪行為において、スウェーデン・ストックホルムから発信されているラジオ「バルーチの声」、「ヴォイス・オブ・アメリカ」、サウジアラビアの「アル・アラビーヤ」などを自らの宣伝装置として利用し、テロ行為のたびに、自らの関与を認める声明を出してきた。』
(斎藤正道訳。原文<http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20100302_131109.html>


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 冒頭に紹介したイスラーム革命最高指導者アーヤトッラー・ハーメネイーは再三「イラン・イスラム共和国は、そのイスラム倫理の立場からして核兵器を保有することはありえない。」と言明していることも付け加えておこう。

 最後にトリを飾って、朝日新聞のトンマな社説を一席。

『イラン核疑惑―事態打開への日本の役割

 国際社会は、イランで稼働中のウラン濃縮施設が軍事転用される可能性がある、との危惧(きぐ)を抱いている。そのイランから、ラリジャニ国会議長が来日した。議長は、2007年秋まで核問題の交渉責任者だった。

 岡田克也外相は議長との会談で、国際社会の懸念を解消するために思い切った行動をとるべきだと促した。議長はイランは核兵器を求めておらず、「信頼して欲しい」と応じた。

 国連安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国が、イランと外交交渉進めてきた。平和利用に限定するため、イランの低濃縮ウランを国外に搬出し、核燃料に加工して渡す案を示したが、イラン側はこれを受け入れていない。

 米国は安保理に新たな制裁決議をかける動きを見せている。イランが対決姿勢を強めれば、国際的な緊張が一気に高まりかねない。

 長年にわたって日本は、イランと比較的良好な関係を保ち、原油の1割以上をイランから輸入している。

 日本は現在、安保理の非常任理事国で、4月には議長国をつとめる。5月に開催の核不拡散条約(NPT)再検討会議を成功させ、NPTを軸にした核軍縮・不拡散を前進させるうえでも、日本がイランの核疑惑にどう対応するかは避けて通れない課題だ。

 イランでは、濃縮計画を加速してきたアフマディネジャド大統領と、宗教指導者との間で不協和音がある。議長は、核問題の決定権を持つ最高指導者ハメネイ師の信頼を得ている有力政治家だ。その議長を核問題交渉の責任者からはずしたのは大統領だ。

 イランには、議長の訪日を通じて日本と欧米諸国を分断しようとする意図があったのかもしれない。しかし、協議による問題解決が大事、との議長の発言を聞き流してもなるまい。国際社会の要請にこたえるよう、イランを説得する努力を倍加させたい。

 交渉による解決を探るために欠かせないのは、国交のない米国とイランの対話の促進である。

 米国にとって、イランとの関係悪化はイラク情勢の安定に悪影響を及ぼす。アフガニスタンでアルカイダを封じ込めるためにもイランの協力が必要だ。米ロ核軍縮交渉は、米国がイラン向けのミサイル防衛計画を変更したことで前進した。今後、イランの核開発への懸念が強まれば、大詰めの交渉を行っている米ロ核軍縮交渉が暗礁に乗り上げかねない。

 こうした影響の広がりを考えれば、米国とイランの仲立ち役を日本が果たす道を真剣に探るべきだ。

 イスラエルが先走ってイランの核施設を攻撃する危険もゼロではない。日米が協力して、イスラエルに自制を求めることも重要である。』
(原文<http://www.asahi.com/paper/editorial20100228.html#Edit2>