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九州電力川内原発1号機工事計画認可

九州電力川内原発1号機工事計画認可

網野:川内原発1号機の工事計画が認可されたね。

哲野:そうだってねえ。あれ、いつの規制委会合?18日だっけ?

網野:そ。18日の平成27年度第63回規制委会合で正式に決定された。

▼平成27年第63回原子力規制委員会 会合
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/00000008.html
▼資料1「資料1 九州電力株式会社川内原子力発電所第1号機の工事の計画の認可について(案)」
http://www.nsr.go.jp/data/000100678.pdf

哲野:新聞がどう書くかと思ってね。

網野:どういうこと?

哲野:いや、原子炉設置変更許可審査書案が出た時、本チャンの原子炉設置変更許可審査書が正式に下りたとき、『事実上の合格』『川内原発再稼働決定』『年明けにも再稼働』とさんざん書いておいて、今度1号機の工事計画認可はいったいどう書くんだろう、そう思ってね。

網野:明日にも再稼働か?とでも書くんだろうか

哲野:これ、今日の朝日新聞。さすがに記事の扱い、ちっちゃいよね。

哲野:見出しは、『川内運転再開「7月上旬」』『8月に営業運転』。さすがに、今回は小っちゃく九電目標と入れてある。
去年伊藤鹿児島県知事が川内原発再稼働に同意したときの翌日の記者会見の記事、覚えてるかい?

網野:覚えてるも何も。

▼朝日新聞(大阪本社版)2014年11月8日14版1面

哲野:この時は川内原発の再稼働は『年明けにも』と見出しを打っている。読者は、「あれ~?」と思うだろうね。伊藤知事が再稼働同意をしたときには、これは無効の同意宣言だけども、年明けにも再稼働なのかと思っていたら、年が明けても再稼働しない。なんや聞きなれない工事計画認可が取れたら今度は8月に営業運転(正式再稼働)というんだから。具体的になればなるほど、再稼働は遠くなっていく。

網野:どうしてこうなるんだろうか。

哲野:そりゃもう、はっきりしてる。朝日新聞に限らないけど、日本のマスコミは電力会社、経済産業省からの情報を基に記事を作ってるから。

網野:そりゃそうだろうけど、でも、裏は取りに行くでしょ。

哲野:そりゃ原子力規制委員会に問い合わせれば、あるいは問い合わせなくたって資料を読めば電力会社や経産省が言ってることが、根拠に乏しい希望的観測だってことは一発でわかる。だって、広島にいて、一歩も外にでない僕たちだってわかるくらいだもん。

網野:じゃ、あれ?裏とってないってこと?

哲野:2通り考えられる。一つは、ちゃんと裏をとって、わかってて記事を書いている。二つ目は、裏もとらないで、電力会社や経産省の言う事をそのまま書いている。

網野:うーん、これ、二つ目のほうかもしれないなぁ。

哲野:そうも言えない。なにしろ、日本の新聞社は頭のいい奴が揃ってる。彼らがそんなポカをするとは考えにくいね。

網野:じゃ、それはどういうことになるの。

哲野:新聞が報道機関ではなくて、宣伝機関として電力会社や経済産業省に上手く使われている、ということになる。今日の記事だってそうだよ。よく読んでごらん。
 この記事を読むと、「九州電力は1号機の再稼働を先行して行う。」と書いてある。1号機を先行させるか、同時にやるか、それは九電の勝手だけども、審査はそうはいかない。1号機、2号機の工事計画が終わらなければ、保安規定の審査は終了しない。審査の上では1号機と2号機はセットなんだ。1号機と2号機は共用部分があるからね。
 ところがこの記事によると、1号機が2号機と切り離して審査が進められるかのように書いてある。この記事の元は九州電力が起動前検査を申請したというところにあるけれど、そりゃ起動前検査はいつだって申請できるから。だからといってここに書いてあるスケジュール通り、進むとは限らない。
 この記事のもっとも悪質なところは設備検査(原子力規制委員会の用語では起動前検査・起動後検査。電力業界の用語では設備検査。実際に設備だけを検査するわけではない。保安規定通り、実際に運営されるかどうかも検査される。)が再稼働に必要な手続きの最終段階にあたる、と書いているところだ。
 これを読むと、何も知らない人は、規制委員会は再稼働を承認する機関だと勘違いするよ。
 規制委員会は規制基準に適合してるかどうかを審査するんであって、再稼働には一切関わらないという組織だから。

網野:なぜ原子力規制委員会を再稼働承認機関だと思わせたいんだろう?

哲野:それは、「世界一厳しい基準に合格した原発」は絶対安全なのであって、規制委が合格とした原発は自動的に再稼働、というイメージを植え付けたいからだろう。

網野:世界一厳しい基準とはいえないよね。基準地震動だって大甘だし、避難計画の実効性は審査しないし。
 その上、安全審査じゃないんだし、田中さんは「規制基準に合格したからといって、安全とは申しません」と再三再四言ってるのに。

哲野:だろ?だからこれとはかけ離れたイメージを植え付けるのが目的だ。日本の原子力規制法体系全体は、再稼働のプロセスについて全く明記していない。
 再稼働の法的要件は一つは、規制基準適合と明記してあるが、地元同意はよくよく読まないとなかなか出てこない。ましてや、再稼働全体のプロセスは明記してない。こういう状況下で何が決め手になるのか。電力会社や経産省の立場にたってよくよく考えてみてごらんよ。

網野:みんなの反対は意味がない、と思わせるように宣伝しちゃうなぁ、私なら。

哲野:もうちょっといえば、既成事実を作っておいて、反対してる人にも諦めさせればいい。ああ、もう何を言ってもだめなんだ、もう再稼働は決定的で目前なんだ、と思わせればいいわけよ。

網野:そのために今、マスコミが使われているわけね。

哲野:この記事の最後がケッサクだよね。「九電はこれらの認可(2号機工事計画認可申請、保安規定認可申請)に必要な申請書類を4月中旬に提出する方針。」と結んである。

網野:どこがケッサクなの?

哲野:2015年2月5日の審査会合で、1号機工事計画、2号機工事計画、保安規定補正申請(これら補正申請を原子力規制委員会は本申請と呼んでいる)が九州電力からなかなか出てこないので、業を煮やして浦野調整官がいったいいつになったら出せるのか、と言葉は柔らかいが、詰問している。
 これに対して、九電の中村部長は1号機の工事計画審査補正書は2月の最後の週には提出する、2号機工事計画審査補正は3月中に、また保安規定は2号機と同時期に、と回答している。

第192回 原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合 (平成27年2月5日) 動画テキスト起こし
https://www.youtube.com/watch?v=_OliKCxsfVw
<動画1:38:30から>
更田委員:川内原子力発電所1・2号機は設置変更許可を受けて、工事計画並びに保安規定の審査を行っているところですけれども、この状況確認について浦野調整官の方から。

原子力規制庁 浦野調整官:原子力規制庁、浦野でございます。九州電力(株)川内原子力発電所、工事計画認可については9月30日、及び10月8日に、昨年ですが、補正を受理したところでございまして、10月21日には審査会合でその概要を聴取したところです。本件は新規制基準に基づく工事計画認可の初めての本格的な審査であり、これまで審査チーム内の工事計画認可担当者の総力を挙げてヒヤリングにおいて10月21日の審査会合で示された11項目の主な技術的論点等を含め、新規制要求が強化された事項、新たに申請書に記載することになった事項等を中心、にひとつひとつ設置許可との整合性、技術基準の各条項への適合性、品質管理事項への適合性につき、技術確認を実施してきたところです。昨年12月末には当方からの指摘が概ね終了し、これに沿って記載を整理し、再度提示するよう指摘したところであり、九州電力から、我々の指摘を踏まえた提示に対して見せていただいたところです。九州電力においてはこれまでの当方からの指摘を踏まえ、申請書として必要十分な内容、技術的根拠、及びその記載の様式や深さについて、概ねわかっていただいたと、ということでよろしいですね?

九州電力 中村:九州電力の中村でございます。12月末までに工認(工事計画認可の略)の作業状況でございますけれども、ヒヤリングにおいて指摘いただきました整理すべき内容に対しましては、基準適合性の技術的根拠で申請書への記載内容について、年明けからご説明しておりますが、現在強度や耐震に関する説明書の一部について、文書校正や記載内容等、ご指導を受けながら最後の詰めを行っている段階でございます。これにつきましては横並びや全体構成についても考慮しながら鋭意作業を実施しているところでございますけれども、もうしばらく時間が必要というふうに思っております。

原子力規制庁 浦野調整官:3点お伺いしたいと思います。1点目、今準備中ということでございますけれども1号機の工事計画認可申請の補正の提出期の見込みはどうでしょうか?2点目、2号機の工事計画認可申請の補正の提出期の見込みはどうでしょうか?1号機の運転に必要な設備の一部が、1・2号機共用設備として2号機の工事計画認可申請に含まれているということ。この2号機の工事計画認可申請をしないと共用設備の使用前検査は受けられないということにもなります。また2号機の工事計画認可の申請、補正の準備をしつつ、1号機の使用前検査の両方に対応すると言う体制、その準備はできますでしょうか?こういった点も含めて見込みを教えていただきたい。3点目は保安規定の変更認可についての補正、この提出時期について見込みを教えてください。

九州電力 中村:1号の補正申請について、見込みとしては今月の(2015年2月末)最後の週までには出したいと考えてございます。工程表を見ていただくと(略)…下の方に2号の工程を書いてございますけれども、今ご指摘にあったように2号設置で1・2号共用という設備がございます。右下のところに囲んでいる設備でございます。中央制御室の空調設備、廃棄物処理建屋等ございまして1号を運転するためには共用設備ですので運転するまでには必要、と2号機につきましても1号機の申請後、速やかに再補正申請を実施しまして1号の燃料装荷前までには適合性確認検査、いわゆる使用前検査、使用前検査を終了いたしまして一部仕様承認という形で…(略)…運転に向け検査を受けて行きたいと考えています。2号につきましても早急に、1号補正申請後に作業を進めまして、だいたい一か月程度を目途に提出したいと考えてございます。(略)保安規定でございますけれども、保安規定も再補正することで考えてございまして、1・2号、両方の工事計画認可の内容を反映した形で運用を担保する事項を確認して、必要なものを保安規定に反映するということがございますので、2号の工事計画認可の補正の申請に合せて、申請したいと考えてございます。

哲野:つまり、1号機工事計画は2月中、2号機工事計画と保安規定は3月までに出すと約束してるけど、この記事(九電情報)によると両方4月中旬に出す方針と書いてあるね。結局2月5日の規制委審査会合との約束は守れなかったわけだ。
 仮に4月中旬に両方出たとしようか、審査にそれぞれ1か月づつかかったとしようか、そうすると審査が終わるのが6月中旬になる。それから規制委本会合に上げてここで正式承認を取る、そうすると規制委から最終合格証が出るのが6月末になる。原子炉設置変更許可、工事計画、保安規定、の3点セットが揃わないうちは検査に入れない。そうすると、この記事の通り、検査に3か月かかるとすれば、検査終了は9月末ということになる。
 これ、最短の流れだろうね。そうするとこの新聞記事に書いてある九電目標、8月に営業運転(再稼働)も結構怪しい話になる。
 しかも、再稼働となると、30km圏の自治体、たとえば姶良市は再稼働反対・廃炉を求める決議を出しているし、いちき串木野市議会は実効性のある避難計画の確立ができるまで再稼働すべきではないという決議を上げているし、日置市は30km圏自治体の議会・首長の同意なしに再稼働すべきではない、という決議を上げている。再稼働になると話は、原子力規制委員会とは全く関係がなくなるから、これら同意も取りつけなきゃいけない。
 いま九州電力は水面下で伊藤鹿児島県知事とともに必死になって工作を行ってるところだろうと思うけど、現地の反対勢力に諦めさせるのがやっぱり一番手っ取り早い。
 今回の記事も、その意図はありありと感じるね。

▼西日本新聞はでかでかとチャート入りで報道した
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/157107

ケッサクなのは、九州電力の発表通りこのチャートには保安規定の認可プロセスは書かれていません。

網野:反対勢力が諦めるのを待ってるわけね。もう駄目だと。思わせたいわけよね。

哲野:そ。諦めたらそれでおわり。敵の思うつぼ、ということだね。

網野:諦めたら統一地方選の争点にもならないからね。

日本外国人特派員協会主催 泉田裕彦新潟県知事・記者会見 2014年10月15日(水)


日本外国人特派員協会主催 泉田裕彦新潟県知事・記者会見 2014年10月15日(水)

<冒頭から約14分時点までテキスト起こし>
泉田裕彦・新潟県知事
みなさん、こんにちは。 日本語で話をさせていただきたいと思います。
今ご紹介いただきましたが早速ですが資料に基づいてご説明をさせていただきたいと思いますので、1頁を開けてください。
この頁は今説明がありました2007年の時の柏崎刈羽原子力発電所の構内の写真です。
この時火災が発生しましたが、事故対応を知事の立場で経験しております。
また2011年にですね、東日本大震災があった際には、福島県が新潟県の隣ですので、大変多くの避難者の受け入れをしました。スクリーニング、モニタリンクもですね、実施をしました。
2011年には日本政府、それから福島県と並んで新潟県は東京電力からヒヤリングをしながらですね、直接話を聞きながら、3.11の事故を経験した組織ということになります。
3月11日地震の当日、4時半にですね、すでに二次冷却水のポンプが流されて冷却不能になったというのは報告がありました。
話は2007年に戻して2ページ目をご覧ください。
柏崎刈羽発電所は2007年、震源から20km位の距離にあるんですけども、原発の建屋から地面が1メートル半くらい、1メートル50センチくらいですね、沈下をしました。
これが火災原因になってます。
1枚めくってください。
これが実際の火災の写真です。
実は新潟県庁はこの時、柏崎刈羽原発と連絡不能になりました。
仕方がないのでこれはあの、テレビで状況を把握するという状態になりました。
そしてワンテンポおいて、東京電力の本店を経由して(柏崎刈羽原発)サイトと連絡する、間接連絡になりました。
ホットラインがなぜ使えなかったかというと、ホットラインがある部屋のドアが地震で歪んで開かなかったものですから、東京電力側がホットラインにたどり着けなかったのが原因です。
次のページをご覧ください。
なぜ火災が起きたかということなんですが、地震でパイプがずれて、それで発火をしたということです。
フィルターベントがですね、安全かどうかは、これ避難計画に大きく関わるので、この時の経験を活かしてほしいと考えています。
次のページをご覧ください。
ここが地面がずれたおかげでパイプが外れて発火したポイントの拡大図になります。
次のページをご覧ください。
先ほどお話したように、緊急連絡を確保する必要があるということから、地震が来てもちゃんとドアが開くような免震重要棟の建設を当時求めました。
むろんこれ、規制基準ではないんですけども、連絡が取れなかったことからですね、経験則上必要ということで要請したものです。
結果として、造ってもらう事になりました。携帯電話があればいいじゃないかという話もあったんですが、これを柏崎刈羽に造ってもらうことによる安全確保を優先しました。
同じ東京電力の施設で柏崎刈羽にだけ、この免震重要棟があって福島にないのはおかしいじゃないかということで、福島にも免震重要棟を造ることになって、完成したのが東日本大震災の8か月前です。
もしあの時、新潟県が免震重要棟の建設を求めなければ、当然福島にも免震重要棟はなかったですし、結果として今東京に人が住めていたかどうかは疑わしいと思っています。
次7ページご覧ください。
これも規制に基づかないものを求めた例になります。
東電にも当時自主消防組織はあったんですが、しかし消防車は持っていませんでした。消火栓が破断をしたので結局消防隊は撤退することになりました。
この自衛消防隊が機能しないっていうのは困るということで、体制強化してもらい、消防車を配備してもらいました。
この時の反省を踏まえて消防車があったので、原子炉を冷やす代替注水が福島で可能になったと考えています。
次8ページご覧ください。
原子力規制委員会で新規制基準を作ってるんですが、安全性確保に関しては懸念を持っています。

「地元同意」について鹿児島県知事のフィクション

広島1万人委員会の代表、原田二三子の意見を転載いたします。

===

みなさま

川内原発再稼動について、あたかも薩摩川内市と鹿児島県の首長が「同意」すれば
「地元同意」がとれたことになるかのような言い方が飛び交っていますが、
3・11後の「地元同意」とは、そんなものではありません。

そのことについて私なりにまとめてみましたので、拙文ですがぜひお読みください。

なお、毎日新聞をとりあげているのは、
今私が購読しているのが毎日新聞というだけであって、
同じようなことは多くのマスメディアが言っているのではないかと思います。

広島市 原田二三子


「地元同意」について鹿児島県知事のフィクション

川内原発再稼動「地元同意」報道

2014年10月28日、薩摩川内市市議会は本会議で川内原発再稼動反対の陳情10件を不採択にし、早期再稼動を求める請願1件を採択し、その後全員協議会で岩切秀雄薩摩川内市長が再稼動への同意を表明したとのことです。

また、鹿児島県議会も連休明けに臨時議会を開いて、川内原発再稼動について審議する予定とのことです。

このことを報じた2014年10月29日の毎日新聞の記事は、メインタイトルが「川内再稼動 地元同意」、副タイトルが「薩摩川内市長表明 新基準後で初」となっています。

また、「伊藤祐一郎知事は、九電との安全協定に基づき、再稼動に『同意』が必要な範囲を薩摩川内市と県に限っている。今後の焦点は県議会(49人)と伊藤知事の判断へと移る。」と記事を結んでいます。

毎日新聞のこの記事をそのまま読むと、あたかも、原発再稼動に必要な「地元同意」の「地元」の範囲は、県知事が電力会社との安全協定に基づいて決めることができる、ということであるかのようです。

ここで疑問となるのは、この記事の中で「地元同意」という言葉が指しているのはどういう意味だろうか、そして、それは適切な言葉の使い方だろうか、ということです。

原子力規制委員会の「立地自治体」の定義

では、原発再稼動のための規制基準適合性審査を行う国の機関である原子力規制委員会は、「地元自治体」「立地自治体」をどのように定義しているのでしょうか。

再稼動までの流れを大筋決定した今年(2014年)2月19日の原子力規制委員会の定例会合の資料では、原子力規制委員会は「立地自治体」という言葉を「特に関心の高い立地及びその周辺自治体」と定義しています。

▼原子力規制委員会
平成26年2月19日 第43回会議資料
資料3「原子力発電所の新規制基準適合性審査の今後の進め方について」
https://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h25fy/

また、同日の記者会見で原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「公聴会は周辺自治体で要請があった自治体で開催するということだが、どの範囲が適切だと考えるか」という質問に答えて、
「一つの考え方として、判断基準としてUPZ、30kmということはあるかと思いますけれども、どこの範囲が適当だというのは、今、私が申し上げることではなくて、それぞれの自治体が自分は立地自治体だと。近隣自治体も含めて、そういうふうに思っているところもいろいろ千差万別ですから、余り私からそこを申し上げることではないと思っています。」と答えています。

また、「最終的にはやはり地元の住民も含めた国民の判断に関わってくるのだろうと思いますし、そこでその方たちがやはり信用できないということでだめだったら、なかなか再稼動には到達しないかも知れません。」と述べています。

▼平成26年2月19日委員長記者会見 速記録 8~9ページ
http://www.nsr.go.jp/kaiken/25_kaiken.html

つまり、原子力規制委員会は、原発の立地自治体を「原発が建っている自治体だけでなく、周辺の自治体も含めて、その原発に特に高い関心を持っている自治体」であるとしています。

原子力災害対策指針で原子力災害対策重点区域となっている原発から半径30km圏内という一つの判断基準はあるかもしれないが、それに限らず、「自分は立地自治体だ」と考えている自治体はすべて立地自治体である、という捉え方です。

さらに、原子力規制委員会委員長は、たとえ原子力規制委員会の規制基準適合性審査に合格しても、「地元の住民も含めた国民が信用できないというのなら、再稼動は困難」と述べています。

劇的に変化した3・11後の「地元」の捉え方

また、2014年5月21日の大飯原発運転差止請求訴訟の福井地裁判決は、「大飯原発から250km圏内に居住する原告に対する関係で」大飯原発3号機・4号機の運転差止を命じました。
その根拠となっているのは、福島第一原発事故発生当時の原子力委員長が行った「半径250kmが避難対象になる恐れもある」という試算です。

この判決に従えば、原発の「地元」とは、原発から半径250km圏内にある地域と捉えることができます。

つまり、3・11後、原発「地元」の捉え方は劇的に変化しているということです。原発事故の影響が、原発が建てられている自治体だけではなく、非常に広範に及ぶことが、不幸にも立証されてしまったわけです。

したがって、仮に原発の再稼動を行うなら、その原発が起こす事故によって影響を被るすべての地域住民の同意が得られなければならない、というのが、3・11後の日本の基本的な合意事項です。

薩摩川内市・鹿児島県の「同意」で再稼動の要件は満たせない

このように見てくると、毎日新聞の記事で言っている「地元同意」とは、原発再稼動の要件となる「地元同意」とは全く無関係の何かを示しているということになります。

九電と薩摩川内市・鹿児島県との「安全協定」なるものは、国による再稼動決定の手続きとは全く無関係なものです。

九電とたまたま「安全協定」を結んでいる自治体が議員の多数決で川内原発再稼動に「同意」したとしても、それは、3・11後の日本で原発再稼動の要件となっている「地元同意」が得られたことには、全くなりません。

鹿児島県知事はこのことをご存知ないのでしょうか? 

それとも、鹿児島県知事は、わかっていて、敢えて知らないふりをすることによって、あわよくば、薩摩川内市の19人の市議会議員によるたった1件の川内原発早期再稼動を求める陳情採択と、鹿児島県議会での「再稼動OK」によって、原発再稼動に必要な「地元」同意が得られたとごまかして、川内原発再稼動を進めようとなさっているのでしょうか? 

毎日新聞はそれにまんまとごまかされているのでしょうか? 

ちなみに、薩摩川内市・鹿児島県はともに、「一般社団法人 日本原子力産業協会」という団体に所属していることを、私は「広島2人デモ」のチラシから知りました(「広島2人デモ」第107回チラシ)。

「日本原子力産業協会」というのは「原子力技術が有する平和利用の可能性が最大限に活用されるよう、その開発利用の促進に努め、将来世代にわたる社会の持続的な発展に貢献する」こと、つまり「原発ビジネス推進」を使命とする団体です。

公平・中立であるべき自治体が、特定の、それも国民の間で賛否の分かれている業界団体のメンバーになっていていいのでしょうか?

さらに、「原発ビジネス推進」を使命とする団体のメンバーが「原発再稼動賛成」の意思表示をしたからといって、そこに「やらせ」以上のどういう意味があるのでしょうか?

▼一般社団法人 日本原子力産業協会
http://www.jaif.or.jp/ja/organization/kyokai/
▼第107回広島2人デモチラシ
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20140912.pdf

川内原発再稼動の「地元同意」は得られていない

鹿児島県の姶良市市議会は2014年7月17日、鹿児島県知事に対する「川内原発1号機2号機の再稼動に反対し廃炉を求める意見書」を全会一致で採択しています。

鹿児島県のいちき串木野市市議会は2014年6月26日、鹿児島県知事に対する「市民の生命を守る実効性のある避難計画の確立を求める意見書」を全会一致で採択しています。

現在のところ、いちき串木野市の「市民の生命を守る実効性のある避難計画」は確立していませんし、確立する見込みもないでしょう。

9月28日には鹿児島市で7500人が参加する川内原発再稼動反対の市民集会が開かれました。

10月に行われた川内原発審査書説明会では、川内原発の安全性について、疑問の声が噴出したということです。

川内原発が起こす事故によって影響を被るすべての地域住民の同意が得られる、という状況とはほど遠い状況です。

したがって、3・11後の日本の合意事項に照らせば、川内原発再稼動は行うことはできません。

もしこの状況下で川内原発再稼動を閣議決定する内閣があるとすれば、その内閣はもはやまともな民主主義の政権ではありません。

「アメリカ独立宣言」の表現を借りれば、「これを改め、または廃止し、新しい政府を設立する」権利を人々が持つ対象です。

南海トラフ震源域について

伊方原発サイトと南海トラフ震源域の位置関係について

第52回(10月11日)伊方デモのチラシについて、四国の「瀬戸の風」さんより「伊方デモチラシ 5頁の『伊方原発は南海トラフ震源域にも入っている』は『直近』が正確かも。参考→http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/chugoku-shikoku/chugoku-shikoku.htm … 間違えたらごめんなさい。」
というご指摘がありました。極めて貴重な指摘で感謝いたします。

▼第52回(10月11日)伊方デモのチラシ
http://www.hiroshima-net.org/yui/pdf/20141011.pdf

非常に微妙な問題ですが、このチラシで私たちが伊方原発は南海トラフ震源域に入っている、とした根拠をご説明いたします。

政府の地震調査研究推進本部(事務局は文部科学省研究開発局地震・防災研究課)は東日本大震災以降、日本全体の震源域の見直しを進めてきましたが、2013年5月24日、「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)について」を公表しました。
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/13may_nankai/index.htm

この見直しでは東日本大震災の経験を活かし、南海トラフ震源域をできるだけ安全サイドに立った見直しを行いました。
その結果、南海トラフ大地震震源域を以下のように定義しました。

東端:富士川河口断層帯の北端付近
西端:日向灘の九州・パラオ海嶺が沈み込む地点
南端:南海トラフ軸
北端:深部低周波微動が起きている領域の北端

さて、問題は伊方原発がこの領域に入っているかどうかという問題ですが、同第ニ版の主文では以下のように述べています。

『評価対象とした領域は、地形(幾何形状)の変化、力学条件の変化、既往最大地震の震源域、現在の地震活動などを考慮し、以下の範囲とした(図1の赤太線で囲まれた範囲)。』
(同主文2P)
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/13may_nankai/nankai2_shubun.pdf

南海トラフの震源域については、大きく東西南北の端は示したものの、当然のことですが具体的な細かい地名で個別に示すことはできません。従って図1を参照し、判断をすることになります。
以下が図1です。

同図の注では、「赤線は最大クラスの地震の震源域を示す。」としており、これで見ると、佐田岬の伊方原発サイトは完全に赤線に重なっています。

ところが、同じ主文の「3.南海トラフで発生する地震の多様性について」(4p)では、南海トラフを震源域とする過去の歴史記録を論じ、その中で「図2より、過去に南海トラフで発生した大地震は、その震源域の広がり方に多様性があることが分かる。」としており、図2を以下に示します。

図2を見てみると、佐田岬の伊方原発サイトが震源域に含まれているかどうかは非常に微妙なところです。これは当然の話で、地震調査研究推進本部が第二版を作成する時、海上保安庁から提供を受けたデータマップに加筆する際、その時々の目的に合わせて描画しており、全体としては間違ってはいませんけれども私たちが問題にするような伊方原発サイトの位置に神経を払っていません。これも当然な話で、ナタでおおざっぱに断ち切る話の中に、カミソリで細部をいじくるような話を私たちはしているわけですから。

これらを考えてみると、ご指摘の「『直近』が正確かも」という表現も間違いとは言えなくなります。
図1をとれば伊方原発サイトは南海トラフ震源域に入っている、という表現も間違いとはいえません。
これは要するに、伊方原発サイトが南海トラフ震源域ギリギリに位置しているために起こっている事態であって、あとは表現の問題かと思いますけれども、私たちとしては、いたずらに自分たちに都合のいい表現を用いるのもいさぎよし、とはいたしません。

ご指摘のように、図によっては「直近」と表現もできるわけですから、今後は「南海トラフ震源域ギリギリに位置する」と表現するようにいたします。

ご指摘、誠にありがとうございました。
今後とも厳しく、チェックを頂きますよう、お願いいたします。

広島市民の生存権を守るために伊方原発再稼働に反対する1万人委員会(略称:広島1万人委員会)
事務局長 網野沙羅
事務局  哲野イサク

川内原発再稼働について経済産業省が鹿児島県知事に向けて出した方針書

ファイル 333-1.jpgファイル 333-2.jpg

▽PDF文書
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20140912_keisansho.pdf

川内原発再稼働について経済産業省が鹿児島県知事に向けて出した方針書(経産大臣小渕優子名)

新聞報道でこの方針書が鹿児島県知事に伝達されたことを知り、早速経産省や政府、鹿児島県のwebサイトを検索して原文を探しましたが、どうしても見つかりませんでした。

それもそのはずで、政府はこの重要文書を公表しなかったのです。

この文書が非常に重要だと感じたのは、私たちばかりではなかったようで、共産党の笠井亮衆院議員が政府に文書公開を求めました。
その求めに応じて経済産業省が(しぶしぶ、と思いますが)提出したものです。その後、笠井議員が公表したものらしく、原文を上記に表示します。

第一に、こうした重要な文書を国会議員が要求するまで公開しない経済産業省の狡猾ぶり。それはそのまま小渕優子経産相の狡猾ぶりであり、安倍内閣の狡猾ぶりでもあります。

第二に、なぜこの文書を一般に公開しなかったのか、という疑問が当然のように湧いてきます。それは文書の中で経産省幹部ですら顔を赤らめる破廉恥な嘘をついているからです。

その箇所を引用します。
「安全性の確保を大前提に、低廉かつ環境負荷の少ないエネルギー・電力の安定供給が国民経済の健全な発展にとって重要であり、その意味で、安全性が確認された原子力発電所の再稼働は、国民の皆様の日々の暮らしや日本経済の活力にとって重要であると考えております。」

いうところは、原発は低廉かつ、環境負荷の少ないエネルギー・電力源である、ということです。原発は低廉な電力源ではないことはすでに経済産業省も認めているところです。

また、環境負荷の少ない、とはCO2を排出しないという意味だと読めますが、福井地裁判決が指摘するように、原発は放射能という環境負荷どころか人間社会を含めたすべての生物圏に甚大な被害・影響を与える最も環境負荷の大きい電力源です。

第三に、この表現の誤魔化しが、政府・経済産業省の狙いを端的に表現しています。
この文書の前段で、「原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められ」、「再稼働に求められる安全性が確保されることが確認されました」と述べながら、私たちが危惧した通り、上記引用文章は「再稼働に求められる安全性」、すなわち規制基準に適合している、という但し書きは、いつのまにか外され、「安全性が確認された原子力発電所の再稼働」と述べ、規制基準に適合した原発は「安全性が確認された」と、「無条件の安全性」が確認されたという印象を与え、「安全性」を一人歩きさせる狙いを明白に持った書きぶりとなっていることです。

第四に、この文章は経産大臣が鹿児島県知事 伊藤祐一郎氏に川内原発の再稼働に「ご理解を賜る」形式となっています。
しかしながら鹿児島県は現在でもなおかつ、原発の普及・推進を目的とした日本最大の業界団体、「日本原子力産業協会」(http://www.jaif.or.jp/ja/organization/kyokai/member_list.html)の正式会員であり、自治体としての鹿児島県は原発推進法人であることを全く隠しておりません。
原発推進法人である鹿児島県に原発推進総本山の経済産業省が川内原発の再稼働に「ご理解を賜る」などとは、一種のサル芝居と言わざるを得ません。
この文書はこうした事情に疎い鹿児島県民をはじめとする日本全国の一般市民に向け、経産大臣が鹿児島県知事に再稼働を要請し、その結果鹿児島県が同意した、という形式をつくることを目的としている文書であり、この意味で極めて重要かつ悪質な文書です。

みなさんもどうか、ご一読ください。