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川内原発再稼働を止める方法ー諦めませんぞ

川内原発再稼働を止める方法-諦めませんぞ

ある日、訪ねてきた人と会話の中で、川内原発再稼働を止める方法がないか、と問われてその人(Aさん)が困ってしまった、という話。

哲野「ありますよ。簡単ですよ。
  鹿児島県民一人一人に川内原発の再稼働がいかに危険で、
  経済合理性に欠け、県民の健康を細胞レベルで蝕んでいるかを
  科学的に理論的に、またわかりやすく説明し説得すればいいんですよ。
  確かに県民の中では、川内原発再稼働から直接の利益を得てる人もいるでしょうが、
  そうですねえ…95%の人は理解さえすれば、川内原発再稼働に反対するでしょう。
  川内原発再稼働は一発で潰れますよ。
  それでも再稼働を強行すれば、そうですねえ…ま、暴動が起るでしょう。
  それ以前に、伊藤鹿児島県知事も県議会議員も全てリコールにあってクビになっちゃうでしょう。
  簡単ですよ。」
網野「バカね。どこが簡単なのよ。
  それができれば広島だって伊方原発再稼働反対の署名が1万人以上集まっとるわ!」
哲野「そ。簡単じゃあない。不可能に近いくらい難しい。」
網野「でもさっき簡単だって言ったじゃん!」
哲野「いや、方法論を問われたから、方法を説明した。
  方法論とすれば極めて単純で簡単。」
網野「そんなの詭弁じゃない」
哲野「真実は一見矛盾と見える事象の中にある。」
網野「なによそれ。今問題になっているのは、現実に川内原発再稼働を止める方法のことよ。」
哲野「そう。Aさんが問われたのも、川内原発再稼働を止める方法だった。
  その質問をした人も現実の方法を聞いてきたのでAさんも困ったんだろうね。
  しかし、現実にも川内原発を止める方法は鹿児島県の人たち、九州の人たち、
  日本全体の人たちに向けてこのやり方を展開する以外にはない。
  この方法論を回避したまま、何かいい方法はないか、とその人は
  Aさんに聞いたんだろうね。きっと。」
網野「その人は、簡単に言えば、王道を回避したまま何かいい方法はないか、と聞いてきたことになるな」
哲野「そ。例えば、デモで大勢集めれば止まるんじゃないかとか、
  或いは川内原発を人の鎖でつないで話題を作ってマスコミに書かせるとか。
  あるいは有名人をズラッとそろえて、説得していくとか。
  たぶんそんな事を考えているんじゃないだろうか。」
網野「2012年、大飯原発再稼働の時を思い出すね。
  首相官邸前に、十数万人の人が集まって盛り上がったこともあったけど、結局止まらなかった。」
哲野「あの時、僕が何と言ったか覚えてる?」
網野「今のままでは100万人集まったって原発は止まらない、と言ってた。」
哲野「そ。そう言って随分怒られたことも覚えてる。」
網野「なぜその人は、王道を回避したかったんだろうか?」
哲野「色々考えられる。王道を知らないのかもしれない。
  あるいは知っていても、絶望的なまでに困難だからそれ以外の近道はないかと考えたのかもしれない。
  あるいは、本気で川内原発再稼働を止めようとは考えてなくて、世間の注目を集めることが目的だったのかもしれない。
  それはわからない。
  しかし、そのどれにしろ、王道を歩くことを最初から放棄してることには変わりがない。」
網野「王道を歩くことは実は実現するかしないか以前に、色んな困難があるよね。
  例えば原発の危険を論理的に科学的に説明するといったって
  それは既存の原発に関する様々な学問的知見を打ち破っていくことだし、
  経済合理性に欠けていることを説明するためには、その証明が必要だし、
  一番難しいのは原発そのものが人間の健康を細胞レベルから蝕んでいくことを科学的に説明することかもしれない。
  考えてみれば、王道を歩くといったって、その一歩を踏み出すこと自体が本当に難しい事だね。」
哲野「そうなのよ。王道の第一歩、や0.01歩ですら難しい。
  そのために僕たちがどれほど勉強、研究しなければならないか。」
網野「そうだよねえ。人を説得するには内容を持たないといけない。」
哲野「そ。『原発反対、子どもを守れ』じゃあ誰も説得できない。」
網野「ま、それが有効になるのは、原発の危険や経済合理性のなさ、
  放射能の危険が一般社会の共通認識になっている場合だね。」
哲野「うん。そうだろうね。
  残念ながら日本の社会はまだその段階に至っていない。」
網野「話をもとに戻すけど、じゃどうしたら川内原発の再稼働を止めることが出来るのか。
  結局不可能ってことになりはせんか」
哲野「そうはならない。王道が何か、はっきりしてくれば、
  あとは努力と時間の問題だろう。
  王道を回避する方法では、努力は努力じゃなくなり、問題は時間の問題ではなくなる。
  王道がはっきりしていれば、その道を歩みはじめればいい。」
網野「でもそんな悠長なことしてる間に、川内原発が再稼働するかもしれないよ。」
哲野「第一の川内原発は動くかもしれないね。
  第二の川内原発も動くかもしれない。
  第三の川内原発も動いちゃうかもしれない。
  でも、それが王道である限り、第N番目の川内原発は確実に止めることができる。」
網野「第二、第三と動いた時に、もう駄目だと王道を外れる人が多くならないだろうか。
  諦めてしまわないだろうか」
哲野「ところがどっこい、王道を理解した人には『諦め』は存在しない。
  つまり、王道を歩む限り、理解者は増えて行きこそすれ、減ることは絶対にない。
  それが王道の強みだ。
  たとえば君や僕だ。2人きりになったって、反原発運動続けるだろう?
  君、諦めるかい?」
網野「いや全く。そんな気すら起こらない。」
哲野「何故あきらめないの?」
網野「だって、自分の命にかかわるんだもん。
   自分の命を守るためにやってるんだもん。
   いわば正当防衛行為だよね、これは。」
哲野「だろ?俺だってそうさ。俺の場合はもう、67歳だから、ま、この先長くはない。
  でも、子どももあるし、孫もいる。
  彼らのためには諦められないよね。俺だって正当防衛だ。
  だから、君が言うように、時間がかかるから諦めちゃう人が増えるんじゃないか、ということはないと思う。
  逆になぜ君がそう思ったのか聞いてみたいね。」
網野「訂正するわ。王道を入った人は人は諦めない。
  『もう駄目だと王道を外れる人が多くならないだろうか。』と言ったけど、
  諦める人は元々、王道にいなかった、ということだね。」
哲野「ま、簡単に言えばそうだね。
   例えば、福島原発事故から4年、反原発運動は下火になっている、あるいは福島の経験はいま風化しつつある、なんていう人が結構多いだろう?それ、僕たちの実感から言うと、全然真逆だよね。じゃあなぜ、下火になっている、風化しつつあるなんてことを言うんだろうか。」
網野「表面見える活動、デモとか抗議行動とかでしか、判断してないからじゃないかな」
哲野「ま、それに、マスコミ報道の頻度や中身が、反原発運動のバロメーターだと勘違いしているからかもしれない。
  マスコミ報道の頻度や中身が反原発運動のバロメーターであれば、マスコミを操作することによって反原発運動も操作できることになる。
  そんなバカなことはない。操作はできたとしても、
  それは見せかけの反原発運動は操作できるかもしれない。
  しかし、王道を歩く反原発運動はどうやったって操作できるもんじゃない。
  それは最近我々が色んな人達と新たな接触を持ったり、情報交換をしたり、
  話あったりする中で反原発運動のうねりは、着実に拡がり、
  大きくなっていること、これは実感じゃないかい?」
網野「そうだね。わかった人はじわじわと増えてきた、というのが実感だね。
  そういう人たちは、自分自身の運動をそれぞれ着実に闘っている。」
哲野「僕もそれが実感だ。僕たちも僕たちの運動を地道に続けていくことが今一番重要だと思う。
  警戒しなければいけないのは、自分たちが本当に王道を歩いているかどうか、
  外れてはいないだろうか、ということだよね。」
網野「地道にやりますか」
哲野「そ。別に焦ることはないよ。」

という話になりました。
考えてみれば、何の変哲もない話ですよね。
でも、今日哲野と2人で事務所の近くを流れる天満川を見ると、その岸辺の風景が、厳寒のこの時期で、冷たい澄んだ空気の中でしか見られない、はっとする美しさだったので、私は広島という街が大好きだ、と言うと、哲野も俺も大好きだ、と答えたことを思い出します。喪いたくない、というのが実感です。

諦めませんぞ。