(2010.6.16)
<イラン核疑惑>関連資料

「反イラン・キャンペーン」で軌を一にする朝日新聞と国務省
日本の朝日新聞、アメリカ国務省そして外交問題評議会


 アメリカ国務省のメール・サービス

 アメリカ国務省の定期メールを購読している。(無料だから購読ではないが)

 実に夥しい数量の、アメリカ国務省のニュースや発表が入って来る。毎日ではとても読み切れない。見出しを拾い読みして、興味を惹いたニュースや国務省発表や記者会見(ブリーフィング)だけを読むことにしている。

 2010年6月12日(土)には、「ハイライト」として、「疑惑の大きいイラン大統領選挙一周年」というメールが入って来た。(<http://www.state.gov/headlines/143034.htm>)。時間を見ると午前8時配信となっているので、日本時間では12日(土)の午後8時か9時頃の配信だろう。

 見出しだけを見て、ああ、また国務省の「反イラン・キャンペーン」かと、うんざりすると同時に、その執念深さとイランを標的とするオバマ政権の覚悟の決め方に改めて舌を巻いた。

 アメリカ国務省は、一年前のこのイラン大統領選挙に大きな期待を抱いていた。当時AP電は、「現職アフマディネジャド大統領と親米派の元首相ミール・ホセイン・ムーサヴィー・ハーメネ(以下ムサビーと表記する)、ほぼ拮抗」とする予測記事を事前に世界に配信していた。

 当時、Web国際問題評論家の田中宇(さかい)は当時次のように書いた。

6月12日、イランで行われた大統領選挙は、公式発表では、現職のアハマディネジャド大統領が大差で他の候補を破って再選を果たした。だが、ミール・ホセイン・ムサビ(元首相)と、マハディ・カロウビ(元国会議長)といった他の候補者たちは、選挙に不正があったと主張して自分たちの負けを認めなかった。ムサビ候補の支持者らは、選挙のやり直しを求め、首都テヘランなど各都市でデモ行進や集会を繰り返し、警官隊やアハマディネジャド支持者群と衝突し、イランは混乱が続いている。』

 半面、不正があったとする見方を真っ向から否定する分析も米国で出ている。ワシントンポストがロックフェラー兄弟基金(Rockefeller Brothers Fund)の資金援助を受け、イランで実施した電話と訪問による調査によると、投票日の3週間前の時点で、アハマディネジャド支持者がムサビ支持者の2倍いた。これは、公表された選挙結果と同じ趨勢だ。この調査では、アゼリ人の間でもアハマディネジャド支持者がムサビ支持者の2倍いたという結果も出ており、地縁血縁から考えてタブリーズでムサビが勝たなかったのはおかしいという推察は間違いだと指摘している。

 同紙は「イランの選挙前、欧米マスコミはイラン市民の熱烈なムサビ支持をさかんに報じたが、実際にはアハマディネジャドがはるかに優勢だった」と、そもそも欧米マスコミの事前報道からして誇張だったと批判している。 (Don't Jump to Conclusions About Iran's Election)

 また、今回の選挙では「トウィッター」や「フェイスブック」といったインターネットの社会ネットワーク構築サイト(SNS)が活用された。それらを最も上手に使いこなしたのはムサビ陣営で、このネット活用術を考えればムサビが圧勝するのが自然だと、欧米マスコミでは推測されている。

 しかしワシントンポストによると、イランでインターネットを使っているのは国民の3分の1にすぎず、しかも最もネットを活用している18−24歳の年齢層は、アハマディネジャド支持者を世代別に切った場合の最大の層でもある。ネットを使う若者はムサビ支持という、欧米マスコミによくあるイメージは歪曲だと指摘している。

(トウィッターで、イランでの暴動を扇動する書き込みをしたのはイランの学生とされていたが、実はイスラエル右派系の活動家だったことが暴露されている。彼らは、諜報機関の関係者らしく「なりすまし」が得意だ) (Jerusalem Post Removes the 'Evidence' and Issues a Response on Iran Election)
(<http://tanakanews.com/090620iran.php>)


 長い引用になって申し訳なかったが、ここで田中が云っていることは、

1. 「欧米国際社会」は「親米ムサビー勝利」に大きな期待をかけていた。
2. そのセンに沿ったプロバガンダを、通信社や大手マスコミを使って世界中に盛んに流した。
3. ところが選挙結果は、彼らの予想(実は期待)を大幅に裏切ったものだったので、今度は「不正があった」というキャンペーンに切り替えた。
4. 一部メディア(例えばワシントン・ポストなど)は、もともと期待過剰だったのだ、とやんわりたしなめた。

 という事になろう。

 この時も朝日新聞が「“手作業なのに5時間で2500万開票?イランで疑問の声”」(2009年6月17日付け)など、日本の新聞、テレビは一斉にアメリカ国務省のブリーフィング通りの報道を流した。

「日本語Wikipedia「イラン大統領選挙 2009年」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E5%A4%
A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8%E6%8C%99_(2009%E5%B9%B4)>

 そういえば、上記日本語Wikipediaも「イラン大統領選挙には不正があった」という印象を強く残す書きぶりになっている。欧米のメディアの分析や報道はしっかり書いているが、肝心のイランにおける選挙結果の詳細については記述していない。

 大統領選挙詳細結果

 実際、「09年イラン大統領選挙」に不正があったのか、なかったのかと言う点だが、不正があったとは思われない。というのは、選挙2日後の6月14日に、イラン各州の選挙管理本部が別個に発表した数字を「イラン紙」がまとめて発表した数字が残っているが、これを見ると、不正選挙があったと思わせるような数字の出方ではないからだ。
(「<参考資料>イラン大統領選挙の結果」
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/obama/obama_12.htm>)


 これを見ると全土22州で、対立候補とされたムサビーがアフマディネジャドの得票率を上回ったのは「スィースターン・バルーチェスターン」州だけで、それも44%対53.5%と比較的拮抗している。

 イラン全土で見るとアフマディネジャドが63.62%、ムサビーが33.75%とアフマディネジャドの圧倒的勝利であり、ここまで「不正選挙」を詳細かつ具体的データをもって、中一日で捏造するのは、およそ不可能と考えられる。

 はっきりしていることは、イラン国民は全体として云えば、アフマディネジャドを圧倒的に支持した、ということだろう。

 しかし、アメリカ国務省はなおも執念深く1年後の今日でも、不正があったという印象を強く与えようとする。大体はっきりした根拠を示すことが出来ないのに、他国の大統領選挙に不正があった、というのは失礼な話ではある。欧米では「選挙民主主義は完全に公平に行われているが、発展途上国では怪しい。」とする先入観と偏見につけ込んだプロバガンダ・キャンペーンだ。

 そういう風に考えて、前述の国務省のメール「疑惑の大きいイラン大統領選挙一周年」は表題だけ見て、中身は読まずに自宅に帰った。


 国務省そっくりの朝日記事

 翌朝起きて朝日新聞6月13日(日)付け第4面(国際版)(第10版)を見て、ちょっと驚いた。

 「イラン政権 内憂外患」の横見出しのもと、「改革派市民の抵抗」「安保理制裁採択」というサブ見出しとともに、「大統領選から一年」と縦見出しをつけた大きい記事がでている。

 「ちょっと待て。これはどっかで見たぞ。」とすぐに前日受け取ったアメリカ国務省のメールを思い出した。

 【ワシントン=望月洋嗣】特派員の記事も別個に掲載され、「選挙“正統性ない”」の見出しのもと「米国務次官が明言」として次のように書いている。

米国務省のクローリー次官補は11日(金)の記者会見で、昨年のイラン大統領選挙について「正統性はない」との見方を示した。オバマ政権はこれまで、大統領選挙に伴う政権側の暴力を非難してきたが、選挙の正統性については明言を避けてきた。(これは、明白なウソである。国務省のメールを読む限り、ウンザリするほど不正があった、といってきている。) クローリー氏は「我々は、選挙はイランの人々の意向を反映していないとの結論に達した」と述べた。』

 6月12日付けの国務省のメールは、確かクローリーの名前ではなくて、国務長官ヒラリー・クリントンの名前だった、と思って探したら、やはりクリントンだった。クリントンの声明は次のように述べている。
(<http://www.state.gov/secretary/rm/2010/06/143033.htm>)


 クリントンの声明

「イランの疑惑の大きい大統領選挙から1周年」
 ヒラリー・ロドハム・クリントン 国務長官 ワシントンDC
 2010年6月12日

 イランの人々は、昨年、その政府がイランの人々の自由で公平な選挙を否定したと結論した時、数千のイラン市民は街頭にあふれて、平和的に抗議しました。イラン当局は市民の説明要求や透明性要求に対して、暴力、恣意的な緊張緩和、疑わしき裁判、そして脅迫をもって答えました。

このクリントンの描写の特徴は、具体性に欠けていると言う点である。たとえば、具体的に見ると、ムサビーは護憲評議会に対して選挙に不正があったと何回も抗議しているが、イラン国営テレビはアフマディネジャドだけを登場させた、と指摘するだけで、どこの選挙区でどんな不正があるとは指摘できていない。
たとえば<http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/KF19Ak02.html>) 

 また現実問題として、選挙は22の州で独立した選挙管理本部が設定され、最大の州ホラサン州で2967箇所の投票所、エスファハーン州では2280箇所、中規模のハメダーン州でも1211箇所の投票所が設置されてそれぞれ地元が独自に開票している。ここで不正があったとすれば、ムサビーは護憲評議会に対して具体的な事実を一つぐらい指摘できたはずだ。また1年前のデモだが、西側の報道では数万のテヘラン市民が街頭にあふれ、口々に選挙の不正を糾弾した、という書きぶりだったが、実際はクリントンがここで書いているように、数千人の規模だった。クリントンの描写は、いちいち反論できないほど、具体性に欠け、文学的ですらある。)

 1年後、多くの政治的囚人が牢屋で苦しみ続けています。あるものは自分の意見を述べただけで死の宣告に直面しています。イランにおけるその他の市民社会の活動家は、投獄こそされていませんが、しかし彼らは別な形の迫害に当面しています。過去何年にもわたって、イランの実績のあるジャーナリスト、学者、活動家のほとんどは選択の余地なく、故国を離れなければならない、と感じています。

 イラン政府の基本的自由の否定や、イラン自身も属している国際条約やイラン憲法で保証されている市民の権利の否定は、幅広い国際的な非難を招いてきました。オバマ大統領がノーベル平和賞を受けた時に述べたように、すべての自由な人々と自由な国家にとって我々が生まれながらにして持っている普遍の権利を追求する平和的な改革運動の側にしっかりと立つのは、その責任であります。

アメリカ自由主義のイデオロギーの展開である。クリントンは自由を云うが、平等には触れない。事実上国民全体の1/3が適切な医療制度の枠外に置かれ、貧しい家庭に生まれた子供たちが、高等教育を受けるチャンスは、軍隊に志願して自分の命を掛けものにする以外には道がないアメリカ社会に、どんな“貧者”の自由があるというのか?人間生来の権利は、まず平等である。すべての人間にとっての平等の機会である。「特権クラブ」だらけのアメリカでは、クリントンのいう自由は“強者の自由”あり、“富裕階級”の自由である。
 大体、大統領選挙に民主党と共和党という金持ち政党の候補しか事実上立候補できないアメリカにどんな政治上の自由があるのか。すべての自由は、平等の原則の上に立てられるべきである。平等の原則が貫徹されない限り、その“自由”は、幻想である。アメリカの民主主義はもともと幻想の上に成り立っていた。建国の父たちの多くは、初代大統領ジョージ・ワシントンを含めそのほとんどが、奴隷所有者だった事実を想起すべきであろう。クリントンの主張は、「神話」と「幻想」の上に成り立っている。)

 アメリカ合衆国は再び、イラン・イスラム共和国の指導者たちに、彼ら自身の人民に対して負っている彼らの義務と国際社会に対して負っている義務を、市民の尊厳と権利を尊重することにより、またイランの国際的義務を完全に履行することによって、守ることを要求するものです。われわれはまた、収監されている人権の擁護者すべての即時釈放を求めます。こうした人たちの中には、シバ・ナザル・アハーリ、ナルジェ・モハマダイ、イマッド・バグヒー、クフヤル・グダルザイ、バハレン・ヘダヤット、ミラッド・アサディ、マフブーブ・ハラミ、といった人々を含みます。我々は、イラン当局に3人のアメリカ人ハイカー、何らの容疑もないのにほぼ1年間も留置されているアメリカ人の釈放を求めます。また2007年にイランで忽然と姿を消したロバート・レビンソン氏の状況に関する情報を提供することを求めます。

私はここに指摘されたイラン人やアメリカ人がどういう人たちなのかを判断する材料を全く持ち合わせていない。ロバート・レビンソン=Robert Levinsonについては、辛うじて彼がもとFBIのエージェントであり、その後フロリダで私立探偵となり、なぜかイランで死んだと見なされている人物だ、ということを知っているだけだ。
http://pibillwarner.wordpress.com/2010/04/20/robert-levinson-
former-fbi-agent-turned-private-investigator-in-florida-feared-
dead-in-iran-he-was-working-for-british-american-tobacco-bat-
batuke-cigarettes/>

 だが、ごく一般論として、その国ごとに法体系があり、また慣習や考え方の違いがあり、その上にその国の主権がある。クリントンの主張は、アメリカの法体系や考え方で他国を断罪している。傲慢というべきだろう。アメリカ人の3人のハイカーやレビンソンが犯罪者やスパイであったかなかったかは、アメリカが決める問題ではなく、イランが決める問題だ。それに納得できないなら、最初からイランに入国しなければいい。例えば、日本におけるアメリカ兵の犯罪事件のうち、1970年1月から1971年12月の2年間の間、2424件だった。そのうち日本はほぼ3/4にあたる1822件について、日本側は裁判権を放棄している。これは恐らく、裁判権放棄の約束が日本とアメリカの間に存在しているからだろう。アメリカが日本側に裁判権放棄を要求しているのは、恐らくここでクリントンが主張しているものの考え方、現地の法体系や裁判制度はまったく眼中におかないという傲慢な考え方に根差していることは明白だ。<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/US_JP_ST/05.htm>)

 アメリカは、イランに対して相互尊重と相互互恵の基盤の上に、交渉による対話的解決追求の道をあらゆる問題に関して深く関わって行くことを再確認するものであります。しかし、我々は、基本的人類の自由の防衛を、また普遍的権利の実施を追求する世界に対しての支持を、声を大にして叫び続けるものでもあります。』

 テヘラン特派員北川学の書きぶり

 核攻撃の可能性を名指しで行いながら、対話への道は開いているとは恐れ入った心臓だが、ここまで執念深くイランにウラン濃縮を断念させたい、アメリカの基本的原子力戦略については、また詳細に検討しなければならないだろう。
( 「核の威嚇」政策に沈黙を守るヒロシマ・ナガサキも参照のこと
<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/zatsukan/008/008.htm>)

 やや長いクリントン声明の引用になったが、冒頭に引用した2010年6月13日付け朝日新聞「イラン政権 内憂外患」と題する記事は、このクリントン声明の論調とそっくり同じなのである。

 ワシントンの特派員望月洋嗣の囲み記事は冒頭に引用した。しかし、この記事本体の書き手は、テヘラン特派員北川学の署名入り記事である。冒頭のリード記事だけ引用しよう。

 『 大規模な反政府デモを誘発した昨年のイラン大統領選挙から12日で1年を迎えた。アフマディネジャド政権の正統性を認めない「改革派」の動きは封じ込められているが、市民の抵抗は続いている。核開発をめぐる国連安全保障理事会の追加制裁決議も採択され、政権は「内憂外患」状態だ。体制維持のため、国内引き締めをさらに強めると見られる。』

 記事の中身は、「改革派」がWebサイトを通じて呼びかけた抗議活動の話、昨年の大統領選挙の候補者ムサビー(元首相)とキャルビー(元国会議長)がデモ行進を企画したが、内務省の許可が出ずに中止に追い込まれたこと、国連安保理の追加制裁のこと、「イランは制裁回避のため、低濃縮ウランを国外に搬出する案を示したが、拒絶された形」になったこと。「」内は記事からの引用だが、大うそである。
「イラン、トルコ、ブラジル核燃料取り引きに合意」
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/iran/04.htm>を参照の事。)

 強硬意見に押されたアフマディネジャド政権がさらに頑なな姿勢に転ずる可能性がある、こと。
この可能性は北川の推測、としか読めない。ならば、根拠を示さなければならない。でないと、アメリカ国務省、日本の外務省のブリーフィングを丸写ししたな、ということがバレてしまう。)

 イラン政府がガソリンや小麦粉などの国内価格を低く抑えるため、年間1000億ドルの補助金を投入しているが、これらの補助金は段階的にカットされる、ために物価が値上がりし、国民の不満に直結すること。

イランの物価上昇は、こうした要因ではない。急速な経済成長のためだ。IMFの推測では、2008年国内総生産は対前年比約6%伸び、世界経済が縮小した2009年ですら、対前年比4%伸びている。IMFは、2010年から2013年まで年率3−4%の割合で伸びると予測している。物価も上がるが、インフレという事態にはほど遠い。<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/world_data/GR_IMF.htm>参照の事。)

 こうした状況を、政権は改革派を標的とすることで乗り切る構え、であること。

 記事全体の流れは、「内憂」(改革派の揺さぶり)「外患」(国連安保理の追加制裁)で、青息吐息のアフマディネジャド政権が、「改革派」を標的にして、強硬路線をとりつつ乗り切ろうとしている、という一種の観測記事だ。

大体折角テヘランに常駐しているのに、北川はこれまでイラン政府要人に直接取材した形跡は一度としてない。)


 国務省と外交問題評議会の願望
 アフマディネジャド政権の崩壊、親米政権(朝日新聞のいう改革派)の樹立、これこそがアメリカ国務省の描いているシナリオだ。チェコやウクライナで起きた「民衆革命」のイラン版である。
今日ではチェコのビロード革命やウクライナのオレンジ革命にはCIAの資金投入と人的てこ入れがあったことが明らかになってきている。)

 朝日新聞は、アメリカ国務省の書いているもっとも望ましい「イラン・シナリオ」に沿って、紙面作りを行っている。だから、朝日新聞の観測はあたった試しがない。

 昨年の今頃、朝日新聞の記事は、国民の支持を失ったアフマディネジャド政権は民衆の支持を受けた「ムサビー改革派」に大統領選挙で敗れ、イランは急旋回してオバマ政権と握手する、またオバマ政権もそうしたイランに好意的だ、という論調で盛んに記事を書き飛ばしていたものだ。

 「アフマディネジャド政権の崩壊」は実は、オバマ政権やアメリカ国務省の願望だけではない。

 外交問題評議会・理事長、リチャード・ハースの願望でもある。リチャード・ハースは2010年2月、「一つの力だけがイランを止められる:それはイラン人民だ」と題する論文を書いた。

http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/columnists/
guest_contributors/article7024065.ece
>)

 その内容は、タイトルから受ける印象とは違って、09年イラン大統領選挙で、アフマディネジャド政権が倒れると期待していたが、そうならなかった、今年2月の「イラン・イスラム革命記念式典」で、大規模な反政府デモが起こり、これがアフマディネジャド政権を倒す、と期待したが、これも不発に終わった。もうイランの「改革派の反政府運動」にも期待できない、残る手段は、イランと戦争をするかあるいは、イランの「核開発計画」を受け入れるか、のどちらかだ、とするなかなか過激な内容だった。
http://www.inaco.co.jp/isaac/back/028/028.htm>)

 ハースは今年の「イラン・イスラム革命記念式典」における反政府デモには相当期待をかけていたようで、あるいは、チェコ共和国の「ビロード革命」やウクライナの「オレンジ革命」の時のように、CIAが相当なてこ入れをし、その好感触を事前に得ていたのかも知れない。
 というのは、欧米メディアはイランの反政府運動に、「グリーン運動」と名付けて民主主義勢力による独裁政権打倒運動のイメージを広めているからだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Green_Movement>)

 朝日はプロバガンダ・ジャーナリズム
 ハースはイランに対する経済制裁に効果がほとんどないことを率直に認めた上で、次のように書いている。

 このことは(経済制裁に効果がないこと)われわれに政策体制の変更をもたらす。聖職者による支配(これはイランがイスラム聖職者を最高意志決定機関にしていることを指す)に対する抵抗はこれまで長い間、存在し続けている。6月12日(09年6月12日)の詐欺的な選挙(イラン大統領選挙)の破壊的な混乱の後、この抵抗は劇的なまでの高まりを見せた。「グリーン運動」が最高潮に達し、彼らの勢力がますます伸張すればするほど、抗議に対する抑圧も激しさを加えていった。「グリーン運動」こそは政府に対する深刻な挑戦なのだ。
昨日(2月11日。すなわちイラン・イスラム革命記念式典当日)、イラン政府はその優勢さを維持しようとする決意のさらなる証拠を示した。イランの支配者たちは、威しを突きつけ、反対者を逮捕し、インターネットのアクセスを遮断し、警棒をふるう暴漢どもを配置したのである。』

 もうお気づきだろう。ハースの描き方は、冒頭に紹介したアメリカ国務長官、ヒラリー・クリントンの描写とそっくりなのだ。また、朝日新聞テヘラン特派員北川学の描写とも類似性が大きい。

 アメリカ国務省は、イラン大統領選挙1周年に際して、大々的な「反イラン・キャンペーン」を張った。日本の朝日新聞は、これに呼応するかのように、ほぼ国務省のシナリオ(願望)に沿った記事を、テヘラン特派員北川学を使って書いた。

 そして私たちは、朝日新聞と外交問題評議会の親密な関係を知っている。
例えば、<http://tokyo.usembassy.gov/j/amc/tamcj-activities.html> 、
http://www.asahi.com/shimbun/sympo/091015/>、
http://www.asahi.com/shimbun/sympo/081201/>、
http://www.jcie.or.jp/japan/pep/n94/i07.htm>、
http://blog.goo.ne.jp/taraoaks624/e/dde7f0a571753c859f457
a9a35d69faa
>などを参照の事。
ついでに<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/CFR/Daily_Briefing_
2010_1_5.htm
>も参照の事。)

 直接証拠はない。しかし、朝日新聞がアメリカ外交問題評議会、アメリカ国務省の日本におけるプロバガンダ・ジャーナリズムである、状況証拠は山ほどある・・・。